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健保ニュース 2022年8月下旬号

伊原保険局長が就任会見
医療保険制度改革 現役世代の負担増に対応
出産一時金は財源捻出が課題

厚生労働省の伊原和人保険局長は2日の就任会見で、「骨太方針2022」を踏まえた医療保険制度改革の方向性などを語った。団塊の世代が後期高齢者となることで現役世代の負担が増加する問題や、2025年以降の人口構造の変化への対応も踏まえ、医療保険制度改革を考えていく必要があると強調した。他方、「骨太方針2022」に盛り込まれた改革項目のうち、「必ず対応しなければいけないのが出産育児一時金の増額だ」と明言。年末の令和5年度予算編成を視野に、「財源の捻出が1つのテーマとなる」との認識を示した。他方、各種保険制度における負担能力に応じた保険料負担のあり方も課題になると指摘し、全世代型社会保障構築会議の検討状況を踏まえつつ、医療保険制度改革を考えていくことになると言及。今後の人口構造の変化なども見据え、健保組合など被用者保険制度の取り巻く状況や、関連する高齢者医療制度のあり方を検討していくことが適切との考えを示した。(伊原保険局長の発言要旨は次のとおり)


─就任に当たっての抱負

新型コロナウイルス感染症が2年7か月位続き、医療現場が混乱しているなか、まずはコロナ対応にしっかり取り組みたい。

また、団塊の世代が後期高齢者となり、来年以降、後期高齢者の増加が見込まれるが、そうなってくると、後期高齢者医療制度の財政問題が生じてくる。

今年の10月から一定所得以上の医療費にかかる2割負担が施行されるが、それ以降も様々な医療保険制度改革が求められており、適切に対応していきたいと考えている。


─医療保険制度改革の論点

医療保険制度改革について言うと、団塊の世代が後期高齢者となることに伴い、負担が増加する現役世代への対応が大きな課題となる。

同時に、2025年以降、人口構造が変化し、高齢者人口の伸びは落ち着く反面、生産年齢人口が減少していく事態への対応も踏まえつつ、医療保険制度改革を考えていく必要がある。

「骨太方針2022」に盛り込まれた改革項目のうち、必ず対応しなければいけないのが「出産育児一時金の増額」だ。

7月29日に各医療機関の出産費用の調査が発表された。実際に出産費用が上昇している問題にどう対処するか。岸田文雄首相は、出産育児一時金を増額すると明言しているが、その財源をどう捻出するかも1つのテーマとなる。

年末の令和5年度予算編成を視野に、社会保障審議会の医療保険部会で、調査結果をもとに出産費用の引き上げ水準や「見える化」に向けた対応を検討していく。

他方、「骨太方針2022」は、「給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、後期高齢者医療制度の保険料賦課限度額の引上げを含む保険料負担のあり方等、各種保険制度における負担能力に応じた負担のあり方の総合的な検討を進める」と明記しているので、保険料のあり方も課題となる。

秋には、「全世代型社会保障構築会議」の検討が本格化してくるので、そうした状況を踏まえつつ、医療保険制度改革を考えていくことになる。


─令和6年度の診療報酬と介護報酬の同時改定に向けた課題

平成30年度の診療報酬と介護報酬の同時改定は、2025年を見据えた地域包括ケアというコンセプトで実施した。

令和6年度の同時改定は、2025年以降の人口動態を見据えた外来・入院・在宅医療や要介護者の医療需要を念頭に置きながら、医療と介護の提供体制やそれを支える診療報酬と介護報酬を考える必要がある。

2040年を念頭に置きながら検討を進めることが重要であり、そういう意味では、2040年を見据えた医療・介護提供体制のあり方の基本的方向性を示す「医療介護総合確保方針」の改正に向けた議論と連携し、検討を進めていくべきだ。


─令和5年度の薬価の毎年改定

薬価の毎年改定は、平成28年12月の薬価制度の抜本改革に向けた基本方針(4大臣合意)で実施が決まった。「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」の両立を目的とし、その目的に合うよう、課題を議論していく必要がある。

令和5年度の毎年薬価改定は、4年度に実施する薬価調査の結果を基に具体的な検討を進めていくこととなるが、その際、医療機関や薬局、製薬業界や卸売業界の意見を聞きながら、改定の中身を決めていくべきだ。


─次期医療費適正化計画についての現状認識

2024年度から始まる「第4期医療費適正化計画」については、重点分野への対応など、医療保険部会における議論を加速化し、今年度内を目途に基本方針をまとめていきたい。

合わせて、医療費適正化計画については、「骨太方針」で、実効性の上がる枠組みへの見直しなどが指摘されている。

このため、「第4期医療費適正化計画」は、内容とスキームの両面から考えていくことが必要となる。


─健保組合、協会けんぽを取り巻く現状認識と課題

健保組合、協会けんぽの財政状況をみると、近年は幸いにも黒字決算が続いている。ただし、この数年は新型コロナウイルス感染症の影響を受けた一時的な黒字の状況と想定される。

また、今年から団塊の世代が75歳以上となり、今後数年間は後期高齢者医療の対象者が急速に増加することが見込まれる。

このため、被用者保険の財政状況は、しっかり注視していく必要があると考えている。
 他方、2025年以降の人口構造を考えると、高齢者人口の伸びは落ち着いてくるが、その支え手である生産年齢人口が減少していくので、被用者保険の被保険者数がどう変化していくのかも課題となる。

今後の人口構造の変化なども見据えつつ、被用者保険制度の取り巻く状況や、関連する高齢者医療制度のあり方を検討していくことが適切と考えている。

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