健保ニュース
健保ニュース 2022年7月中旬号
柔整療養費の長期・頻回患者
償還払いへの変更を要請
保険局長に要請書手交
健保連の佐野雅宏副会長は6月22日、厚生労働省の濵谷浩樹保険局長を訪ね、柔道整復療養費の不正対策に関する要請書を手交した。要請書は長期・頻回の施術を受けている患者を償還払いに変更することなど3項目の実施を求めている。濵谷保険局長は、今回の要請に対し、実態調査を進め、データを解析するなど次回改定に向けて検討する方針を明らかにした。
柔整療養費については、受領委任制度を悪用した水増しや架空など不正請求が横行。多部位・長期・頻回施術や部位転がしなど不適切な受療をする患者が常態化しているため、健保連では不正対策を強化するよう求めてきたが、実効性のある対策は実施されてこなかった。
今年5月に開催された社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会においては、患者ごとに、償還払いに変更できる仕組みの導入が決定されたものの、これまでその患者の類型として検討されてきた「非常に長期にわたり、かつ、非常に頻度が高い施術を受けている患者」については、今回の対象からは外れ、引き続き検討することとなった。こうした状況などを踏まえ、健保連では要請書を濵谷保険局長に手交することとなった。
佐野副会長は、要請書の手交に際し、①長期施術・頻回施術等のデータ分析を行い、令和6年改定において対象とすべき患者を検証し事例を追加する②明細書の義務化は、レセコンを導入している全ての施術所を義務化するなど対象の拡大を行う③6年度改定において、保険者単位の償還払いへの変更についても検討し、結論を得ることを確実に実行する─の3点を求めた。
要請に対し、濵谷保険局長は、施術における実態調査を進め、そこで得られたデータを解析しながら、次回改定に向けて検討を進めていく方針を明らかにした。また合わせて、施術所の療養費支給申請におけるオンライン化のシステムの導入についても、取り組む意向を示した。(今回、濵谷保険局長に提出した要請書は以下のとおり)
柔道整復療養費の不正対策に関する要請
日頃より、本会の事業運営につきまして、格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
今般、5月6日開催の社会保障審議会・柔道整復療養費検討専門委員会(以下、検討専門委員会)において、標記不正対策等について一定の決定が行われました。
当該不正対策については、平成28年より検討専門委員会で審議されてきましたが、遅々として進まない状況に鑑み、令和2年に本会より「保険者ごとに償還払いとする手続き」の策定を提言した経緯があります。その後、貴省のご尽力により、▽患者ごとに償還払いとする仕組み▽明細書の義務化▽療養費を施術管理者に確実に支払う仕組み─の3項目を最優先に検討されて参りました。
しかしながら、 「患者ごとに償還払いとする仕組み」においては、保険者全体の共通課題として認識されていた長期・頻回施術の患者が対象事例とされなかったこと、「明細書の義務化」においては、義務化と言うには対象があまりにも僅少となること(現行施術所の数%規模と言われる)など、保険者の期待からほど遠い内容となったことは誠に遺憾であります。
ついては、今後のとりまとめにあたり、以下の点について確実に実行していただくよう要請いたします。
1.患者ごとに償還払いに変更できる仕組みについて、限定的とはいえ、受領委任規程の中で「償還払い」の仕組みを取り入れたことは、一歩前進であると認識しております。次回の拡大に向けては、『「患者ごとに償還払いに変更できる事例」における「非常に長期にわたり、かつ、非常に頻度が高い施術を受けている患者」の取扱いについて、引き続き、長期施術・頻回施術等のデータ分析を行い、データや「患者ごとに償還払いに変更できる事例」の施行状況等を踏まえ、令和6年改定において検討する』とされたことから、対象とすべき患者を検証し、事例の追加をしていただきたい。
2.明細書の義務化については、『〇令和4年度に、施術所のレセコン導入状況、導入しない理由、職員数、明細書交付頻度、交付業務負担等を調査する。〇令和6年度改定において、調査結果や改定財源を踏まえ、明細書発行体制加算の算定回数、額及び明細書の義務化の対象拡大、交付回数について検討し結論を得る』とされたことから、少なくともレセコンを導入している全ての施術所を義務化するなど、対象の拡大をしていただきたい。
3.さらに、本会が今回のとりまとめを了承する前提とした『併せて、その検討状況等を踏まえ、6年度改定において、保険者による受領委任払いの終了手続きを含めた取扱い(保険者単位の償還払いへの変更)についても検討し、結論を得る』ことについて、検討専門委員会で正式に明示され合意に至ったことは、非常に大きな意義があり、貴省として重く受け止めていただき、確実な実行を求めます。
貴職におかれましては、引き続き、不正対策の推進と指導監査の強化を図っていただき、医療保険制度の健全な発展にご尽力いただきますよう、お願い申し上げます。