健保ニュース
健保ニュース 2022年5月下旬号
4年度柔整療養費改定
償還払い変更手続きの検討へ
改定率は0.13%の引き上げ
厚生労働省は、6日に開催された社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会(座長・遠藤久夫学習院大学経済学部教授)に、令和4年度の柔道整復療養費の改定案と、施術費用の明細書発行に関する案を提出し、了承された。
改定率は0.13%の引き上げ。令和4年6月施術分から実施される。明細書の無償発行については、明細書発行体制加算(13円)を創設する。また今回の改定にあたり、保険者ごとに受領委任払いから償還払いに変更する手続きについて、6年度の改定に向け検討する方針が盛り込まれた。今後2年間かけて、その取り扱いを協議することとなる。
柔整療養費の改定率については、その年度の診療報酬改定における医科の改定率をもとに決定することとなっている。今回は、4年度の医科改定率+0.26%を踏まえ、+0.13%とした。4年6月1日から施行する。
施術費用に係る明細書の発行については、明細書を無償で患者に交付した場合、同月内に1回のみ算定できる「明細書発行体制加算」13円を新設。令和4年10月から開始する。明細書を無償で交付しなければならない施術所については、①明細書発行機能があるレセコンを使用している②常勤職員3人以上の施術所─との条件を設け、当初見込んでいた明細書発行の施術所数を大きく下回る見込み。
厚労省では今後、明細書の発行を推進する観点から、施術所におけるレセコン導入状況とその導入しない理由、職員数や明細書の発行頻度などの調査を実施し、6年度に予定される明細書義務化の対象拡大の検討資料とする。
また次回改定の検討状況等を踏まえて、保険者による受領委任払いの終了手続きを含めた取り扱いについても検討し結論を得るとの方針を示した。さらに同検討会では、患者ごとに償還払いに変更できる取り扱いについて導入が決定されたが、そのなかでこれまで事例として挙がっていた非常に長期にわたり、かつ、非常に頻度が高い施術を受けている患者については、その結論を先送りした。今後引き続き長期施術・頻回施術等のデータ分析を行い、検討を行うこととされている。
健保連では6年度までに▽明細書義務化対象施術所の拡大、▽患者ごとに償還払いに変更できる取り扱いの患者類型へ長期頻回の受療患者を対象とする─など、受領委任制度の更なる適正化対策に踏み込まなければ保険者単位での償還払いへの変更の議論も深めることとしている。
柔整療養費は健康保険法第87条で、療養の給付などを支給することが困難で、保険者がやむを得ないものと認める時に支給される療養費に位置づけられ、健康保険法施行規則第66条で償還払いが原則になっている。協定・契約に基づき運用されている受領委任制度を悪用した水増しや架空など不正請求が横行し、部位転がしによる長期頻回受療など問題のある患者も常態化。各医療保険者では、その対策に頭を悩ませている。そのため、健保連の幸野庄司参与は、これまでの専門委員会で柔整療養費の請求を償還払いへの変更を希望する健保組合が現れた場合、健保連としては容認するとの考えを明らかにしていた。
受領委任払い終了の議論を条件に了承
健保連幸野参与
この日の柔道整復療養費検討専門委員会で、今回の改定内容について健保連の幸野庄司参与は、明細書無償交付の実施施術所に係る届け出状況を、全国の保険者や患者が確認できるような仕組みを構築し、見える化を進めるよう要望した。
また明細書発行の対象となる施術所が常勤職員3人以上と限定的になったことについては、常勤職員3人未満でも明細書を無償で発行できる施術所は積極的に取り組むよう求めるとともに、そうした施術所に対しては、保険者として加入者に積極的に周知する意向を示した。
さらに6年度改定に向けて、今回、保険者ごとによる受領委任払いの終了手続きを含めた取り扱いについて検討し結論を得る─との方針を示したことに対しては、同検討会で着実に検討することを条件に改定案を了承したと述べ、引き続きの検討を厚労省に求めた。
あはき療養費改定
施術料包括化導入は次回以降に持ち越し
厚生労働省は6日、社会保障審議会医療保険部会あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会(座長・遠藤久夫学習院大学経済学部長)を開催し、令和4年度のあはき療養費の改定案を提出し、了承された。改定率は0.13%の引き上げ。柔道整復療養費と同様に4年6月1日から実施される。また、あはき施術料の包括化については、今回の改定では導入は見送られた。
健保連の幸野庄司参与は、あはき施術料の包括化について、議論するためのデータが少ないと指摘。そのため6年度の次回改定に向け、疾病との関連性やその必要性について、さらに分析を深めるよう求めた。
また、今回の改定においてあん摩マッサージ施術料の包括化がいきなり議題として挙げられていること、往療料の加算の廃止に向けた議論について、厚労省が離島や中山間地等の地域加算の創設とセットと考えていること─等に懸念を示し、あはき療養費の受領委任払い導入の際に議論した検討内容や経過を踏まえて、まずは訪問施術制度の導入や施術料よりも往療料が多くなっている現状をすぐにでも是正すべきと、次回改定で往療料の加算を廃止するよう改めて求めた。
料金改定の内容については、以下の通り。
○あん摩マッサージ指圧
・温罨法と併施した場合 1回 125円加算 (現行 110円加算)
・温罨法と電気光線器具を使用した場合 1回160円加算 (現行 150円加算)
・施術報告書交付料 480円 (現行 460円)
○はり・きゅう
・初検料 1術(はり、きゅうのいずれか)1780円(現行 1770円)
・初検料 2術(はりときゅうの併用)1860円 (現行 1850円)
・電療料 電気針、電気温灸器、電気光線器具を使用した場合 1回34円加算(現行 30円加算)
・施術報告書交付料 480円 (現行 460円)