健保ニュース
健保ニュース 2022年5月下旬号
全世代型社保会議が「中間整理」
医療提供体制を国民目線で改革
かかりつけ医 機能発揮へ制度整備
政府の全世代型社会保障構築会議(清家篤座長)は17日、首相官邸で5回目の会合を開き、医療提供体制改革などを柱とする「議論の中間整理」を取りまとめた。医療提供体制は、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を含め、機能分化と連携を一層重視した国民目線での改革を推進。6月に策定予定の「骨太の方針2022」に反映する。岸田文雄首相は、「政府として足元の課題からスピード感を持って取り組むとともに、中長期的な課題についても、具体的な改革事項を工程化していく」と言及。国民的な議論を進めながら、政策の具体化を進めていく意向を示し、関係大臣に協力を指示した。
「議論の中間整理」は、①全世代型社会保障の構築に向けて②男女が希望どおり働ける社会づくり・子育て支援③勤労者皆保険の実現・女性就労の制約となっている制度の見直し④家庭における介護の負担軽減⑤「地域共生社会」づくり⑥医療・介護・福祉サービス─の6分野を柱とする。
総論を明記した①は、高齢者人口がピークを迎えて減少に転じる2040年頃を視野に入れつつ、短期的および中長期的な課題について、「時間軸」を持って計画的に取り組みを進めていくことが望ましいと指摘。
その際、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、能力に応じて皆が支え合うことを基本としながら、人生のステージに応じて必要な保障を確保することが重要と提言した。
そのうえで、②は、不妊治療の保険適用など既に決定された各種取り組みを着実に推進していくほか、妊娠・出産支援として、「出産育児一時金」の対応をはじめとする、経済的負担の軽減について議論を進めることを求めた。
また、③は、働き方に対して「中立」な社会保障制度の構築を進めることが必要との観点から、令和2年の年金制度改正法にもとづく「被用者保険の適用拡大」を着実に実施するとともに、企業規模要件の撤廃や非適用業種の見直しなどを検討。
フリーランスの被用者性など、より幅広い社会保険の適用のあり方について総合的に検討するとした。
④は、今後のさらなる高齢化の進展とサービス提供人材の不足を踏まえると、医療・介護提供体制改革や社会保障制度基盤強化の取り組みは必須であると問題提起。
まずは、「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築に向け、地域医療構想の推進や地域包括ケアシステムの整備を、都道府県のガバナンス強化など関連する医療保険制度改革と併せて着実に進めていくべきとした。
さらに、コロナ禍で直面した課題を踏まえ、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」を含む、機能分化と連携を一層重視した医療提供体制に向けて、国民目線で改革を進めるべきと提言。
2025年までの取り組みとなっている「地域医療構想」は、2024年からの「第8次医療計画」の策定と合わせ、病院のみならず、かかりつけ医機能や在宅医療等を対象に取り込んだうえで、生産年齢人口の減少が加速していく2040年に向けたバージョンアップを行う必要があるとした。
他方、データの連携、総合的な活用は、社会保障分野におけるサービスの質向上に重要な役割を果たすものであると指摘し、社会保障全体のDXを進めるべきと明記。
このほか、サービスの質向上、人材配置の効率化、働き方改革の観点から、▽医療・介護・福祉サービスにおけるICTの活用▽事業報告書を活用した費用の見える化など、看護・介護職員の処遇改善促進策▽処遇改善も勘案したタスクシェア・シフティングや経営の大規模化・協働化─なども盛り込んだ。