健保ニュース
健保ニュース 2022年4月中旬号
支払基金との令和4年度契約を締結
手数料階層化 9月までの解決を強く要請
支払基金、厚労省に要請書を提出
健保連は4月1日付で、社会保険診療報酬支払基金(神田裕二理事長)と令和4年度診療報酬の審査支払事務手数料や診療報酬等の納入期日などを定めた契約を締結。これに合わせ、健保連の佐野雅宏副会長、河本滋史常務理事らが4日、支払基金本部と厚生労働省を訪ね、神田理事長と同省保険局の江口満保険課長に要請書を手交した。
支払基金の神田理事長あてに提出した要請書は、4年度の契約更改に関する合意にあたり確認した4年度中を目途とする「検討事項」の解決などを求める。また、同日付の厚労省濱谷浩樹保険局長あての要請書は、支払基金関係の課題解決に向けた支援などを求めた。
佐野副会長は、支払基金に対し、4年度は支部を廃止し、審査支払事務を集約化する重要な年との理解を示しつつも、健保組合も高齢者医療への拠出が増加する一方で、保険料収入が低迷していることを踏まえて、厳しい環境にさらされていると言及。結論を来年に持ち越した手数料階層化など課題は多々あると指摘したうえで、検討を進めるために設置した健保連、全国健康保険協会、支払基金、厚労省によるワーキンググループで、健保組合の意を汲んだ前向きな検討を求めた。
厚労省に対しては、手数料階層化の協議にあたり不可欠な費用変動の見込みの提供に加え、4年度は集約化をはじめとする支払基金改革がヤマ場を迎えるとして、改革の成果を受け取れるよう支援を要請した。
4月1日付で支払基金と契約した令和4年度の契約内容は、①審査支払事務手数料(レセプト1件あたり)医科・歯科71.6円、調剤35.8円②レセプト電子データ提供事業利用料(同)電子レセプト1.50円、紙レセプト8.70円(基本セット5.20円、オプション3.50円)③出産育児一時金等の支払にかかる手数料109円─など。
厚労省と支払基金は、手数料階層化が支払基金法の改正により実施可能になったことを受けて、審査支払新システムの導入から半年経過する4年度から導入する方針を示していた。しかし、4年度契約に向けて行われた協議では、階層化による手数料設定をめぐり、「判断が明らかなレセプト」の手数料を審査コストに応じて引き下げる一方で「その他のレセプト」の手数料を引き上げて財政中立による階層化を求める支払基金と、「判断が明らかなレセプト」のみの引き下げを求める健保連の間の溝が埋まらず、苦渋の決断の末4年度は導入を延期することで合意した。
契約協議で課題明確化
検討・支援を要請
支払基金に対する要請書は、4年度契約の協議で明確になった①審査の内容に応じた審査事務手数料階層化の令和5年度導入②審査委員会費の効果を中心とした中長期財政フレームの見直し③令和2年度決算積立預金の使途・保全ルールの検討④退職給付引当預金繰入計画の検討─といった課題をワーキンググループで検討し、4年9月を目途に解決するよう強く要望した。
②は、支払基金改革を踏まえ、目視レセプトの減少、在宅審査等による審査委員会費の縮減額を明確化し、中長期財政フレームに反映させる。
③の令和2年度決算積立預金は、いわゆる「期ずれ預金」で、支払基金が4年度の審査拠点統合に伴う一時的な経費支出に充てることを提案し、後に撤回した経緯を踏まえて、認識をすり合わせ、ルールを策定する。
このほかにも、▽支払基金業務効率化▽審査における不合理な差異解消▽ビッグデータの活用によるデータヘルス計画の推進─のための取り組みを求めた。
要請書を手交した佐野副会長が、要請事項の検討を早期に行うよう求めたのに対し、神田理事長は10月の集約化に伴う事務所の引越しやレイアウト工事が、検討期限に設定されている9月と重なることを踏まえ、了承した。また、神田理事長は、手数料階層化について、4年度は積立金を取り崩しても手数料水準を維持するのが精一杯だったと説明するとともに、健保組合と同じ問題意識をもっているとして、5年度に階層化を実現する考えを示した。
厚労省に対しては、支払基金に提出した「要請事項」を踏まえて、▽昨年度手数料協議で明確化した課題の解決▽支払基金改革の更なる促進と拡大▽審査業務の効率化・審査基準の統一化等─の各テーマに対する支援を求めた。
佐野副会長は、レセプト件数とそれをもとにした手数料が、これまで右肩上がりで伸びてきたものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響で減少に転じたと状況が大きく変化していることを改めて指摘した。