HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2022年3月下旬号

健保ニュース

健保ニュース 2022年3月下旬号

支払基金・4年度事業
10月の審査集約へ定款変更
事業計画にも包含

社会保険診療報酬支払基金(神田裕二理事長)は1日に記者会見を開き、審査事務をブロック単位に集約するなどの支払基金改革に向けた定款変更と、それを踏まえた令和4年度の事業計画および収入支出予算を発表した。

審査事務の集約は、厚生労働省、支払基金が平成29年7月にまとめた「支払基金業務効率化・高度化計画」において支部廃止の方針を示し、令和元年には支払基金法の改正を盛り込んだ改正健保法等が成立したことで、都道府県支部の必置規定を廃止するなど審査事務を集約する土台を作った。支払基金は2年3月に「審査事務集約化計画工程表」をまとめ、4年10月から集約化することとしていた。

審査事務集約を踏まえ基金の定款を変更

今般の発表事項のうち定款変更は、集約化に当たり必要となる、支払基金の体制に関する規定を10月1日から改める。各都道府県に設置した支部を廃止するとともに、ブロック単位の審査事務センターと都道府県単位の審査事務センターを設置する。

審査事務センターは▽レセプト審査に係る事務の実施▽審査の取り扱いの調整▽本部の指示の下、審査委員会事務局の統括─の役割を、審査委員会事務局は▽審査委員による審査の補助等▽医療機関や関係団体との調整─の役割を果たす。

審査事務センターのなかでも中核審査事務センター(6か所)は審査結果の不合理な差異解消に向けて中心的な役割を担い、それ以外のセンター(地域審査事務センター(4か所))と分けて規定。附則により、当分の間、審査事務センターの下に審査事務センター分室(4か所)を設置する。

全国審査委員長会議とブロック別審査委員長会議の設置も定め、審査結果の不合理な差異解消に向け、審査委員会間の調査をするなど審査に関する重要事項を調査審議することとした。

健保組合をはじめとする保険者、被保険者、診療担当者、公益の四者の代表で都道府県ごとに基金の審査運営を協議する審査運営協議会は、10月1日付で定款に明記する。四者構成で支部の業務運営を協議していた旧幹事会は、支払基金法の支部必置規定廃止を受けて3年4月に定款から削除されており、その後継機関となる。

審査事務集約のほかにも支払基金法の改正に伴い、4月1日から定款を見直す。審査支払事務手数料の算定基準については、従来のレセプト枚数だけでなくレセプト審査内容も加える。支払基金が実施可能な業務に追加されたレセプト・特定健診データなどの分析業務においては、情報通信技術やデータ分析等の専門家の意見を聴く必要があることを踏まえ、規定を整備する。

このほか、支払基金本部の執行体制を強化するため、附則に6年までの時限措置として定めていた理事長特任補佐を、厚労省の認可日から本則に規定するとともに、審議役を執行役に名称変更するなどの変更を行う。

10月の審査事務集約化
4年度事業計画に包含

支払基金が記者会見で公表した4年度事業計画は、「新生支払基金を創建する年」と位置づけ、審査事務の集約に向けた取り組みを盛り込んだ。支部廃止に合わせて、中核審査センター、地域審査事務センター、審査事務センター分室に職員を集約することとし、全職員へ5月に配置先を内示する。

職員定員は、工程表で定めた6年度末に3500人とする目標を踏まえ、4年度末に3926人(前年度同期比120人減)へと削減する。

集約に伴う事務所の整理は、支払基金が3年4月にまとめた「社会保険診療報酬支払基金保有資産活用基本方針」を踏まえて継続使用と移転売却に向けた計画を策定した。継続使用する審査事務センター(分室)の事務所(11事務所)および築30年未満の審査委員会事務局の事務所(11事務所)を対象に、5年度から5年間の大規模修繕計画をまとめる。築30年以上の審査委員会事務局の事務所(24事務所)は、8年度からの移転売却の基本方針を策定する。

審査結果の不合理な差異解消に向けては、ブロック単位で設置した診療科別のワーキンググループにおいて、職員が把握した審査事例や、審査委員からの検討依頼事例について検討。複数ブロックに跨り本部で検討した事例とともに、統一した取り決めは支払基金のホームページ等で周知する。

審査の差異の可視化レポーティングでは4年度、▽3年度に公表したレポートのうち、差異が見られた事例のフォローアップ結果▽歯科の審査情報提供事例225事例のうち3年度公表事例を除く事例▽年間2千件以上のコンピュータチェック付箋が付く事例─をレポート対象とする。

3年9月から稼働した審査支払新システムに関しては、原審査時にコンピュータチェックがなく、査定箇所が1年間で500を超え、該当都道府県が30を超える251の医薬品・診療行為を分析。査定につながる可能性が高い条件を見出した場合は、全国統一的なコンピュータチェックを設定する。現在紙で請求されている訪問看護レセプトの電子化に向けては、6年5月からの稼働を目途に開発を行う。

事業計画では、4年度を「データヘルスの積極展開の年」として、保険医療情報等の活用に関する取り組みも盛り込んだ。オンライン資格確認等システムを通じてマイナポータルや医療機関での閲覧に提供している薬剤情報、特定健診等情報などに加えて、4年夏を目途に保険医療機関名、診療年月等の基本情報、手術・透析等のレセプト情報の提供を開始する。5年度を目途に、事業主健診情報の提供の開始に向けたシステム改修を実施。オンライン資格確認等システムを拡張して支払基金・国保中央会が環境整備する電子処方箋管理サービスは、政府方針どおり5年1月から運用を開始する。

また、事業計画では「ウィズコロナに対応した新たな働き方と中期的に安定した財政運営への転換」を進めるための取り組みとして、事業継続計画策定、中期的な財政運営の検討、新手数料体系について引き続きの保険者団体等との協議などに取り組むとした。

4年度予算733億円
前年度比19億円減

記者会見では、支払基金が4年度予算について発表し、レセプトの審査支払などにかかる「事務費勘定」の4年度収入支出予算に、前年度比19.0億円減の733.3億円を計上したことなどを説明した。収入の大半を占める事務費収入は、3年度の回復傾向を踏まえ、新型コロナウイルス感染拡大前の元年度実績までは回復しないものの、増額計上した。予算が前年度比プラスになったのは、2年度以来2年ぶり。

なお、支払基金は3年度から、改正基金法による業務追加を踏まえて会計区分を変更しており、「事務費勘定」は「一般会計」から審査支払業務を経理する「審査支払会計」のうちの1勘定として管理されている。

事務費勘定の3年度決算は、収入が前年度比4.8億円減の709.5億円、支出が同10.8億円減の703.5億円として、6.0億円の黒字を見込んだ。

4年度予算は、収入の9割超を占める事務費収入は、21.5億円増の696.1億円を計上。審査支払平均手数料は前年度と同額の59.9円で、取扱件数が3500万件増の11億6136万件と見込んだ。このうち、医療保険分の事務費収入は11億円増の558億円、取扱件数は1810万件増の9億3103万件。

支出は、給与諸費は120人の定員減などを織り込み、10.7億円減の330.5億円を計上した。業務経費は、12.7億円増の247.9億円で、システム刷新経費1.2億円(前年度比26.1億円減)やシステム関連経費95.2億円(同3.0億円減)などが減少した一方、退職給与引当預金への繰り入れ34.9億円(同32.5億円増)、事務所等環境整備経費10.6億円(新規)などの増加を見込んだ。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年