健保ニュース
健保ニュース 2022年3月下旬号
令和4年度診療報酬改定を告示
厚労省がYou Tubeで概要周知
機能強化加算 実績要件に経過措置
厚生労働省は4日、令和4年度診療報酬改定について官報告示し、留意事項を地方厚生局と都道府県に通知した。
厚労省保険局医療課は同日付で改定内容の概要を説明する動画をYou Tubeで公開し、4月施行に向けて周知した。
【入院医療】
急性期入院医療の評価では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で果たした医療機関の役割を踏まえ、手術や救急医療等の高度かつ専門的な医療および高度急性期医療の提供にかかる体制を十分に確保している場合の評価として、「急性期充実体制加算」を新設した。
入院した日から起算し14日を限度として「急性期一般入院料1」または「特定一般病棟入院料」に、▽460点(7日以内)▽250点(8日以上11日以内)▽180点(12日以上14日以内)─を1日につき上乗せする。「総合入院体制加算」は併算定できないこととした。
施設基準は、▽急性期一般入院料1を算定する病棟を有している▽手術等にかかる実績を満たしている▽24時間の救急医療を提供している─などで、「手術等の実績」は、▽全身麻酔による手術が年2000件以上(緊急手術350件以上)または300床未満の病院は1床あたり年6.5件以上(緊急手術1.15件以上)─などを求める。
また、「24時間の救急医療提供」は、▽救命救急センターまたは高度救命救急センターを有している▽救急搬送件数が年2000件以上または300床未満の病院は1床あたり年6.0件以上─のいずれかを満たすことなどが必要となる。
他方、急性期入院医療の必要性に応じた適切な評価を行う観点から、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」を見直すとともに、「急性期一般入院料」を7段階から6段階の評価に再編することで簡素化を図る。
「心電図モニターの管理」の廃止など、「必要度」の判定にかかる評価項目を厳格化する一方、該当患者割合の基準値を緩和。令和4年3月31日時点で施設基準の届出がある場合、9月30日まで基準を満たしているものとみなす経過措置を設ける。
「急性期一般入院料6」の点数は「1382点」に引き下げる。経過措置として、4年3月31日時点で「急性期一般入院料6」の届出がある場合、9月30日まで改定前の「1408点」を算定できることとした。
合わせて、「必要度」の測定にかかる負担軽減および適正化をさらに推進する観点から、「急性期一般入院料1」を算定する許可病床数200床以上の病棟について、診療実績データから変換する方式の「必要度Ⅱ」を用いることを要件化。
4年3月31日に「急性期一般入院料1」を届け出ている許可病床数200床以上400床未満の病院は、12月31日までの間に限り当該基準をみたすものとみなす経過措置を設ける。
「救急医療管理加算」は、対象患者の状態について、▽顔面熱傷または気道熱傷▽消化器疾患で緊急処置を必要とする重篤な状態▽蘇生術を必要とする重篤な状態─を追加したうえで、「加算1」、「加算2」とも評価を引き上げる。
また、対象患者が「意識障害または昏睡」や「呼吸不全または心不全で重篤な状態」、「広範囲熱傷」に該当する場合は、緊急入院が必要であると判断した医学的根拠をレセプトの摘要欄に記載するよう算定要件を見直した。
【外来医療】
外来機能の明確化および医療機関間の連携を推進する観点から、紹介状なしで受診した患者等から定額負担を徴収する責務がある医療機関の対象に、一般病床200床以上の「紹介受診重点医療機関」を追加する。
定額負担額は現行の「初診(医科5000円、歯科3000円)」、「再診(医科2500円、歯科1500円)」を「初診(医科7000円、歯科5000円)」、「再診(医科3000円、歯科1900円)」に見直したうえで、引き上げ額を保険給付範囲から控除する。
令和4年10月1日から適用。また、新たに「紹介受診重点医療機関」となってから6か月の経過措置を設ける。
他方、症状が安定している患者に対し、医師の処方により医師および薬剤師の適切な連携のもと、一定期間内に処方箋を反復(3回上限)利用できる「リフィル処方箋」の仕組みを設ける。処方箋の様式を見直し、「リフィル可」欄や「調剤実施回数」欄を追加する。
「かかりつけ医機能」の評価の推進に向けては、「診療情報提供料Ⅲ」の名称を「連携強化診療情報提供料」に変更したうえで、算定上限回数を「3月に1回」から「月1回」に見直す。
「地域包括診療料」と「地域包括診療加算」は、対象疾患に「慢性心不全」と「慢性腎臓病」を追加。患者からの予防接種にかかる相談対応を算定要件に追加するとともに、院内掲示で周知することを施設基準に盛り込んだ。
初診料に「80点」が上乗せされる「機能強化加算」は、地域で「かかりつけ医機能」を担う医療機関の体制について、診療実態も踏まえた適切な評価を行う観点から要件を見直す。
算定要件に、▽患者の処方薬を把握し診療録に記載▽専門医師または専門医療機関への紹介▽健康管理にかかる相談▽保健・福祉サービスにかかる相談▽緊急時の対応方法等にかかる情報提供─などが可能な旨を院内およびホームページに掲示し、必要に応じて患者に説明することを追加。
施設基準は、適切な受診につながるような助言および指導を行うなど、質の高い診療機能を有する体制の整備を求める。
「地域包括診療加算2」や「地域包括診療料2」は従来の届出に加え、「直近1年間で算定患者が3人以上」などの実績を満たす要件を新設。「在宅時医学総合管理料」や「施設入居時等医学総合管理料」を届け出ている機能強化型以外の在宅療養支援診療所は、「過去1年間で緊急往診の実績3件以上」などを満たす必要がある。
また、▽介護保険制度の利用の相談対応、主治医意見書の作成▽警察医として協力▽乳幼児健診を実施▽定期予防接種を実施▽幼稚園の園医等▽地域ケア会議に出席▽一般介護予防事業に協力─のいずれかを行っている常勤医師の配置を追加する。
4年3月31日時点で「機能強化加算」を届け出ている医療機関は、9月30日までの間に限り、「地域包括診療加算2」、「地域包括診療料2」、「機能強化型以外の在宅療養支援診療所および在宅療養支援病院」における実績基準を満たしているものとする経過措置を設ける。
外来医療、在宅医療およびリハビリテーション医療について、データにもとづく適切な評価を推進する観点から、「生活習慣病管理料」、「在宅時医学総合管理料」、「疾患別リハビリテーション料」等において、医療機関が診療報酬の請求状況、治療管理の状況等の内容に関するデータを継続して厚労省に提出している場合の評価を新設する。
「生活習慣病管理料」は「外来データ提出加算(月1回50点)」、「在総管、施設総管、在宅がん医療総合診療料」は「在宅データ提出加算(同)」、「疾患別リハビリテーション料」は「リハビリテーションデータ提出加算(同)」をそれぞれ新設。5年5月から試行データを運用し、10月1日から算定可能とするスケジュールとなっている。
【感染症対策】
平時からの感染防止対策の実施や地域の医療機関等が連携して実施する感染症対策への参画を推進する観点から、診療所における外来診療時の感染防止対策にかかる評価を新設する。
「外来感染対策向上加算」として、▽専任の院内感染管理者を配置▽院内感染対策に関するカンファレンスに参加▽新興感染症の発生等を想定した訓練に参加▽都道府県等の要請を受けて発熱患者の外来診療等を実施する体制を有していることを自治体のホームページで公開─しているなどの診療所は、初・再診料等に「6点(月1回)」を上乗せして算定できる。
【オンライン診療】
「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の見直しにもとづき、情報通信機器を用いた初診について新たな評価を行う。
情報通信機器を用いた場合の「初診料」は、対面診療(288点)と時限的・特例的な対応(214点)における初診料の中間的な点数にあたる「251点」を設定した。
また、平成30年度改定で新設した「オンライン診療料」を廃止したうえで、情報通信機器を用いて再診を行った場合の「再診料(73点)」と「外来診療料(73点)」を新設する。
情報通信機器を用いた医学管理等は、▽ウイルス疾患指導料▽皮膚科特定疾患指導管理料▽小児悪性腫瘍患者指導管理料▽がん性疼痛緩和指導管理料▽がん患者指導管理料▽外来緩和ケア管理料▽移植後患者指導管理料▽腎代替療法指導管理料▽乳幼児育児栄養指導料▽療養・就労両立支援指導料▽がん治療連携計画策定料2▽外来がん患者在宅連携指導料▽肝炎インターフェロン治療計画料▽薬剤総合評価調整管理料─を追加し、初診料と同様に対面診療の87%の点数を設定した。
【不妊治療】
令和4年3月以前から保険適用していた不妊検査や原因疾患への治療に加え、4月からは原因不明の不妊や治療が奏功しないものも新たに保険適用する。
一般不妊治療は排卵のタイミングに合わせた性交を指導する「タイミング法」や精液を直接子宮に注入し妊娠を図る「人工授精」、生殖補助医療は体外で受精させ子宮に戻して妊娠を図る「体外受精」や人工的な方法で受精させる「顕微授精」、手術用顕微鏡で精巣内より精子を回収する「男性不妊の手術」を対象とする。
第三者の精子・卵子等を用いた生殖補助医療は、保険適用の対象外とした。
一般不妊治療は、3月に1回算定できる「一般不妊治療管理料(250点)」と「人工授精(1820点)」を新設。
生殖補助医療は、月に1回算定できる「生殖補助医療管理料(相談対応の専任者を配置300点、それ以外250点)」や「抗ミュラー管ホルモン(半年に1回600点)」、「体外受精・顕微授精管理料(体外受精4200点、顕微授精4800~12800点)」などの評価を新設した。
【歯科診療】
歯科外来診療の新興感染症対策の研修、職員を対象とした新興感染症対策の院内研修の実施を施設基準に追加したうえで、「歯科初診料」を「264点」、「歯科再診料」を「56点」へとそれぞれ3点引き上げる。
令和4年3月31日において、歯科点数表の初診料の注1を届け出ている医療機関は、5年3月31日までの間に限り、新興感染症対策の研修・院内研修の基準を満たしているものとみなす経過措置を設ける。
【調剤報酬】
後発医薬品の調剤数量割合が著しく低い薬局に対する「調剤基本料」の減算規定について、対象薬局の範囲を後発品の調剤数量割合が「5割以下」に拡大するとともに、減算点数を「5点」に増点する。
対象薬局の範囲は令和4年9月30日までの間、現在の規定である「4割以下」を適用。減算点数は4年4月1日から「5点」を適用することとした。