健保ニュース
健保ニュース 2022年1月下旬号
看護必要度のシミュレーション
急性期入院1 最大2割が基準満たせず
支払側は厳格化案を支持
厚生労働省は、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」にかかる該当患者割合のシミュレーション結果をまとめ、12日の中医協総会に提示した。
評価項目からA項目の「心電図モニターの管理」を削除するなど、最も厳しい見直し案によると、約2割の病院が旧7対1入院基本料に相当する「急性期一般入院料1」の基準を満たせなくなる試算結果が明らかになった。
支払側は、医療機能の分化・強化と連携のさらなる推進に向けて、最も厳しい見直し案を軸に施設基準のあり方にかかる検討を進めていくべきと主張。
一方、診療側は、新型コロナウイルス感染症禍に急性期入院医療の評価体系を厳格化する議論を行うことは到底承服できないと強調した。
昨年12月22日の財務・厚労大臣折衝で合意した診療報酬に関する制度改革事項では、「看護配置7対1の入院基本料を含む入院医療の評価の適正化」など、中医協での議論も踏まえ対応する方針が盛り込まれたが、急性期入院医療に対する両側の意見は平行線を辿り、着地点が見出せないまま個別改定項目の議論を進めていくこととなる。
厚労省は、「急性期一般入院料1、4~6」の患者について、一定の条件を適用した場合の施設ごとの該当患者割合の分布および施設基準を満たす施設の割合を入院料ごとに集計した。
見直し案は4パターンあり、①は、▽A項目の「輸血や血液製剤の管理」の点数を1点から2点に変更▽A項目の「点滴ライン同時3本以上の管理」を「注射薬剤3種類以上の管理」に変更─。
②は、▽B項目の「衣服の着脱」の削除▽C項目の「骨の手術(11日間)」の日数を10日間に変更─。
③は、▽A項目の「心電図モニターの管理」の削除▽A項目の「輸血や血液製剤の管理」の点数を1点から2点に変更▽A項目の「点滴ライン同時3本以上の管理」を「注射薬剤3種類以上の管理」に変更─。
④は、▽A項目の「心電図モニターの管理」の削除▽A項目の「輸血や血液製剤の管理」の点数を1点から2点に変更▽A項目の「点滴ライン同時3本以上の管理」を「注射薬剤3種類以上の管理」に変更▽B項目の「衣服の着脱」の削除▽C項目の「骨の手術」の日数を11日間から10日間に変更─。
「急性期一般入院料1」の基準を満たす医療機関数は、①1.4%増(必要度Ⅰ2.7%増、必要度Ⅱ0.4%増)②1.5%減(同3.2%減、同0.3%減)③14.2%減(同26.1%減、同5.2%減)④18.8%減(同31.9%減、同8.9%減)で、①を除き、200床以上に比べ200床未満で大きく減少する。
「急性期一般入院料4」の基準を満たす医療機関数は、200床以上が、①1.6%増(同1.9%増、同1.2%増)②1.0%減(同1.9%減、同0%)③9.8%減(同16.8%減、同1.2%減)④11.4%減(同19.6%減、同1.2%減)。
200床未満は、①1.5%増(同1.7%増、同0.7%増)②1.8%減(同1.7%減、同2.2%減)③15.7%減(同17.5%減、同7.4%減)④17.3%減(同19.0%減、同8.9%減)で、減少幅はいずれも200床未満で大きい。
「急性期一般入院料5」の基準を満たす医療機関数は、①4.7%増(同4.8%増、同4.3%増)②2.0%減(同1.9%減、同2.2%減)③17.3%減(同17.3%減、同17.4%減)④21.8%減(同22.4%減、同17.4%減)─。
「急性期一般入院料6」の基準を満たす医療機関数は、①4.9%増(同5.4%増、同0%)②2.7%減(同3.0%減、同0%)③14.7%減(同14.9%減、同13.0%減)④18.2%減(同17.8%減、同21.7%減)─だった。
なお、「急性期一般入院料4~6」については、「重症度、医療・看護必要度」にかかる該当患者割合の基準値を「1~6%」引き下げた場合のシミュレーションも実施。この場合、いずれも基準を満たす医療機関数は改善する。
診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「今回のシミュレーション結果は、現状よりも厳しくなる見直し案であり、到底、承服できるものではない」と主張。特に、「心電図モニターの管理」を削除すると、処置や手術の該当割合が少ない内科系の急性期病棟に大きな影響が生じることになると問題提起した。
他方、「急性期一般入院料4~6」の基準値を切り下げた場合のシミュレーション結果については、「コロナ禍で急性期入院医療を守るために必要な処置である」との認識を示し、「中小病院の急性期入院医療にかかる評価を厳格化する対応はあり得ない改定と言わざるを得ない」と牽制した。
健保連の松本真人理事は、「4年度改定は、コロナ禍のなかで人口構造や医療ニーズが確実に変化することを踏まえ、医療機能の分化・強化、連携についてさらに一段と推進することが極めて重要である」と指摘。
そのうえで、シミュレーション結果から、見直し案④を軸に「輸血や血液製剤の管理」の点数を1点にしたままのケースも含め議論を進めていくべきとの考えを示した。
他方、「急性期一般入院料4~6」の基準値を引き下げるシミュレーションも示されたことに対し、「急性期一般入院料1における基準値のさらなる引き上げや必要度ⅠとⅡにおける格差のあり方も検討課題として残っている」と主張した。
このほか、特定集中治療室用の「重症度、医療・看護必要度」については、シミュレーション結果から、A項目の「心電図モニターの管理」およびB項目を評価項目から除いたうえで、判定基準を「A項目3点以上」に見直す対応や、現行評価とレセプト電算処理システムコードを用いた評価との各入院料における該当患者割合の差を踏まえた設定を論点とした。