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健保ニュース 2021年12月上旬号

第23回医療経済実態調査
コロナ補助金で 病院は黒字に改善
診療所は補助金なく黒字確保

中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)は11月24日、令和4年度の次期診療報酬改定の基礎資料となる第23回医療経済実態調査の報告書をまとめた。

医療機関や薬局の経営状況について、収益に対する損益差額の割合を表す損益率をみると、一般病院の2年度損益率は▲6.9%で、2年度改定前の元年度から3.8ポイント悪化する一方、新型コロナウイルス感染症関連の補助金を含む損益率は0.4%と黒字になり、元年度から3.5ポイント改善した。

一般診療所は▽個人28.8%(補助金なし28.0%)▽医療法人4.2%(同3.8%)─、歯科診療所は▽個人30.1%(同28.1%)▽医療法人7.1%(同6.3%)─、薬局は▽個人10.4%(同9.9%)▽法人6.6%(同6.4%)─の損益率となり、補助金の交付に関係なく高水準の黒字を確保した。

他方、3年6月の医療機関等の損益状況を元年、2年の同月と比較した「単月調査」によると、一般病院はコロナ前の元年6月と比べ損益率は悪化したが、コロナ後の2年6月と比較すると改善。一般診療所は「個人」、「医療法人」ともコロナ前後と比べ経営状況は改善した。

調査は、全国から層化無作為抽出した施設を対象として改定前後の元年度と2年度の医業収益、介護収益、給与費、医薬品費、減価償却費などを把握した。

医業・介護収益に占める介護収益の割合が2%未満の施設を対象に集計した一般病院における2年度の1施設当たり損益状況をみると、医業収益32億4221万円(前年度比3.3%減)、介護収益501万円(同40.8%減)に対し、医業・介護費用は同0.2%増の34億7195万円で、差し引き2億2473万円の赤字となった。

損益率は同3.8ポイント減の▲6.9%だったが、新型コロナ関連の補助金を含めると、損益率は同3.5ポイント増の0.4%まで改善する。

支出面では医業・介護費用の58.3%を占める給与費のほか、委託費やその他の医業費用も増えた。

設置主体別の損益率をみると、医療法人は同0.5ポイント増の2.3%(補助金なし0.1%)、国立は同8.5ポイント増の6.8%(同▲9.2%)、公的は同5.6ポイント増の5.4%(同▲3.0%)の黒字となる一方、公立は同6.9ポイント増の▲7.3%(同▲21.4%)の赤字となった。国公立を除いた一般病院の損益率は同1.9ポイント増の2.7%(同▲1.8%)となっている。

一般病院に常勤する職員の賞与を含めた1人当たり年間給与額は、病院長2690万円(前年度比1.6%減)、医師1467万円(同1.1%減)、歯科医師1156万円(同0.6%増)、薬剤師550万円(同1.0%減)、看護職員506万円(同0.2%増)、看護補助職員315万円(同1.3%増)、医療技術員462万円(同0.3%減)だった。

他方、精神科病院は、2年度損益差額が3268万円の赤字で、損益率は同0.4ポイント増の▲2.2%(補助金なし▲4.5%)だった。

このほか、病院機能別の損益率をみると、特定機能病院が同2.8ポイント増の▲2.8%(同▲9.7%)、DPC対象病院が同5.1ポイント増の1.4%(同▲8.1%)、こども病院が同0.1ポイント増の▲11.0%(同▲17.8%)だった。

入院基本料別の損益率をみると、旧7対1入院基本料に相当する「急性期一般入院料1」の算定施設は同5.0ポイント増の1.7%(同▲7.7%)、「同2~3」の算定施設は同6.1ポイント増の▲0.3%(同▲9.9%)、「同4~7」の算定施設は同1.1ポイント増の▲2.5%(同▲6.7%)。

療養病棟入院基本料別の損益率は、「基本料1」の算定施設が同0.5ポイント増の2.6%(同1.0%)と黒字の一方、「基本料2」は同1.2ポイント増の▲4.2%(同▲8.5%)で赤字となっている。

一般病院における病床規模別の損益率をみると、「100~199床」が同1.4ポイント増の▲0.8%(同▲4.8%)、「200~299床」が同3.9ポイント増の0.3%(同▲7.6%)、「300~499床」が同6.5ポイント増の2.5%(同▲7.7%)、「500床以上」が同4.9ポイント増の2.1%(同▲7.8)だった。

一般診療所の診療科別損益
皮膚科や眼科は二桁の黒字

一般診療所の2年度損益率をみると、「個人」は前年度比3.0ポイント減の28.8%(補助金なし28.0%)、医療法人は同2.3ポイント減の4.2%(同3.8%)の水準で推移し、いずれも黒字を確保した。

入院収益のない診療所は、個人が同3.1ポイント減の29.6%(同28.8%)、医療法人は同2.7ポイント減の4.4%(同4.0%)。入院収益のある診療所は、個人が同1.8ポイント減の19.4%(同18.9%)、医療法人は同0.1ポイント減の2.9%(同2.7%)で、一定の水準を維持した。

主たる診療科別の損益率をみると、▽皮膚科:同1.7ポイント減の19.1%(同18.6%)▽眼科:同2.5ポイント減の17.1%(同16.7%)▽精神科:同4.5ポイント減の14.8%(同14.4%)─などで二桁の黒字を維持する一方、受診控えの影響が大きかった小児科は同8.6ポイント減の2.1%(同1.4%)に落ち込んだ。

一般診療所の常勤職員1人当たり年間給与額をみると、個人は▽医師997万円(前年度比1.5%増)▽看護職員367万円(同0.6%増)▽医療技術員410万円(同1.2%増)─といずれも上昇。

医療法人は、▽院長2729万円(同1.9%減)▽医師1078万円(同0.1%減)▽看護職員378万円(同0.6%増)▽医療技術員407万円(同1.3%減)─だった。

歯科診療所の2年度損益率をみると、「個人」が前年度比0.4ポイント増の30.1%(補助金なし28.1%)、「医療法人」は同0.5ポイント増の7.1%(同6.3%)で、いずれも増益となった。

歯科診療所の常勤職員1人当たり年間給与額をみると、個人は、▽歯科医師645万円(前年度比2.1%増)▽歯科衛生士273万円(同1.8%増)▽歯科技工士393万円(同3.1%増)─といずれも上昇。

医療法人は、▽院長1475万円(同0.5%増)▽歯科医師746万円(同2.6%増)▽歯科衛生士331万円(同3.6%増)▽歯科技工士436万円(同2.8%減)─で、歯科技工士を除き上昇している。

薬局の2年度損益率をみると、「個人」が前年度比1.0ポイント減の10.4%(補助金なし9.9%)、「法人」は同増減なしの6.6%(同6.4%)で、いずれも黒字を確保した。

「法人」についてチェーン店舗数別の損益率をみると、1店舗が同1.6ポイント減の0.8%(同0.6%)、2~5店舗が同0.9ポイント減の3.1%(同2.9%)、6~19店舗が同1.0ポイント減の6.5%(同6.3%)、20店舗以上が同1.1ポイント増の9.5%(同9.3%)で、大規模チェーンほど黒字の水準が高い。

薬局の常勤職員1人当たり年間給与額をみると、「個人」は▽薬剤師368万円(前年度比3.6%減)、「法人」は▽管理薬剤師721万円(同1.2%減)▽薬剤師473万円(同2.2%減)─だった。

単月調査で直近状況把握
損益率は1年前から改善

第23回医療経済実態調査は、直近の経営状況を把握することを目的に、令和元年度と2年度の2事業年度分に加え、3年6月の医療機関等の損益状況を元年、2年の同月と比較した「単月調査」を実施した。

令和3年6月の損益率をみると、一般病院は▲4.7%で、コロナ後の2年6月(▲6.6%)から改善する一方、コロナ前の元年6月(▲2.3%)と比較すると悪化している。精神科病院も同様の傾向を示した。

一般診療所は、「個人」が▽元年6月(32.8%)▽2年6月(28.1%)▽3年6月(33.3%)─、「医療法人」が▽同(6.6%)▽同(3.1%)▽同(8.3%)─で、いずれもコロナ前後と比較し経営状況は改善している。

一方、歯科診療所は、「個人」が▽同(31.7%)▽同(31.6%)▽同(32.9%)─、「医療法人」が▽同(13.3%)▽同(13.9%)▽同(12.7%)─となり、コロナ前後に比べ「個人」は改善、「医療法人」は悪化した。

薬局は、「個人」が▽同(8.9%)▽同(7.8%)▽同(7.0%)─、「法人」が▽同(5.9%)▽同(4.1%)▽同(5.8%)─で、「法人」はコロナ前に近い経営状況へと改善した。

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