健保ニュース
健保ニュース 2021年10月中旬号
経団連が医療・介護制度改革へ提言
2024年度次期計画視野 医療費適正化など反映
政府内に推進役の組織設置
日本経済団体連合会(十倉雅和会長)は12日、2024年度の医療・介護制度改革に向けた提言をまとめ、公表した。
今後の高齢化や現役世代の減少の進行など、人口動態の変化に対応するため、政府内に改革推進役となる組織を設置し、医療提供体制の見直しを通じた医療費の適正化や介護制度における給付・負担面のあり方の見直しが不可欠と提言した。
経団連は、さらなる高齢化などにより、今後も医療・介護給付費は増加する見込みで、人口動態の変化に伴うこうした趨勢は、コロナ禍を受けても不変であると指摘。
高齢者の医療・介護給付費の増加は現役世代の保険料の伸びにつながり、可処分所得拡大の足かせになるなど、現役世代の負担上昇を抑制する観点から、さらなる改革に取り組む必要があると訴えた。
医療・介護制度に大きな影響を与える▽第4期医療費適正化計画(2024~2029年度)▽第8次医療計画(同)▽第9期介護保険事業計画(2024~2026年度)─に改革を反映させるため、2024年度までに対応を図る必要があるとし、優先的に取り組むべき医療・介護制度改革を盛り込んだ。
医療制度改革は、医療提供体制の効率化などを含めて医療費そのものの伸びの抑制に優先的に取り組むべきと主張。日本の医療提供体制は他の先進国と比べ人口当たり病床数が多いことや都道府県ごとの病床数の多寡に起因する入院医療費の地域差の課題が生じているとし、こうした状況の是正のほか、高齢化など人口動態の変化を踏まえ、医療機能もこれに応じた体制へと最適化していくことが不可欠と強調した。
医療費適正化計画や2025年に向けた地域医療構想の実効が上がるよう、都道府県の主体的な取り組みを促すためには、医療費に関する目標の提示や提供体制整備の達成状況の公表など、政府の「骨太方針2021」で掲げられた事項の着実な実現が求められると明記。
併せて、外来医療は、重点化・効率化に資する方策を推進するとともに、国民が安心できる環境整備のため、かかりつけ医機能の推進策について、制度化も含めた対応を検討課題に位置づけた。
介護保険制度は、創設後20年を経て、給付費と受給者数はそれぞれ約3倍に達し、今後もさらに増加する見通しのなか、制度の持続可能性の確保に向けて、利用者負担2割の対象者拡大やケアマネジメントへの利用者負担の導入、要介護1・2の利用者における生活援助サービスの地域支援事業への移行の実現を求めた。
このほか、制度の持続可能性に向けては、現在、政府が進めているデータヘルス改革の着実な進展が重要との認識を示し、医療費の適正化、各種分析を通じたより質の高いケアの提供や効果的な政策立案なども期待。効率的・効果的かつ安心な医療提供体制を確保するためには、今後、医療提供に関する情報を関係者が一層共有・活用していくことも必要とした。
さらに、改革推進に向けた効果的な検討体制として、▽全世代型の社会保障に向けた改革をさらに進める▽中長期視点での「ポスト社会保障と税の一体改革」について腰を据えて検討する─ための推進役となる機関を政府内に設置し、明確な検討スケジュールを掲げて着実に進めていくべきとした。