健保ニュース
健保ニュース 2021年10月下旬号
健保組合の令和2年度決算見込
コロナ影響 経常収入の落ち込み拡大
5年度以降赤字拡大の見通し
健保連は19日に記者会見を開き、令和2年度健保組合決算見込を発表した。それによると、経常収入は前年度比0.8%、681億円減の8兆2956億円で2年連続の減少。減少幅は前年度(対前年度比0.3%減)より拡大したことがわかった。
経常収入の大宗を占める保険料収入が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で同0.7%、596億円減少したことを反映したものだが、このうちの半分(273億円)は新型コロナウイルス感染症の発生に伴う健康保険料の納付猶予等による未収分(対象96組合)となっている。経常支出は同1.4%、1135億円減の8兆4億円と、経常収入を上回って減少し、経常収支は2952億円の黒字となった。
健保連は経常支出の減少について、高齢者への拠出金が増加した一方、新型コロナの感染拡大下で加入者が受診控えしたことにより保険給付費が同5.1%、2113億円減と大幅に減少したうえ、保健事業費も同5.0%、181億円減少した影響と分析した。
また、3年度以降、収入は保険料収入の低迷が継続する可能性があり、支出は4年度以降に団塊の世代の後期高齢者入りで、高齢者への拠出金が急増すると予測。経常収支は3、4年度に赤字を見込んだうえで、5年度に赤字がさらに拡大すると見通した。
健保連の佐野雅宏副会長は、団塊の世代の後期高齢者入りを来年度に控えるなか、拠出金の増加、支え手の現役世代の減少などを課題に挙げ、「医療保険・介護保険が抱える本質的な問題は何ら変わっていない」と危機感を露にした。
2年度決算見込の業態別の経常収支は、「宿泊業、飲食サービス業」が▲41億円で、最大の赤字を計上した。次いで「生活関連サービス業、娯楽業」(▲20億円)、「飲食料品小売業」(▲7億円)、「繊維製品製造業」(▲4億円)の順で赤字が大きい。これらの業態の多くは標準賞与が大きく減少しており、最も伸び率が低下した「生活関連サービス業、娯楽業」では同43.9%減となった。
拠出金は、前々年度の実績から推計した高齢者医療費をもとに賦課するため、前年度比で2年度の概算医療費がマイナスの伸びを示したのと逆に3.2%(1113億円)増加し、3兆5457億円となった。このうち前期高齢者納付金は同5.8%、840億円増の1兆5390億円と大幅に増加した。拠出金額のうち当該年度の概算分(前々年度の精算分を除いた額)と実際にかかる高齢者医療費の乖離は2年後に精算されるものの、保険料収入が落ち込むなかで、乖離が生じる概算払いの仕組みは健保組合運営の不安定要因の1つとなっている。
義務的経費(法定給付費と拠出金の合計)に占める拠出金負担割合は48.1%と同2.1ポイント上昇し、50%が目前に迫っている。また、拠出金負担割合が50%以上の組合は550組合で全体の39.6%を占めた。組合数は同217組合増加し、割合は15.6ポイント上昇しており、拠出金負担による健保組合財政への圧迫がさらに強まっている。
健保組合数は1388組合(前年度から増減なし)。被保険者数は1654万2338人で同11万9579人増、被扶養者数は1227万2907人で同21万1254人減となった。
保険料の基礎となる平均標準報酬月額は37万6142円で同2042円減少した。平均標準賞与額は114万5775円で同5万234円減少した。被保険者1人当たりの保険料額は49万4736円で同7230円減となった。
一方、1人当たり保険給付費は23万6149円で同1万4587円減、拠出金は21万4339円で同5214円増、保健事業費は2万858円で同1252円減となった。