健保ニュース
健保ニュース 2021年10月中旬号
支払基金が手数料階層化を説明
簡素なチェックの単価を引き下げ
年内に具体化を協議 4年5月請求分から実施
健保連は9月28日、「『審査支払手数料階層化の概要と再審査請求の効率化』に関するwebセミナー」を開催した。セミナーでは、審査支払事務手数料の階層化について、社会保険診療報酬支払基金経営企画部より、健保連の審査支払対策委員会で審議を経た内容の説明があった。手数料は、医科および歯科のレセプトのうち「判断が明らかなレセプト」の単価を、「それ以外のレセプト」の単価と区分し、引き下げる。実施時期は令和4年5月請求分(3月診療分)からとされ、年内の協議で具体的な手数料を決定する。
令和3年4月に施行された改正支払基金法より、手数料は審査コストをレセプト枚数に応じた単価から、レセプト枚数や審査の内容等を勘案し設定することとなった。これによりレセプト1枚当たり一律だった単価は、審査内容等で階層化が可能となった。
手数料の階層化は、支払基金改革の一環として進められてきたもので、平成29年1月に厚生労働省のデータヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会がまとめた報告書では、「審査手数料の設定の在り方を抜本的に見直し」することや、「全体として軽減していくべき」ことを盛り込んだ。同年7月に厚労省と支払基金がまとめた「支払基金業務効率化・高度化計画」では、コンピュータチェックで完結できるレセプトは他のレセプトと別の手数料を設定する方針が示された。
支払基金において審査内容等によりレセプトを振り分ける機能を搭載した新システムが、今年9月から稼働しており、数か月の振り分け実績を踏まえて、4年5月請求分から手数料を階層化する。
階層化により手数料は医科および歯科のレセプトを、①判断が明らかなレセプト②それ以外のレセプト─の2階層に区分する。
①、②の単価は、厚労省や協会けんぽを加えた協議で年内に決定する。
①は、審査においては簡素なコンピュータチェックで完結するもので、医学的判断を要さない基本診療料等を組み合わせた入院分以外のレセプトとされた。具体的には、基本診療料(医学管理料を含む)とその加算のみを算定するレセプトもしくは、それに処方箋料のみを加えたレセプトが該当する。
レセプト全体に占める①の割合は、支払基金が2年8~11月に審査した電子レセプトにあてはめると、1月当たり医科が388.5万件、歯科が7.2万件の計395.7万件となり、受付件数に占める割合は約7.9%だった。健保組合の平均は8.2%と全体平均より若干高いものの、最低の5.4%から最高の14.9%まで10ポイントほどのバラツキがある。
支払基金では、健保組合に対し、予算編成の基礎数値として、審査支払新システムが稼働を始めた9月からの①の件数を、健保連を通じて提供することとしている。
支払基金は、①の判断が明らかなレセプトの2次点検に対し、医科・歯科レセプトだけを見る限り再審査は発生しないと思われるが、調剤レセプトとの突合点検ではわずかながら再審査が発生する可能性があるとの見解を示した。
1回目の振り分けで「目視対象」となるレセプトは、▽38万点以上の高額レセプト▽入院レセプト▽新規医療機関のレセプト─などが該当し、①および「目視対象」以外のレセプトは2回目の振り分けでAI(minhash、xgboost)により「職員・審査委員が確認するレセプト」と「コンピュータチェックで完結するレセプト」に振り分ける。新システムの稼働時は「コンピュータチェックで完結するレセプト」を70%(「職員・審査委員が確認するレセプト」20%)でスタートするものの、1年ごとに5%引き上げ、2年後に80%とし審査の効率化を進める。
①、②の件数および金額は、令和4年5月請求分から保険者に対し、それぞれを集計した内訳書が紙で追加送付される予定となっている。また、「判断が明らかなレセプト」、「コンピュータチェックで完結するレセプト」、「職員・審査委員が確認するレセプト」の区分が個々の電子レセプト(資格確認運用レコード)の予備項目に明記される。
このほか、セミナーの冒頭には、健保連の三宅政策部長より、支払基金改革における審査支払業務の効率化・集約化等により業務フローや業務の内容が変化するなかで、新たな体制における審査等のコスト構造を健保組合に見える化することや、支払基金が中長期の財政試算をするなかで効果を明確に示すよう強く要望していること、また保険者に手数料の形で賦課される処理コストそのものの縮減についても協議していることについて説明があった。