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健保ニュース 2021年10月上旬号

協会けんぽの5年収支見通し
最短6年度に単年度赤字化
均衡料率は5年後に10%以上へ

全国健康保険協会(安藤伸樹理事長)は9月16日、令和4年度から8年度まで5年間の収支見通しを運営委員会(委員長・田中滋埼玉県立大学理事長)に提示した。保険料率を10%のまま据え置き、賃金上昇率を過去10年平均値とした場合、単年度収支は最短で7年度、より厳しい前提では6年度に赤字に転落すると見込んだ。

試算では、5年度以降の賃金上昇率をA~Cの3パターンで推計した。各パターンの前提は、○A平均標準報酬月額(年度累計)増減率の5年(平成27~令和元年度)平均(0.8%)○B同10年(平成23~令和2年度)平均(0.4%)○C増減なし(0.0%)─で、○Aはコロナ禍を見込まない短期、○Bはリーマンショック後からコロナ禍までの賃金下落分を含んだより長期の平均となっている。

保険料率を据え置いた場合、パターンAでは8年度まで5年間黒字を維持できたものの、パターンBとCではどちらも7年度以降赤字となった。各パターンの8年度(試算最終年度)の収支差は、○A400億円○B▲900億円○C▲2300億円─。この試算(「ケースⅠ」)に加えて、3年度における被保険者数の伸び率を0%、賃金の伸びを年度後半に回復しないものとして3~4年度の被保険者数と賃金上昇率を厳しく見込んだ「ケースⅡ」も試算した。ケースⅡではパターンAも7年度に赤字化し、同Cの赤字化が6年度と1年早まる。8年度の収支差を賃金上昇率のパターンごとにみると、○A▲700億円○B▲2100億円○C▲3600億円とさらに厳しい予測となっている。

ケースⅠの均衡(実質)保険料率は、パターンAが▽4年度9.5%▽5年度9.8%▽6年度9.8%▽7年度9.9%▽8年度10.0%─となっており、5年間で均衡保険料率は現在の保険料率と同率に達した。8年度は黒字を確保したものの料率は上昇傾向にあり、9年度以降も単年度収支の黒字を維持することは難しいといえる。同様にパターンBが▽同9.5%▽同9.8%▽同9.9%▽同10.0%▽同10.1─、パターンCが▽同9.5%▽同9.8%▽同9.9%▽同10.1%▽同10.2%─となった。

準備金保有月数
13年度にマイナスも

協会けんぽは、3年度に準備金を5.1か月保有する。平均保険料率10.0%を維持した場合、今後10年間の保有状況は、黒字の数年間は保有月数が増加するものの、赤字化する前年度の6、8年度をピークに以降は低下していく。賃金上昇率別の13年度の保有月数は○A4.6○B2.8○C1.1で、賃金上昇率により大きな開きがみられるが、いずれも法定の1か月を確保できると見込んだ。ケースⅡになると、13年度の保有月数はパターンごとに○A3.2○B1.5○C▲0.3─へと大幅に低下。パターンCでは準備金が法定月数を割り込んで枯渇する見込となったほか、パターンBでも法定の月数に近づく。

一方、賃金上昇率をパターンB(0.4%)に固定した場合の保険料率別準備金保有状況をみると、13年度に準備金を1か月以上確保できたのは保険料率が9.9%以上だった場合。保険料率が9.7%以下の場合は、13年度までに準備金が0か月を下回り枯渇する見込となった。

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