健保ニュース
健保ニュース 2021年9月上旬号
中医協総会が入院医療の議論を開始
機能分化・連携の推進など論点
幸野理事 地域医療構想を後押し
中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)は8月25日、総会を開催し、令和4年度の次期診療報酬改定に向けて、「入院医療」の議論を開始した。急性期・回復期・慢性期入院医療における各課題を踏まえ、厚生労働省が医療機能の分化・連携を推進する提供体制の評価のあり方を論点として提起した。健保連の幸野庄司理事は、人口構造や疾病構造の変化を課題に位置づけ、次期改定では地域医療構想を後押しする施策が必要と強調。診療側は、診療報酬で強引に誘導する手法は避けるべきと主張したうえで、地域医療構想に寄り添う形で改定を行うという視点から制度設計する必要があるとした。
厚生労働省は8月25日の中医協総会に、令和4年度の次期診療報酬改定に向けた検討テーマとして、「入院医療」についての課題と論点を示した。
日本の人口は近年、減少局面を迎え、2065年には総人口が9000万人を割り込む一方、高齢化率は38%台の水準になると推計されている。
厚労省は、入院医療と医療費について、▽入院と入院外の医療費はともに増加傾向である▽入院外に比べ入院の医療費が微増している▽入院1日当たり医療費は増加傾向である▽1人当たり入院医療費の伸びは0~4歳、80歳以上の伸び幅が大きい─などと説明した。
「急性期入院医療」は、平成30年度改定で基本的な医療の評価と診療実績に応じた段階的な評価を組み合わせた新たな評価体系に再編・統合。患者の状態や医療内容に応じた医療資源の投入を評価する観点から、累次の改定で「重症度、医療・看護必要度」を見直してきた。
「回復期入院医療」のうち、「地域包括ケア病棟入院料」は、▽急性期治療を経過した患者の受け入れ▽在宅療養を行っている患者等の受け入れ▽在宅復帰支援─の3つの役割を担う。また、「回復期リハビリテーション病棟入院料」は、質の高いリハビリテーション医療を充実する観点から、アウトカム評価にもとづく評価を導入し、水準の引き上げを図ってきた。
「慢性期入院医療」は、療養病棟入院基本料の届出医療機関数・病床数は近年ヨコバイだが、経過措置を届け出ている病棟は、ともに減少。令和2年度改定では、「療養病棟入院基本料(経過措置1)」の減算評価について、「療養病棟入院料2」の「90/100」から「85/100」の点数へと切り下げた。
こういった現状を踏まえ、厚労省は、個々の患者の状態に応じて適切に医療資源が投入され、より効果的・効率的に質の高い入院医療が提供されるよう、医療機能の分化・連携を推進する提供体制の評価のあり方を論点として提起した。
健保連の幸野庄司理事は、人口構造や疾病構造の変化を新型コロナウイルス感染症対応と同様の大きな問題に位置づけ、「地域医療を守るためにも、地域医療構想は何としてでも成し遂げなければならない」と強調。
そのうえで、「次期改定では、地域医療構想を後押しするような強い施策が必要になる」との考えを示し、「急性期入院医療」への適切な対応を求めた。
これに対し、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「新型コロナウイルス感染症禍に、診療報酬改定で強引に誘導する手法は避けるべき」と主張。地域医療構想に寄り添うような形で診療報酬改定を行うという視点から制度を設計すべきとの考えを示した。
「回復期入院医療」については、幸野理事が「患者の視点からすると、看護配置よりも早期にリハビリテーションで回復する入院料を選ぶ」と言及し、6つの評価体系から成る「回復期リハビリテーション病棟入院料」の再編・統合を訴えた。
診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「回復期リハビリテーション病棟入院料に厳しい実績を求めると、地域から回リハ病棟がなくなってしまう弊害や、改善しやすい患者を集めるモラルハザードも生じる可能性もある」と述べ、慎重な議論が必要との認識を示した。
「慢性期入院医療」については、幸野理事が療養病棟入院基本料(経過措置1)を算定する医療機関の状況を分析したうえで、令和4年3月限りで経過措置を終了すべきと指摘した。
診療側の池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、「経過措置1を算定している病院は一定程度あり、地域事情もあるので、患者への影響を踏まえた判断が必要」とした。
このほか、幸野理事は、入院医療における他の取り組みとして、「その他重症な状態」などの患者を対象とする「救急医療管理加算2」のあり方について、「どういう状態の患者を医療的根拠で選定しているのか分析・検証し、再度議論が必要」と問題提起した。
診療側の城守委員は、「救急医療管理加算は2次救急医療を評価するほぼ唯一の診療報酬項目であり、医療機関への影響やコロナの影響を考えると、次期改定に向け議論していくことには反対する」と述べた。