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健保ニュース 2021年7月中旬号

令和2年社会医療診療行為別統計
件数、点数、実日数とも大幅減
コロナ禍の影響を色濃く反映

厚生労働省は6月30日、医療保険制度における診療・調剤行為の内容、傷病の状況などをまとめた令和2年社会医療診療行為別統計の結果を公表した。レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)に蓄積されている医科6816万8704件、歯科1412万4412件、保険薬局4491万9108件を集計した。

対象としたのは令和2年6月審査分のレセプトで、そのほとんどが5月診療分に当たる。同月は25日に解除されるまで、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言の対象期間だった。その影響を受け、レセプト件数は前年に比べ19.3%減と大きく減少した。レセプト種類別では、医科入院同16.2%減、医科入院外20.0%減、歯科同23.6%減、保険薬局同17.0%減と、歯科の減少幅が最も大きかった。また、診療実日数は同19.2%減、診療点数は同13.1%減といずれも大きく減少した。

厚生労働省の「最近の医療費の動向(メディアス)」令和2年度2月号によると、2年4月~3年2月の11か月の受診延日数は、2年5月(前年同月比18.5%減の1.7億日)が最も低い。今回の社会医療診療行為別統計は、受診が最も控えられた月を抽出したことで、コロナ禍による影響を色濃く反映した格好だ。(令和2年統計の結果概要は以下のとおり)

〔医科入院〕
医師等の働き方改革で入院料等が増加

医科入院は、1日当たり点数が前年に比べ2.3%減少し3446.6点となった。一方、レセプト1件当たり点数は同2848点増の5万7074点、1件当たり日数は同1.19日増の16.56日と増加している。

診療行為別にみると、前年に比べ1件当たり点数、1日当たり点数ともに増加したのは「入院料等」「リハビリテーション」「処置」「精神科専門療法」だった。

特に「入院料等」は、令和2年度診療報酬改定で、医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革を推進するため「地域医療体制確保加算」が新設され、医師事務作業補助者の配置や看護職員の夜間配置などにかかる加算が増点されるなどの措置が講じられているが、1件当たり点数が前年比14.6%、2807点増の2万2013点、1日当たり点数が同6.4%、80点増の1329点と大幅に増加した。

逆に1件当たり点数、1日当たり点数ともに前年に比べ減少したのは、「手術」「麻酔」「検査」の順。手術は一定程度、緊急性の低い場合に延期した影響が表れていると考えられ、ここからも新型コロナウイルスの影響が見てとれる。

そのほか、1件当たり点数、1日当たり点数ともに減少したのは「初・再診」「病理診断」だった。

1日当たり点数の診療行為別構成割合は「入院料等」が38.6%で最も多く、「診断群分類による包括評価等」29.6%、「手術」15.5%、「リハビリテーション」6.2%などと続く。

DPC/PDPSの患者に限った場合、1日当たり点数の構成割合は、「診断群分類による包括評価等」の59.1%が最も高く、次いで「手術」の25.0%となっており、全体でみたときに最も高い「入院料等」は5.2%だった。

1件当たり日数は、DPC/PDPSの患者が同0.51日増の10.68日、それ以外の患者が同1.00日増の20.95日となっている。

後期高齢者医療制度の対象者とそれ以外の一般医療に分けた結果は、▽1件当たり日数は一般13.84日、後期18.96日▽1件当たり点数は一般5万5242点、後期5万8695点─で、どちらも後期高齢者が高かった一方、1日当たり点数は一般3991点、後期3095点で、一般医療が後期高齢者医療を上回った。

診療行為別の構成割合をみると、後期医療は、一般医療と比べ「入院料等」「リハビリテーション」が高く、「手術」「診断群分類による包括評価等」が低い。

医療機関の種類別にみると、病院は、1件当たり日数が特定機能病院10.67日、療養病床を有する病院22.17日、精神科病院28.74日、それ以外の一般病院12.62日の平均16.95日だった。1件当たり点数は特定機能病院8万110点、療養病床を有する病院5万6407点、精神科病院3万9915点、一般病院6万1529点の平均5万8985点で、1日当たり点数は特定機能病院7505点、療養病床を有する病院2545点、精神科病院1389点、一般病院4874点の平均3480点となった。

診療所は、1件当たり日数9.24日、1件当たり点数2万1128点、1日当たり点数は、2286点だった。

〔医科入院外〕
在宅医療が拡大 注射・処置も増加

医科の入院外は、レセプト1件当たりの診療日数が、同0.03日減の1.48日、1件当たり点数が同4.9%増の1445点で、1日当たり点数は、同7.0%増の979点となった。

診療行為別にみると、1件当たり点数、1日当たり点数ともに伸びていたのは、「注射」「在宅医療」「処置」「投薬」だった。

1日当たり点数の診療行為別構成割合は「検査」が16.7%で最も高く、「投薬」15.0%、「注射」同13.2%などと続く。

一般医療と後期医療に分けると、▽1件当たり日数は一般1.40日、後期1.65日▽1件当たり点数は一般1323点、後期1718点▽1日当たり点数は一般946点、後期1043点─と、すべての項目で後期高齢者医療が一般医療を上回った。

年齢階級別の1日当たり点数は、「65~74歳」1133点が最も高く、次いで「40~64歳」1012点となっており、「0~14歳」611点が最も低くなっている。

医療機関の種類別にみると、病院は、1件当たり日数が特定機能病院1.30日、療養病床を有する病院1.58日、精神科病院1.64日、一般病院1.42日で平均1.46日だった。1件当たり点数は、特定機能病院4460点、療養病床を有する病院1876点、精神科病院1433点、一般病院2691点、平均2583点となり、1日当たり点数は特定機能病院3424点、療養病床を有する病院1188点、精神科病院872点、一般病院1895点で平均1771点となった。

診療所は、1件当たり日数が1.48日、1件当たり点数が1082点で、1日当たり点数は730点だった。1日当たり点数の構成割合を病院と比較すると、診療所は「初・再診」「医学管理等」が高い一方、「画像診断」「注射」は低い。

分業率は病院80%超 病診ともに増加

医薬分業の指標となる投薬の院外処方率は、処方料と処方箋料の算定回数ベースで病院が80.8%、診療所が76.3%となり、全体として77.3%に達した。病院は前年から1.3ポイント増加したが、診療所は0.6ポイント増にとどまった。

〔歯科診療〕
歯冠修復及び欠損補綴 1日当たり点数が増加

歯科は、レセプト1件当たりの診療日数が、同0.05日増の1.75日、1件当たり点数が同10.7%増の1328点で、1日当たり点数は、同7.3%増の758点となった。

診療行為別の1日当たり点数は、前年に比べ「歯冠修復及び欠損補綴」が大きく増加したほか、「医学管理等」「初・再診」「処置」などが増加した。

1日当たり点数の構成割合は、「歯冠修復及び欠損補綴」が34.8%で最も高く、次いで「処置」が19.9%、「初・再診」「医学管理等」が12.8%の順だった。

一般医療と後期医療に分けると、▽1件当たり日数は一般1.73日、後期1.83日▽1件当たり点数は一般1300点、後期医療1447点▽1日当たり点数は一般750点、後期790点─だった。1日当たり点数の診療行為別の構成割合は、後期医療は一般医療と比べ「在宅医療」「歯冠修復及び欠損補綴」が高く、「初・再診」「処置」が低くなっている。

1日当たり点数を年齢階級別にみると、「75歳以上」789点が最も高く、次いで「65~74歳」760点となっており、「0~14歳」719点が最も低くなっている。

〔薬局調剤〕
件数大幅減に対し1件単価は増加

調剤は、レセプト1件当たり処方せん受付回数が前年から0.02回減の1.18回、1件当たり点数が同105点(前年比9.7%)増の1180点、受付1回当たり点数が同107点(同12.0%)増の997点だった。前年に比べレセプト件数全体が大幅に減少した一方、1件当たり点数、受付1回当たり点数は、約10%増といずれも高い伸びを示しており、新型コロナウイルスの感染防止のために長期投与を行った影響がうかがえる。

受付1回当たり点数は調剤行為別にみると、前年に比べ「調剤技術料」「薬学管理料」「薬剤料」「特定保険医療材料料」のすべての調剤行為で増加した。

受付1回当たり点数の構成割合は、「薬剤料」75.3%が最も高く、次いで「調剤技術料」19.7%となっている。

一般医療と後期医療に分けると、1件当たり受付回数が一般1.15回に対して後期1.24回、1件当たり点数が一般1070点に対して後期1406点、受付1回当たり点数が一般927点に対して後期1132点となっている。年齢階級が高くなるに従い1件当たり点数、受付1回当たり点数ともに高くなり、14歳以下と75歳以上では約2倍の開きがある。

〔薬剤の使用状況〕
低点数ほど割合上昇 処方3種類以下が6割

医科入院外と調剤で薬剤を使用したレセプトについて、1件当たり薬剤点数を階級別に集計したところ、「500点未満」が院内処方で68.1%、院外処方で59.3%と多数を占めた。なかでも「100点未満」は院内処方の26.9%、院外処方の21.6%を占め、点数の低い階級ほど構成割合が高かった。

500点以上では「500~1000点」が院内16.8%、院外18.5%、「1000~1500点」が院内6.7%、院外8.9%、「1500~2000点」が院内3.3%、院外4.8%、「2000点以上」が院内5.1%、院外8.5%だった。

一般医療と後期医療に分けると、点数の高い階級で後期が一般を上回っており、院内では「300~400点」以上、院外では「400~500点」以上で後期が高い。また、世代別に薬剤点数をみても、高い年齢ほど、高い点数の薬剤の占める割合が高かった。

レセプト1件当たりの薬剤種類数は、平均すると院内処方が3.34種類、院外処方が3.70種類だった。薬剤種類数別に構成割合をみると「1種類」が院内25.8%、院外21.9%、「2種類」が院内22.8%、院外21.4%、「3種類」が院内、院外ともに16.6%で、3種類以下で約6割を占める。

一般医療に比べて後期医療は薬剤の種類が多く、平均すると後期は院内、院外とも4種類を超え、75歳以上では7種類以上が院内で18.8%、院外で24.2%となっている。

入院を含めた薬剤点数の構成割合を主な薬効分類別にみると、入院は「腫瘍用薬」22.8%、「中枢神経系用薬」15.6%、「生物学的製剤」11.3%などが上位を占めた。入院外の院内処方は「腫瘍用薬」21.5%、「その他の代謝性医薬品」15.6%、「循環器官用薬」9.9%で、院内処方では入院、入院外ともに腫瘍用薬が最も多かった。院外処方では「その他の代謝性医薬品」15.7%、「循環器官用薬」14.8%、「中枢神経系用薬」14.4%の順で多かった。

後発品使用割合は種類別で76%

後発医薬品の割合は、薬剤点数に占める後発品点数が前年比1.2ポイント減の18.0%、薬剤種類数に占める後発品種類数が同2.5ポイント増の75.6%だった。

入院では点数割合が同0.2ポイント増の14.6%、種類数割合が同3.2ポイント増の72.5%、院内処方は点数割合が同0.9ポイント減の16.0%、種類数割合が同2.4ポイント増の65.5%。院外処方は点数割合が同1.3ポイント減の18.4%、種類数割合が同2.4ポイント増の78.2%となっており、院外の使用割合が最も高い。

薬剤料の比率は前年比入院1ポイント減、入院外3ポイント増

包括評価を除いた医科の薬剤料の比率は、入院は前年比0.6ポイント減の9.1%、入院外は同3.0ポイント増の43.5%だった。入院の内訳は投薬2.6%、注射5.8%で、入院外の内訳は投薬31.7%、注射10.1%となっている。

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