健保ニュース
健保ニュース 2021年6月下旬号
「骨太方針2021」を閣議決定
社会保障費 高齢化相当分に伸び抑制
政府は18日の臨時閣議で、「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太方針2021)」と「成長戦略実行計画」を決定した。「骨太方針2021」は、令和4年度から3年間、社会保障関係費の伸びを高齢化による増加相当分におさめる、歳出目安に沿った予算編成方針を継続する。社会保障改革は、OTC類似薬など既収載医薬品の保険給付範囲の見直しをはじめ、後発医薬品のさらなる使用促進に向けたフォーミュラリの活用や一定期間内に反復利用できる処方箋の検討、医療提供体制改革に資する診療報酬の見直しなどの方向性を明示した。菅義偉首相は、18日に合同開催された経済財政諮問会議・成長戦略会議で、「経済あっての財政の考え方で、財政健全化の目標を堅持し、これまでの歳出改革努力を続けていく」と強調。今後の予算編成や制度改正で政策を具体化し、スピーディーに実現していく意欲を示した。政府方針の決定を受け、今後、年末の4年度予算編成過程や関係審議会等で社会保障改革に向けた検討が進められる。
「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太方針2021)」で示す政策は、年内の予算編成過程や制度改正の早期実行に向けて政府全体で取り組むとともに、中長期的な施策も年度内に方向性の結論を得ることとしている。
社会保障の持続可能性を確保し、団塊世代が75歳以上になるまでに財政健全化の道筋を確かなものとするため、2025年度のプライマリーバランス黒字化をめざす財政健全化目標を堅持する。目標年度については、感染症の経済財政への影響の検証結果を踏まえ、今年度内に再確認するとした。
令和4年度の予算編成に向けては、全世代型社会保障改革を進めるとともに、経済・財政一体改革を着実に推進し、6年度までの3年間、これまでと同様の歳出改革努力を継続する。社会保障関係費の伸びは高齢化による増加相当分におさめる方針を明示。年末までに改革工程の具体化を図るとともに、毎年、改革の進捗管理・点検・評価を行うとした。
社会保障改革は、①感染症を機に進める新たな仕組みの構築②団塊の世代の後期高齢者入りを見据えた基盤強化・全世代型社会保障改革─に向けた施策を打ち出した。
①は、質が高く効率的で持続可能な医療提供体制の整備を進めるため、かかりつけ医機能の強化・普及による医療機関の機能分化・連携の推進や、さらなる包括払いのあり方の検討も含む提供体制改革に資する診療報酬の見直しなどに取り組む。
オンライン診療は、幅広く適正に活用するため、初診からの実施は原則かかりつけ医としつつ、事前に患者の状態が把握できる場合にも認める方向で具体案を検討するとした。
新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる医療機関への支援については、「診療報酬や補助金・交付金による今後の対応のあり方を検討し、引き続き実施する」と明記した。
他方、革新的医薬品のイノベーションの評価と、長期収載医薬品の適正化の観点から、透明性・予見性の確保にも留意しつつ薬価算定基準を見直すと提起。合わせて、「OTC類似医薬品など既収載医薬品の保険給付範囲について引き続き見直しを図る」との方針を示した。
5年度末までに全都道府県で数量シェアを80%以上とする新目標を掲げた後発医薬品のさらなる使用促進を図るため、医療機関等で医学的妥当性や経済性を踏まえ作成された医薬品の使用方針(複数の治療薬がある慢性疾患で後発品を第一優先とする等)を意味する「フォーミュラリ」の活用を施策として盛り込んだ。
長期処方への対応として、症状が安定している患者の通院負担を軽減する観点から、医師と薬剤師の適切な連携により、医療機関に行かずとも一定期間内に処方箋を反復利用できる方策を検討する。
②は、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築する観点から、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、保険料賦課限度額の引き上げなど能力に応じた負担のあり方も含め、医療、介護、年金、少子化対策をはじめとする社会保障全般の総合的な検討を進める。
効率的な医療提供体制の構築や1人当たり医療費の地域差半減に向けて、地域医療構想のPDCAサイクル強化や医療費適正化計画のあり方を見直す。
医療費適正化計画は、▽保険者協議会を必置化し都道府県計画への関与を強化▽審査支払機関の業務運営の基本理念に医療費適正化を明記─などの見直しについて、6年度から始まる第4期期間に対応する計画の策定に間に合うよう、「必要な法制上の措置を講じる」とした。
成長戦略実行計画
セルフメディケーションを推進
「成長戦略実行計画」は、「骨太方針2021」の大きな方向性に沿って、施策項目を取りまとめた。成長戦略の推進にあたって適切なKPIを設定し、不断に政策の効果検証を行ったうえで、政策の追加・修正を含め必要なフォローアップも行っていくとした。
主な施策項目では、昨年末に閣議決定した「全世代型社会保障改革の方針」を着実に実施すると明記した。医療分野は医薬品産業の成長戦略を重点分野に掲げ、オンライン診療は安全性と信頼性をベースに、かかりつけ医の場合は初診から原則解禁する方針を盛り込んだ。
また、薬局で市販されるOTC診断薬等は、個別品目ごとにOTC化を検討するなど、セルフケア・メディケーションを推進するとした。
後発医薬品メーカーが品質確保・安定供給・データの信頼性確保に責任を持つ体制を構築するため、製造販売業者による適切な製造・品質管理体制の確保を図る。
他方、バイオシミラーの開発利用を促進するため、今後の政府目標について速やかに結論を得るとともに、具体的な方策を検討するとした。
一時売差マイナスや総価取引などの商慣行が存在する医療用医薬品の流通構造の改善に向けて、「流通改善ガイドライン」の見直しを含めた対応策の検討も行う。
予防・健康づくりの健康増進効果に関する実証事業の結果を踏まえ、特定健診・保健指導の見直しなど、保険者等の予防・健康事業における活用につなげる方針を示した。