健保ニュース
健保ニュース 2021年6月中旬号
政府が「骨太方針2021」の原案
社会保障費の伸び 歳出目安に沿った予算編成
保険給付範囲見直しなど明記
政府は9日の経済財政諮問会議(議長・菅義偉首相)に、「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太方針2021)」の原案を示した。与党との調整を経て、近く閣議決定する。
令和4年度から6年度までの3年間は、社会保障関係費の伸びを高齢化による増加相当分におさめる「歳出目安」に沿った予算編成を継続する方針を示した。
社会保障改革は、感染症を機に進める新たな仕組みを構築するため、かかりつけ医機能の強化・普及や、医療提供体制改革につながる診療報酬の見直しなどを盛り込んだ。
さらに、OTC類似薬の保険給付範囲の見直しをはじめ、後発医薬品の使用促進に向けたフォーミュラリの活用や、一定期間内に反復利用できる処方箋の検討など、今後の改革の方向性を明示した。
「骨太方針2021」の原案は、社会保障の持続可能性を確保し、すべての団塊世代が75歳以上になるまでに財政健全化の道筋を確かなものとするため、「経済あっての財政」の考えのもと、2025年度の国・地方を合わせたプライマリーバランス黒字化をめざす目標を堅持すると提起した。
合わせて、令和4年度から6年度までの3年間、社会保障関係費の実質的な伸びを高齢化による増加相当分に抑制する「歳出目安」に沿った予算編成を継続する方針を明示。
経済・財政一体改革を引き続き推進し、年末までに改革工程の具体化を図るとともに改革の進捗管理・点検・評価を毎年行うとした。
社会保障改革は、①感染症を機に進める新たな仕組みの構築②団塊世代の後期高齢者入りを見据えた基盤強化・全世代型社会保障改革─を大きな柱立てとし、①は、▽医療提供体制▽医薬品▽データ利活用─に関係する施策を盛り込んだ。
「医療提供体制関係」は、地域医療構想を推進するとともに、かかりつけ医機能の強化・普及による医療機関の機能分化・連携の推進、さらなる包括払いのあり方の検討も含めた提供体制改革につながる診療報酬の見直しなどにより、質が高く効率的で持続可能な体制整備を進める。
新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる医療機関への経営上の支援については、「診療報酬や補助金・交付金による今後の対応のあり方を検討し、引き続き実施する」との書きぶりとなった。
オンライン診療は、幅広く適正に活用するため、初診からの実施は原則かかりつけ医としつつ、事前に患者の状態が把握できる場合にも認める方向で具体案を検討するとした。
「医薬品関係」は、革新的な医薬品におけるイノベーションの評価の観点と、長期収載品の評価の適正化を行う観点から薬価算定基準を見直すとともに、「OTC類似薬等の既収載品の保険給付範囲について引き続き見直しを図る」と明記した。
後発品の数量シェアを「5年度末までに全都道府県で80%以上」とする新目標との関係を踏まえ、医療機関等で医学的妥当性や経済性を踏まえ作成された医薬品の使用方針(複数の治療薬がある慢性疾患で後発品を第一優先とする等)である「フォーミュラリ」を活用し、さらなる使用促進を図ると強調。
また、患者の通院負担を軽減するため、医師と薬剤師の適切な連携により、症状が安定している患者が医療機関に行かなくとも一定期間内に処方箋を反復利用できる方策の検討を求めた。
「データ利活用関係」は、包括的な民間委託の活用や新たな血液検査など新技術の積極的な効果検証が推進されるよう、保険者が策定するデータヘルス計画の手引きの改定を検討するほか、同計画の標準化にあたり、アウトカムベースでの適切なKPIの設定を推進するとした。
一方、②は、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、保険料賦課限度額の引き上げなど能力に応じた負担のあり方も含め、引き続き、医療、介護、年金、少子化対策をはじめとする社会保障全般の総合的な検討を進める方針を示した。
医療は、効率的な提供体制の構築や1人当たり医療費の地域差半減に向けて、地域医療構想のPDCAサイクル強化や医療費適正化計画のあり方の見直しを提起。
医療費適正化計画は、▽保険者協議会を必置化し都道府県計画への関与を強化▽審査支払機関の業務運営の基本理念に医療費適正化を明記─などの見直しについて、6年度から始まる第4期期間に対応する計画の策定に間に合うよう、「必要な法制上の措置を講じる」とした。
このほか、「骨太方針2021」の原案は、デジタル化を加速し、令和4年度末にほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡ることをめざす方針のもと、国民の利便性を高める観点から、健康保険証との一体化などの取り組みを推進すると明記した。
また、少子化の克服、子供を産みやすい社会を実現するため、不妊治療の保険適用や出産費用の実態を踏まえた出産育児一時金の増額に向けた検討に取り組むとした。