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健保ニュース 2021年6月中旬号

医療保険改革関連法が成立
後期高齢者 4年度後半に2割自己負担

「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」(医療保険制度改革関連法)が4日の参院本会議で自民・公明両与党、日本維新の会、国民民主党など賛成多数で政府原案どおり可決、成立した。立憲民主、共産両党は反対した。

改正の柱は、①後期高齢者の窓口2割負担の導入②傷病手当金の支給期間の通算化(令和4年1月1日施行)③任意継続被保険者制度の見直し(同)④育児休業中の社会保険料免除要件の見直し(4年10月1日施行)⑤効果的な予防・健康づくりに向けた保健事業における健診情報等の活用促進(4年1月1日施行)─など。

①後期高齢者の2割負担は、現役世代の支援金負担増の抑制を狙いに、所得上位30%に該当する課税所得28万円以上かつ年収200万円以上(複数世帯320万円以上)の後期高齢者(約370万人)を対象に現行の1割負担に代えて導入する。

2割負担導入の時期は、4年10月1日から5年3月1日までの間、後期高齢者医療広域連合のシステム改修や周知・広報のための期間を考慮し、政令で施行日を決定する。

施行後3年間は、外来受診にかかる急激な自己負担増を緩和するため、政令で高額療養費制度の仕組みを活用して1か月の増額を最大3000円にとどめる配慮措置を講じる。2割負担対象者の約8割に相当する280万人程度が配慮措置に該当すると見込まれている。

2割負担化による財政影響(配慮措置含む)は、後期高齢者の給付費が4年度満年度ベースで1880億円、後期支援金が720億円、公費負担が980億円それぞれ減少すると試算されている。このうち、健保組合の支援金は240億円の減少を見込むが、傷病手当金の支給期間の通算化により30億円の支出増となり、トータルで210億円減となる。実際の財政効果は、2割負担導入の施行日が最も早くて10月1日であるため、最大でも5か月分にとどまる。

今回の改正は現役世代の負担増抑制を趣旨とするが、2割負担導入に伴う現役世代1人当たりの支援金の軽減効果は、本人分で月額に換算して30円程度と試算される。法案審議の段階で負担軽減効果が限定的であるとの指摘もあったが、田村憲久厚生労働相は、高齢者への負担増を踏まえると720億円が最大限の対応との認識を示し、今後、改正法に規定する附則を踏まえ、現役世代のさらなる負担軽減も含めた改革を総合的に検討する意向を示した。

②傷病手当金の支給期間の通算化は、治療と仕事の両立を支援する観点から、健康保険の支給日数のカウントを共済組合の仕組みと合わせて、実際に支給された日を通算して最大1年6か月とする。健康保険の傷病手当金は現在、支給開始日から起算して復職中の不支給となる日も含めて1年6か月となっている。通算化の適用を受けて新たに支給される対象者数は、4万人と見込まれている。

③任意継続被保険者制度の見直しは、健保組合の規約により退職前の標準報酬月額にもとづく保険料算定を認めるほか、現行の最大2年の被保険者期間のなかで、被保険者からの申請による資格喪失を認める。

現在、任継被保険者の保険料の算定方法は、退職前の標準報酬月額か、当該保険者の全被保険者の平均標準報酬月額のうちのいずれか低い額を適用するが、見直し後は、保険料収入増が図られる高いほうの標準報酬月額を選択できるようにする。

④育児休業中の社会保険料免除要件の見直しは、現行の月末日が育休期間中である場合に加えて、それ以外に月内通算して2週間以上の育休を取得した場合も当月分の健康保険料などの支払いを免除する。一方、賞与保険料への対応は、1か月超の育休取得者に限り免除することとし、要件を厳格化する。

⑤効果的な予防・健康づくりに向けた保健事業における健診情報等の活用促進は、40歳未満の労働安全衛生法にもとづく健診情報を保険者が保健事業に活用できるよう、事業者に対し健診情報を求められるようにする。また、健保組合などが保有する特定健診等情報を後期高齢者医療広域連合へ引き継げるようにする。

医療保険制度改革関連法案は、4月8日の衆院本会議で審議入りし、6月4日の参院での成立まで、約2か月を要する長丁場の議論となった。審議時間は衆院約27時間、参院約20時間を費やした。両院本会議の代表質疑、厚労委の参考人質疑を加えると合計50時間を大きく超える。衆院厚労委の与党筆頭理事の急きょ辞任・交代、参院厚労委の先議案件の改正医療法等の採決の遅れなど、想定外の事由が生じたことも長時間審議に影響した。

後期高齢者への2割負担導入を争点とする与野党の対立法案とされたが、維新、国民民主両党が早くから改正を支持したことから、全面的な対決は避けられた。衆院厚労委は審議打ち切り、採決となったため、附帯決議は見送られたが、参院審議に移ってからは、2割負担の問題を含む改正の論点の深掘りなど詰めた議論が行われた印象もある。

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