健保ニュース
健保ニュース 2021年6月上旬号
自民・財政再建推進本部が提言
社会保障の歳出抑制を継続
受益、負担の不均衡是正
自民党の財政再建推進本部(本部長・下村博文政調会長)は5月25日、政府が6月に策定予定の「骨太方針2021」に向けた提言を取りまとめた。プライマリーバランス黒字化の財政再建目標を堅持する方針の下、社会保障など主要歳出分野の改革を求め、社会保障については、令和4年度から少なくとも3年間、これまでの「基盤強化期間」(元年度~3年度)における目安に沿った歳出改革努力を継続すべきと提言した。
提言は、新型コロナウイルス対応の機動的な財政措置を認めつつも、中期的な財政再建の必要性を強調した。特に4年度以降、団塊の世代が後期高齢者入りすることで社会保障費が急増し、高齢化と現役世代の減少という日本の構造的な課題が最も深刻化すると危機感を示したうえで、「社会保障における受益と負担のアンバランスの是正は、真に待ったなしの課題である」と訴えた。
社会保険料の増加は、現役世代の可処分所得を減少させると消費減退の面から問題視し、「社会保障制度の持続可能性を高め、現役世代が希望を持てるようにしていくことは、わが国経済とっても重要な課題である」との認識を示した。
社会保障分野の歳出改革の方向性については、現行の「改革工程表」に掲げられている事項が月日が経つと曖昧化・矮小化されるケースもあると捉え、早期、着実な実施を求めた。
具体的な医療提供体制の整備では、高齢化と人口減少の進展に伴う医療ニーズの質的・量的変化を踏まえた地域医療構想を引き続き推進すべきと主張。コロナ収束も見据えつつ、病院の再編・統合を含めて病床・病院の役割分担を徹底し、専門医、医療機器などの医療資源や症例数を集約することで、質が高く、新興感染症にも対応可能な提供体制の構築に期待した。
こうした観点から、政府に対して▽地域医療構想調整会議の協議促進のための環境整備▽都道府県における提供体制整備の達成状況の公表、未達成の場合の責任の明確化による地域医療構想のPDCAサイクルの強化▽診療所を含む外来機能の明確化・分化の推進と、かかりつけ医の普及方策の検討─を求めた。
また、地域における医療費を巡るPDCAサイクル強化を重視し、「実効ある医療費適正化の仕組みを制度化」する。具体的に都道府県が策定する医療費適正化計画のPDCAサイクルを機能させることが急務として、計画上の「医療費の見込み」のあり方などの見直しの方向性を提起した。実効を上げるために都道府県の責務を明確化し、国・県・保険者などが各地域で状況を分析、連携して適正化に取り組むよう保険者協議会の関与強化や、データ分析を行う審査支払機関の機能充実を求めるとともに、6年度から始まる第4期医療費適正化計画期間に対応する都道府県計画への反映を視野に入れて、法制上の措置を講じる必要性を指摘した。