健保ニュース
健保ニュース 2021年6月上旬号
参院厚労委が健保法等改正案の参考人質疑
佐野副会長 2割早期実施と「次の改革」要望
参院厚生労働委員会(小川克己委員長、自民)は5月31日、健保連の佐野雅宏副会長ら4氏の参考人を招き、健保法等改正案の意見を聴取し質疑した。
佐野副会長は、衆院厚労委の参考人質疑の際に使用した資料にもとづき意見を陳述。一定以上の所得を有する後期高齢者への2割負担導入を盛り込んだ今回の改正案について、「高齢者と現役世代の負担と給付のアンバランスの是正、現役世代の負担軽減という観点から評価できる」と指摘。2割負担の導入は、現在のコロナ禍や来年以降、団塊の世代が後期高齢者に移行し始めて拠出金負担が急増する「2022年危機」に向けて「時間との闘いだ」とし、予定実施期間のうち最も早い令和4年10月施行を求めて「可能な限り早期に実施してほしい」と訴えた。
また、各党委員からの質問では、公明党の塩田博昭氏が今回の改正案にとどまらず、次なる改革に向けて給付と負担の見直しを含めた検討に着手する必要性に言及したうえで、その際に優先する検討課題を質した。
佐野副会長は、3割負担が適用される後期高齢者の現役並み所得の基準見直しと、公費投入が最優先課題であると強調。基準見直しによる対象者の拡大は必要としたが、現役並み所得の医療給付費に公費が投入されておらず、公費相当分を現役世代の支援金で賄っている現状の財源構成を問題視し、こうした仕組みを見直して現役世代の負担軽減のために公費を投入すべきと強く訴えた。国民民主党の足立信也氏は、現役並み所得の後期高齢者の給付費に公費が投入されていない現状を是正すべきと指摘した。
また、佐野副会長は、現役世代のさらなる負担軽減に向けて、少なくとも一般の所得区分に該当するすべての後期高齢者に2割負担を導入するなど「次なる改革」に期待するとともに、健保組合に対する当面の間の財政支援が不可欠であるとの考えを示した。
このほか、遠藤久夫参考人(学習院大学経済学部長)は、日本の医療保険制度は極めて有効に機能しているとする一方、少子高齢化が進むなかで給付と負担の見直しは避けられないと発言し、後期高齢者の保険料賦課限度額の引き上げなど応能負担の強化を検討に値する課題と位置づけた。佐保昌一参考人(連合総合政策推進局長)は、応能負担に着目した今回改正案を支持したうえで、施行後の受診抑制などの検証を求めた。
吉岡尚志参考人(日本高齢期運動連絡会代表委員)は、年収200万円以上(単身)の後期高齢者への2割負担導入について、生活に深刻な影響を与えて受診抑制も起こると政府案に反対した。