健保ニュース
健保ニュース 2021年5月合併号
諮問会議が骨太方針へ社保改革を議論
民間議員 現役世代の負担軽減へ提言
医薬品の保険給付範囲見直し
政府の経済財政諮問会議(議長・菅義偉首相)は4月26日、6月に策定予定の「骨太方針2021」に向けて、社会保障改革をテーマに議論した。
民間議員は、団塊世代が75歳に入り始める2022年を見据え、「既収載医薬品の保険給付範囲の見直し」や「リフィル処方箋の解禁」など、現役世代の負担を軽減するための社会保障改革に取り組むよう提言した。
菅首相は、「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心という構造を見直し、すべての人が安心できる社会保障改革を進めていく」と言及。現役世代の負担軽減、医療費の適正化に向けて、これまでの改革をフォローアップし、議論していく意向を示した。
麻生太郎財務相は、「既収載医薬品の保険給付範囲を見直すとともに、後期高齢者医療制度のさらなる改革を通じた現役世代の負担軽減、かかりつけ医の制度化推進などの取り組みをしっかり進めていくことが重要」と述べたうえで、「骨太方針2021」への反映を求めた。
この日の会合では、民間議員が、「骨太方針2021」に向けた「社会保障改革~新型感染症を踏まえた当面の重点課題~」と題する意見を提出した。
新型感染症で明らかとなった課題を踏まえ、社会保障改革にメリハリをつけて取り組む必要があると指摘。そのうえで、2022年から団塊世代が75歳に入り始めることを見据え、現役世代の負担軽減につながる改革に着実に取り組むよう求めた。
これまで高齢者への支援が中心となってきた社会保障制度において、現役世代の支援強化に軸足を置いて改革を推進する観点から、現役世代の負担軽減に向けた当面の重点課題を掲げた。
後期高齢者の自己負担割合引き上げを円滑に実施するとともに、令和4年度の次期診療報酬改定のメリハリ付けを含め、医療・介護制度の不断の改革に取り組むべきと強調。合わせて、新型感染症を踏まえた診療報酬上の特例措置の効果を検証し、施策に反映するよう求めた。
これに続き、創薬力強化の観点から革新的な医薬品の評価のあり方を再検証する一方、そうでない医薬品にかかる評価の適正化や、「既収載医薬品の保険給付範囲の見直し」を実施すべきと提言。
遅れがみられる後発医薬品の目標を早期に設定するとともに、医薬品の推奨リストである「フォーミュラリ」の導入など、後発品の使用促進のための強力な追加措置を講じるべきとした。
さらに、症状が安定している患者について一定期間内に反復使用できる「リフィル処方箋」を解禁し、患者の通院負担を軽減するとともに新型感染症の下でも安心して服用が継続可能となるよう訴えた。
他方、医療提供体制の改革に向けては、医療機関の機能分化や統合を促すため、診療報酬のインセンティブ強化や「かかりつけ医」機能の制度化を進めるべきと提言。
「かかりつけ医」は感染症への対応、予防・健康づくり、オンライン診療、受診行動の適正化、介護施設との連携や在宅医療など、地域の医療を多面的に支える役割を果たすべきと強調した。
オンライン診療については、徹底活用し、新型感染症下での国民の不安解消、予防・健康づくり、医療へのアクセスを確保すべきと主張。レセプトなどデータの迅速な活用も急務とした。
医師・看護師が広く薄く分散する体制を見直すため、地域医療構想の着実な推進のほか、「1入院当たりの包括払い」を原則とする診療報酬への転換等により、病床数や在院日数を適正化することも要望。
一方、医療提供体制の逼迫時においては、過去の災害時の概算払いの例を参考とした、新型感染症患者を受け入れる病院の診療報酬による減収分の補てんも必要とした。