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健保ニュース 2021年4月中旬号

財務省が社会保障改革の方向性を提言
かかりつけ医機能を制度化
次期改定 提供体制改革が必須

財務省は15日、社会保障における今後の課題と改革の方向性を財政制度等審議会(榊原定征会長)の財政制度分科会に示した。

医療分野では、効率的で質の高い医療提供体制の整備に向け、穏やかなゲートキーパー機能を備えた「かかりつけ医」の推進は不可欠であるとし、診療所における「かかりつけ医」機能を制度化するよう提言。

合わせて、医療提供体制改革への診療報酬改定の寄与は不十分と指摘し、令和4年度の次期改定では、「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なしと考えるべき」と強調した。

この日の財政制度分科会は、社会保障をテーマに議論し、財務省から社会保障総論をはじめ、医療や介護、年金などの各分野における今後の課題と改革の方向性が明示された。

社会保障総論では、社会保障関係費の規律について、現行の公費(国費)の規律の継続・強化にとどまらず、保険料負担分も含めた中長期の給付費水準の規律も必要と訴えた。

医療分野では、▽効率的で質の高い医療提供体制の整備▽新型コロナウイルス感染症への対応▽全世代型社会保障改革の残された課題▽薬剤費の適正化─について提言した。

このうち、「効率的で質の高い医療提供体制の整備」では、穏やかなゲートキーパー機能を備えた「かかりつけ医」の推進が不可欠と強調。

日本医師会等で「かかりつけ医」の定義が明らかにされていることを踏まえ、診療所の「かかりつけ医」機能を法制上明確化(制度化)するとともに、機能分化を進めるためのメリハリをつけた方策を推進すべきとの考えを示した。

「かかりつけ医」機能に着目した診療報酬の例として、「地域包括診療加算(18~25点)」、「機能強化加算(80点)」を示し、「地域包括診療加算」は再診に占める割合が平成26年度の1.4%から令和元年度の1.5%と伸び悩んでいることを課題とした。

「機能強化加算」は、健保連が元年8月23日に公表した「政策立案に資するレセプト分析に関する調査研究Ⅳ」から、▽同加算届出の医療機関を複数受診した患者のうち約6割は重複して加算を算定▽同加算の算定患者の6割は受診回数が1回(分析期間6か月の間)▽受診回数1回の患者の傷病名トップは急性気管支炎▽地域包括診療加算に比べ若年層に対する加算が多い─と課題を列記した。

合わせて、旧7対1入院基本料に相当する「急性期一般入院料1」の算定病床の適正化が進んでいないなど、「診療報酬改定の医療提供体制改革への寄与は十分なものとはいえない」と問題提起。

現状の医療資源が散在する「低密度医療」の改革につながらなければ、財政資源として散財となりかねないことから、そのあり方の真摯な見直しが必要と主張した。

特に消費税増収分を活用して診療報酬に充てる場合、診療報酬増が保険料・患者負担の増加をもたらすことを踏まえれば、「改革を通じてその効果が国民に還元されるものでなければならない」とし、4年度の診療報酬改定では、「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なしと考えるべき」と強調した。

「新型コロナウイルス感染症への対応」では、新型コロナ流行の収束までの臨時措置として、新型コロナ患者受入病院に対し、緊急包括支援交付金等に変えて、前年同月ないし新型コロナ感染拡大前の前々年同月水準の診療報酬を支払う簡便な手法を検討すべきと主張。

都道府県知事の同意を得て、一定程度、新型コロナの入院患者を受け入れる医療機関で医療従事者の処遇を維持・改善することを条件に、前年同月ないし前々年同月水準のいずれか多い方の診療報酬総額を基準に同水準が維持されるよう診療報酬を支払うことを提案した。

他方、新型コロナに対応しない医療機関に講じてきた多額の支援については、新型コロナへの対応に限られた財政資源を集中的に投入する観点から、その目的および効果に遡った見直しが必要とした。

保険料負担の公平性を確保
薬剤費適正化へ リフィル制度導入を提言

一方、「全世代型社会保障改革の残された課題」では、すべての世代に安心感と納得感の得られる全世代型の社会保障に転換していくためには、保険料負担の公平を徹底する必要があると指摘し、国保における都道府県内の保険料水準統一もその取り組みの1つであるとした。

さらなる徹底に向けては、所得水準の高い国保組合に対する定率補助(13%)の廃止を含め、「保険者間の合理的でない保険料負担の差は解消に努めていくべき」と主張。また、保有資産額が大きい被保険者に応分の負担となるよう、資産の保有状況等も勘案した保険料負担のあり方も検討すべきとした。

「薬剤費の適正化」では、新規医薬品の薬価算定方式に対し、開示度に応じた医薬品の算定薬価の厳格化といった行政改革推進会議の指摘の実現に加え、▽新規性に乏しい新薬に採用する類似薬効比較方式Ⅱの厳格化▽原価計算方式における営業利益水準の適正化─などを行うべきと訴えた。

既存医薬品については、▽オンライン診療・電話診療でOTC類似薬が処方されるケースが多い▽OTC薬で対象可能な症状に対する保険診療について、OTC置き換えによる医療費適正化効果が高い─ことなどを踏まえ、セルフメディケーションを進める観点からも、保険給付範囲からの除外や縮小などの適正化を検討すべきとした。

さらに、長期処方への対応として、患者の通院負担の軽減や利便性向上の観点から、病状が安定している患者に一定期間内の処方箋を繰り返し利用することができる「リフィル制度」の導入を図るべきと提言。

健保連・政策立案に資するレセプト分析に関する調査研究Ⅳの「繰り返し利用可能な処方箋(リフィル処方)の導入に向けた検討」の分析結果も示された。

多剤・長期処方の適正化を図るべく累次の診療報酬改定が行われてきた向精神薬については、海外では投与期間が制限されている依存性の強い薬剤(ベンゾジアゼピン)を含め、取り組みを強化すべきとした。

介護保険の利用者負担
薬剤費適正化へ 原則2割や対象拡大を

介護分野では、1人当たり給付費が高い75歳以上高齢者は令和12年頃まで増加する見込みのなか、介護保険制度の持続可能性を確保するため、利用者負担をはじめとした保険給付範囲の見直しに取り組む必要があると指摘した。

介護費用がさらに増加する見込みのなかで、保険料負担の伸びの抑制を図る観点から、今般の後期高齢者医療における患者負担割合の見直しを踏まえ、介護保険サービスの利用者負担を原則2割とすることや、利用者負担2割に向けてその対象範囲の拡大を図ることを検討していく必要があると提言した。

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