健保ニュース
健保ニュース 2021年4月中旬号
令和3年度の総合組合予算集計
財政状況悪化 経常収支1980億円の赤字
約9割の組合が赤字予算
全国総合健康保険組合協議会(会長・高井昌史出版健保組合理事長)はこのほど、全国の総合組合の令和3年度予算の概要(中間報告)をまとめた。それによると、経常収支の赤字組合は、総合組合全体の約9割を占める215組合、経常収支差引額は1980億785万円の赤字となり、前年度に比べ財政状況が大幅に悪化した。新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、解雇や雇い止めになった人は累計10万人を超え、給与は11か月連続で前年同月を下回るなど、依然として経済環境回復の兆しが見えないが、3年度の予算状況はその影響を如実に表した結果となった。全総協は、新型コロナで財政が甚大な影響を受けた総合組合に対する支援策の強化を国に要望している。
今回報告された内容によると、組合数は前年度より1組合減の242組合。被保険者数は同0.06%、3861人減の645万1713人。平均標準報酬月額は同1.17%、4129円減の35万290円。総標準賞与額は同10.92%、8万6472円減の70万5207円と、いずれも前年度より減少し、特に総標準賞与額が大きく落ち込んだ。その結果、保険料収入は2兆8963億5910万円となり、前年度に比べ2.82%、839億8793万円減少した。
加入者の医療費などの法定給付費は、新型コロナウイルス感染症への警戒から医療機関の受診を控える人が増えることなどを考慮し前年度に比べ1.09%、170億1961万円減の1兆5417億5367万円となったものの、後期高齢者支援金などの納付金は、同3.41%、439億1500万円増の1兆3336億1710万円と増加傾向にあり、特に前期高齢者納付金が5.59%増と伸びが大きい。義務的経費に占める拠出金負担割合は46.38%だった。
こうした状況を受けて、経常収入総額は、前年度に比べ2.83%、849億9850万円減の2兆9163億5594万円と減少したのに対し、経常支出総額は同0.90%、277億1493万円増の3兆1143億6380万円と増加した。その結果、経常収支差引額は、1980億785万円の赤字となり、前年度に比べ赤字額が132.15%、1127億1344万円拡大した。経常収支差引額が赤字の組合は、前年度に比べ28組合増の215組合、黒字の組合は29組合減の27組合となり、総合組合全体の88.84%が赤字予算となった。2年度予算時の経常収支差引額(▲852億9442万円)に比べ赤字額が倍増と大幅に悪化しており、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、標準報酬月額や標準賞与額の低下による保険料収入の減少が影響を及ぼした格好となった。
平均保険料率は9.7821%と前年度に比べ0.0074ポイント増加し、このうち保険料率を引き上げた組合は18組合となった。協会けんぽの全国平均保険料率10%以上の組合は95組合と2組合増えた。さらに実質保険料率(加重平均)は9.890%と前年度に比べ0.371ポイント増加した。
介護保険は平均保険料率が1.7587%と前年度に比べ0.0582ポイント増加。料率を引き上げた組合は104組合となった。
昨年4月の緊急事態宣言から1年が過ぎたが、今年に入り東京や大阪など11都府県に2回目の宣言が出され、宣言解除後も感染者数が再び増加の兆しを見せ「第4波」に警戒感が広がっている。厚生労働省が8日公表した集計結果によると、新型コロナウイルスの影響で解雇・雇い止めされた人が見込みを含めて7日時点で10万425人となったことが明らかになった。さらに同省が6日発表した毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、2月の1人当たりの現金給与総額は26万5972円で前年同月に比べて0.2%減った。新型コロナウイルスの感染拡大が鮮明になって以降、11か月連続で前年を下回っている。
今後も小売、飲食、旅行、運送などの業種を中心に、新型コロナウイルスの影響が及ぶと見込まれているが、「2022年危機」を前に、3年度予算では、総合組合全体の約9割が赤字組合で経常収支差引額が前年度に比べ倍増の赤字という深刻な状況に陥っており、新型コロナによる総合組合財政へのさらなる悪影響が懸念される。
コロナ禍で財政が悪化
総合組合に支援強化を
全総協・後藤専務理事
今回の令和3年度予算集計結果を発表するにあたり、全国総合健康保険組合協議会の後藤利美専務理事は、本誌に以下のコメントを寄せた。
新型コロナウイルスの感染拡大の抑止を前提として、事業運営を推計するというイレギュラーな予算編成となった。新型コロナウイルス感染症の影響は業種・業態により異なるが、会員組合全体では被保険者等の適用関係がすべて減少の見込みで、特に平均標準賞与額は10%強の減少が見込まれている。また、保険給付費は、診療実日数の減少とは裏腹に1日当たり診療点数が増加するなど、これまでにない局面で1%程度の減少となった。
こういった変則的な状況のなか、高齢者支援金・納付金の増額は対前年度439億円(3.4%)の増、特に前期高齢者納付金は330億円(5.6%)の増になっている。その結果、9割の組合が赤字予算となり、経常収支差引額のマイナス1980億円は前年度の赤字額から1127億円も悪化した。
いずれにしても、令和2年度の決算の状況が待たれるが、国はコロナ禍で財政への影響が甚大な総合組合への支援策を強化していく必要がある。