健保ニュース
健保ニュース 2021年4月上旬号
オンライン資格確認の本格運用
厚労省 開始時期を10月まで延期
システム的な対応を強化
厚生労働省は3月26日の社会保障審議会医療保険部会で、今年3月下旬を予定していたオンライン資格確認の本格運用の開始時期について、最長で10月まで延期すると報告した。医療機関・薬局でオンライン資格確認等システムの導入準備に遅れが生じていることや、保険者が登録した個人番号に誤りがあることなどを要因にあげ、今後は3月上旬から一部医療機関等で試行しているプレ運用を継続・拡充しつつ、システム的な対応を強化する方針だ。健保連の佐野雅宏副会長は、延期に理解を示したうえで、医療機関の導入促進や保険者のデータ登録の精度向上、システムチェック体制の確立など国において全体的な工程を管理する必要性を強調した。
オンライン資格確認は、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等により、オンラインで瞬時に患者の資格情報を確認する仕組み。3月上旬からのプレ運用でデータの正確性やシステムの安定性などを確認し、下旬から本格運用を開始する予定だった。
プレ運用は3月4日からスタートし、当初は500施設が参加する予定だったが、22日時点で54施設、26日時点で100施設にとどまる。
マイナンバーカードの健康保険証利用の際に必要な顔認証付きカードリーダーの導入も3月で全医療機関等の6割程度の導入をめざしていたが、21日時点での申し込みは約10.3万施設、全体の44.9%にとどまる。内訳は、病院が約5000施設(全約8000病院の60.4%)、薬局は約4万施設(全約6万薬局の66.5%)などとなっている。
厚労省は、医療機関等の導入準備の遅れについて、新型コロナウイルスの影響に伴うシステム改修の遅れや世界的な半導体不足によるパソコン調達の遅れ、一部カードリーダーメーカーの生産遅れなどを指摘。カードリーダーは生産拡大中で、遅くとも6月までに約10万台の生産が可能とみている。
なお、マイナンバーカードの健康保険証利用の申し込み状況は、全国のカード枚数の8.9%(311万件)にとどまっている。
保険者サイドでは、昨年10月から今年2月にかけて順次、加入者データを中間サーバーに登録し、現在、データの正確性を確認中。厚労省は、コロナ禍による出勤制限などもあってデータ登録、確認・修正作業に時間を要していると指摘した。
また、保険者内での取り違えなど登録した個人番号の誤りや、保険証発行前に資格を失った場合など被保険者証の情報が登録されてない事例が約6.3万件(3月24日時点の中間サーバー登録者数約1.2億人の0.05%)、データ様式違いなどによる被保険者番号が正確でないものが約0.3万件(同0.002%)などの不具合が発見されている。個人番号の誤りは2月には3万件以上あったが、3月24日時点で50件程度に減少したという。
厚労省は、こうした状況を踏まえ、ヒューマンエラーが起こり得ることを前提に、システム的な対応を強化し、データの精査を行う必要があると判断。オンライン資格確認については、システムの安定性確保やデータの正確性担保などの観点から、プレ運用を継続し、約10万施設程度まで順次拡大を見据えながら、遅くとも薬剤情報の閲覧開始を予定している10月までに本格運用を開始する方針を示した。
厚労省が提示した本格運用に向けた工程管理スケジュールでは、4~6月の保険者の作業において、個人番号の誤りが生じないよう、個人番号の誤入力をシステム的にチェックする機能を導入する。並行して、請求に必要となる資格情報の再確認・修正を重点的に実施する。
7月以降は、個人番号に誤入力がないかJ-LIS照会により再確認するとともに、実際の運用を通じて検知したデータ誤りも含め、データ確認・修正を通じて最終確認する。
健保連の佐野副会長は、オンライン資格確認のプレ運用期間の延長と本格運用開始の先送りについて「システムの安定性、データの正確性の向上を図るためにも賛成する」とし、これまでの準備作業において「われわれも含めて関係者すべてに反省すべき点があった。データの登録開始からプレ運用開始までの期間がタイトであったり、プレ運用期間も短かったなかで、国との連携がうまくいっていない部分もあった」と指摘した。
そのうえで、今回のプレ運用期間の延長を活用して、「医療機関の導入促進と保険者のデータ登録内容の正確性の確保、システムチェック体制の確立など全体的な工程管理を国として実施すべきだ。われわれも可能な限り対応に努めていく」との考えを示した。