健保ニュース
健保ニュース 2021年3月下旬号
審査支払機能のあり方「議論の整理案」
審査基準の統一 6年4月までに検討
システムの共同利用推進も提言
厚生労働省は10日に開催された「審査支払機能の在り方に関する検討会」(座長・菊池馨実早稲田大学法学学術院教授)に、これまでの議論をまとめた「議論の整理案」を提示した。「整理案」では、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険中央会・国民健康保険団体連合会における各支部間の審査格差を解消するため、令和6年4月までに審査基準の統一に向けた検討を終える方針を打ち出した。また、両機関の審査支払システムは、運用費用のコスト削減を図り、審査支払業務が整合的かつ効率的に機能するよう、システムの共同利用を推進する必要性を強調した。「整理案」は、この日の会合で議論した「オンライン請求の促進」の改革の方向性も追記したうえで、次回会合で取りまとめる。
「審査支払機能の在り方に関する検討会」は昨年9月に発足し、支払基金と国保中央会・国保連における支部間の審査格差の解消や審査支払システムの効率的な運営のあり方などのテーマについて、6回の議論を重ねてきた。
厚労省がこの日の会合に提示した「議論の整理案」では、支部間の審査格差を「不合理な差異」と位置づけ、その内容を「臨床現場の多様性や審査委員の臨床経験・専門的知識等を考慮しても、なお、医学的な判断として、説明が困難な審査結果」と定義づけた。
不合理な差異の解消に向け支払基金は、既存の支部のコンピュータチェックルールに関し、今年9月に予定する新システムの稼働までに本部へ集約もしくは廃止することとしている。
「整理案」では、全国で約3万3000ある支払基金の支部ごとの審査基準について、令和4年10月までにその重複や整合性を整理し、6年4月までに全国統一に向けた検討を終える方向性を明示。統一完了に要する期間は4年10月までに確定することとした。
今年9月に導入予定の支払基金における審査結果の差異を公表するための自動レポーティング機能については、不合理な差異を含むすべての差異について情報公開するとともに、差異解消に向けたPDCAの状況の公表も求め、原因究明に役立てる考えを明らかにした。
さらに、支払基金と国保連間の審査結果の差異解消に向けて、支払基金がコンピュータチェックの全国統一を行う今年9月から6年4月までに両機関のチェックを統一化するほか、判断基準を統一化するための厚労省による連絡会議の開催や、両機関の審査委員の併任を認めるなどの対応も盛り込んだ。
もう1つのテーマである支払基金と国保中央会・国保連の審査支払システムの効率的な運営のあり方については、「審査・支払などすべての機能の共同利用を検討すべき」と明記し、より安価で高品質なシステムの構築に向けて、政府のデジタル化の推進と歩調を合わせて取り組む必要があるとした。
さらに、コスト削減を図る観点から、医療機関や保険者などが利用可能となるシステムの構築を求め、審査支払機関のレセプトチェック機能を医療機関や保険者に開放することなどを具体例としてあげた。
システムの共同利用の時期は、審査領域が8年4月、支払領域はデジタル庁との連携のもと早急に費用対効果を含めた検証を行い、結論を出すべきとした。
6年の国保総合システムの更改と並行して両機関の共同作業を行う体制を整備し、実証的な開発手法を用いながら、段階的・継続的に共同利用機能を共同開発するよう求めた。
今後については、同検討会が取りまとめる改革の方向性と工程表を踏まえ、厚労省、支払基金、国保中央会で速やかに工程表を策定し、改革の進捗をフォローアップしていく対応方針を明示した。
「整理案」は、この日の会合で議論した「オンライン請求の促進」の改革の方向性も追記したうえで、次回会合で取りまとめる予定となっている。
自動レポ機能の情報公開 対象事例の拡大を要望
河本常務理事
健保連の河本滋史常務理事は、「議論の整理案」に明記された審査結果の不合理な差異解消に向けた取り組みに関し、自動レポーティング機能で情報公開する対象事例の拡大を要望した。
河本常務理事は自動レポーティング機能について、これまで見えてこなかった審査上の差異を自動で「見える化」し、スピーディーな差異解消につながる大きなメリットがあると評価。
「整理案」が「すべての差異の情報公開を行う」と明記したことに対しては、検証後の差異でなく、自動レポーティング機能で差異を抽出した段階で情報公開する必要があるとした。
さらに、情報公開の対象事例は、当初予定された一般的な事例だけでなく、保険者から再審査請求された内容や、支部間差異として疑義照会された内容について、査定の有無にかかわらず情報公開するよう求めた。
システムの整合的かつ効率的なあり方については、審査支払システムの共同利用を開始するにあたって被用者保険に追加費用が発生する場合、共同利用が将来的にどのような効果を生むのかを明らかにしたうえで協議するよう訴えた。
このほか、「整理案」に明記されたレセプト原本データの一元管理は今後の業務効率化を視野に入れた厚労省、支払基金、保険者による継続的な検討、レセプトの在宅審査は費用対効果を含めた検討などを要請。
また、医療機関等に対する診療報酬の支払時期の早期化については、「保険者の資金繰りの問題から困難である」との見解を示した。