HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2021年3月中旬号

健保ニュース

健保ニュース 2021年3月中旬号

国民民主党が健保連からヒアリング
佐野副会長 法案成立に理解と協力求める
次のステップへさらなる改革を

国民民主党は4日、政務調査会会議を開催し、国会に提出されている健康保険法等改正案について、健保連からヒアリングを行った。健保連からは佐野雅宏副会長、河本滋史常務理事、田河慶太理事が出席し、法案成立に理解と協力を求めた。

このなかで佐野副会長はリーマンショック以降、給与や賞与が伸び悩む一方で、高齢者医療費に対する支援金・納付金や保険給付費は、年々増加しているため、現役世代の負担の伸びが著しく、さらに新型コロナの影響を受けて、給与や賞与が減額されれば、その負担は一層増すと懸念を示した。

また2022年にかけて後期高齢者が急増し、現役世代が減少していくなか、これまで医療費の増加割合に比べて現役世代の負担は増し、反対に高齢者世代の負担が変わっていないという負担と給付のアンバランスが顕著になったと指摘。後期高齢者支援金に対する現役世代の負担を軽減するため、後期高齢者に一定の負担を求めることになったと説明した。

見直しにあたり健保連は、年収155万円以上の一般区分に該当するすべて後期高齢者に2割負担を導入するよう求めたものの、対象範囲を所得上位の30%、年収200万円以上で政治決着し、2022年から2025年までの4年間の累積抑制効果額は3960億円にとどまったことを解説。4年間で支援金は累積で2兆9000億円増えるなか、2割負担の引き上げ効果は累積増加額の14%しかないため、今回の健保法等改正では現役世代の負担を軽減するには程遠い状況と報告した。

佐野副会長は、今後も現役世代のさらなる負担軽減と国民皆保険制度の持続可能性の観点から、今回の改革で終わらせることなく、改革に取り組むことが必要との考えを示したうえで、まずはこの法案を成立させ、次のステップに移れるよう支援してほしいと要望した。

佐野副会長の説明に対し、出席した古川元久衆院議員(党国会対策委員長)は、「2025年以降、健保組合の状況はもっと悪くなるのではないか。目先の改革ではなく、根本的な問題を解決しないと事態はさらに悪化し、医療保険制度を維持できなくなる」との懸念を示し、さらなる抜本改革の必要性についての認識を質問した。

これに対し佐野副会長は、医療保険制度の負担方法は、税、保険料、自己負担の3つのなかで、改革にあたっては消費税率の引き上げによる財源確保や、自己負担の引き上げは今回のように政治的にも実行が難しいが、これまでのような保険料負担の引き上げだけでは対応しきれず、今後は国民に痛みを伴う改革が避けて通れないのではないかと見通した。

舟山康江参院議員(党政務調査会長)は、医療費への負担が低いから安易に受診するという過剰診療が少なからず起きているのではないかとの認識を示した。そのうえで、健保組合で加入者に適正な受診の呼びかけや、健診の実施など懸命な取り組みがあっても、負担が低いことで過剰診療につながるようなことが高齢者医療で起きているのであれば、それを根本的に直さない限り、医療保険制度の持続性を保てないと指摘し、自己負担と受診との関係性に関する健保連の考え方を質問した。

佐野副会長は、舟山議員の考えに同意を示したうえで、レセプトデータなどを分析し、エビデンスにもとづいた提言を行う意向を明らかにした。特に今回の新型コロナウイルスの感染拡大により受診抑制が起きたが、受診が必要な人まで控えたのかどうか、あるいは大幅に減った小児科の受診と自治体からの医療費助成との関係などを分析し、適正な受診行動である「上手な医療のかかり方」に結びつくよう取り組むと応答した。

浜口誠参院議員は、後期高齢者医療の現役並み所得者に対する公費負担のあり方や、高齢者医療への支援金の上限設定など、窓口負担の見直し以外の政策について、政府に求める優先順位を確認した。

佐野副会長は、現役世代の負担を軽減することが喫緊の課題とし、これまで高齢者に偏った社会保障制度を全世代型に見直すことが重要と述べたうえで、第一には保険給付範囲の見直しをあげた。日本は国民皆保険制度の導入によって、誰でもどこでも医療機関を受診できるフリーアクセスが担保されつつ、新薬が承認されるなど保険の対象は広がっているが、広げるだけでは保険財政はいつかパンクすると指摘し、そのために保険給付範囲の見直しは不可避であるとの考えを示した。さらに、かかりつけ医の普及についても言及し、どのように制度化し浸透させていくかが重要と述べ、患者へのアドバイスを通じ適切な医療の受診を導くようなかかりつけ医の役割に期待感を示した。

足立信也参院議員は、今回の窓口負担の見直しに合わせ、後期高齢者の急激な負担増を抑制するため3年間の経過措置を導入する方針が示されたが、その導入により財政効果が薄れ、2022年以降の健保組合の財政危機に悪影響を及ぼすのではないかとの確認に対し、佐野副会長は、経過措置導入によって窓口負担の見直しによる財政効果が弱まることに懸念を示した。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年