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健保ニュース 2021年2月上旬号

3年度介護報酬改定を了承
全サービスの基本報酬を引上げ

社会保障審議会・介護給付費分科会(分科会長・田中滋埼玉県立大学理事長)は1月18日、令和3年4月からの介護報酬改定に関する諮問を受け、原案通り了承した。改定率については、物価動向による物件費への影響など介護事業者の経営を巡る状況などを勘案し、全体で0.7%引き上げる。さらにすべての介護サービスの基本報酬を引き上げるほか、新型コロナウイルス感染症への対応を特例的に評価するため、4月から9月までの間、基本報酬に0.1%上乗せする。

審議のなかで健保連の河本滋史常務理事は、健保組合の財政状況を踏まえると、支える側の現役世代はこれ以上の負担増には耐えられないと指摘したうえで、次期介護報酬改定に向けては、給付と負担のあり方や介護給付費の適正化などについて、より踏み込んだ議論が必要との見解を示した。

今回の介護報酬改定の基本的な考え方としては、昨年末に了承された同分科会の審議報告にもとづき、「感染症や災害への対応力強化」、「地域包括ケアシステムの推進」、「自立支援・重度化防止の取組の推進」、「介護人材の確保・介護現場の革新」、「制度の安定性・持続可能性の確保」の5項目が柱となっている。

「感染症や災害への対応力強化」では、大規模な感染症や災害が発生した際に、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、すべての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修や訓練の実施などを義務づけることとした。

報酬面では、感染症や災害の影響により利用者数が減少し、安定的なサービスが提供できなくなることを防止するため、デイサービスといった通所介護などの報酬について、延べ利用者数の減少が生じた月の実績が、前年度の平均延べ利用者数から5%以上減少した場合に、3か月間、基本報酬の3%の加算を行う措置を導入した。

「地域包括ケアシステムの推進」では、介護サービスにおける認知症対応力を向上させることを目的に、ホームヘルパー派遣など訪問系サービスについては、認知症専門ケア加算として、「認知症専門ケア加算(Ⅰ) 3単位/日」、「認知症専門ケア加算(Ⅱ) 4単位/日」を新たに創設した。

また人生の最後における看取り期において、本人と家族との十分な話し合いや関係者との連携を一層充実させるため、看取り介護加算の算定要件に、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」などの内容に沿った取り組みを求める。合わせて看取り介護加算については、現行の死亡日以前30日前からの算定に加えて、死亡日以前45日前からの対応についても新たに評価する区分を設けた。

さらに介護医療院における長期療養・生活施設の機能を充実し、長期入院患者の受入れを推進するため、「長期療養生活移行加算60単位/日」を新設する。また介護療養型医療施設の令和5年度末の廃止期限までに、より早期の意思決定を促す観点から、事業者に一定期間ごとに移行等に係る検討の状況について指定権者に報告を求め、期限までに報告されない場合には、次の期限までの間、基本報酬を減算する措置を導入した。

「自立支援・重度化防止の取組の推進」では、「CHASE」や「VISIT」といった介護やリハビリに関するデータベースを活用し、質の高いサービスの提供を推進するため、施設系サービスに「科学的介護推進体制加算(Ⅰ) 40単位/月」を新設するなどの対応を実施する。

「介護人材の確保・介護現場の革新」では、介護職員の処遇改善を目的に、元年度に創設された「介護職員等特定処遇改善加算」の介護職員間の配分ルールを見直し、経験・技能のある職員だけでなく、その他の職員にも処遇改善が図られるようにする。

「制度の安定性・持続可能性の確保」では、「介護職員処遇改善加算」の(Ⅳ)および(Ⅴ)について、上位区分の算定が進んでいるため、廃止するなどの評価の適正化・重点化を行うほか、療養通所介護(医療型デイサービス)における報酬を日単位から月単位包括報酬とし報酬体系の簡素化を行う一方で、中重度の要介護者の状態にあわせた柔軟なサービス提供を図る。

健保連・河本常務理事
次期報酬改定に向けて給付と負担の議論を

この日の介護給付費分科会で健保連の河本滋史常務理事は、今回の介護報酬の改定にあたり、すべて団塊の世代が75歳以上となる令和7年、さらに高齢人口がピークを迎える令和22年を見据えた場合、利用者の状態に応じて適時・適切な介護サービスが提供されることは非常に重要なことだが、介護サービスの需要が増大し、介護給付費が急増していくことを考慮すると、これまでと同様に拡充を続ける状況にはないと指摘。

その理由として、制度の支え手である現役世代の減少や、コロナ禍による経済状況の悪化に伴い、勤労世代の報酬の減少、そして新型コロナウイルスの感染再拡大に伴う緊急事態宣言の再発令によるさらなる経済の深刻化をあげた。

加えて、健保組合の財政状況は、高齢者医療費への負担も含め非常に厳しく、第2号被保険者の介護納付金を賄うため、介護保険料率の大幅な上昇を余儀なくされることは確実と述べ、介護保険を支える側の現役世代は、これ以上の負担増に耐えられないと訴えた。

そのうえで河本常務理事は、今回の改定の柱の1つである「制度の安定性・持続可能性の確保」で、より踏み込んだ議論が行われなかったことに懸念を示したうえで、次期介護報酬改定に向けて、「限られた財源のなかで、効率化等により削れるものは削る一方で、必要かつ効率的・効果的な介護サービスは評価するなど、適正化、重点化に力点を置いた見直しを、より一層進めることを強くお願いする」と述べ、給付と負担のあり方や介護給付費の適正化などに関する本格的な議論を行うよう求めた。

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