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健保ニュース 2021年1月下旬号

厚労省が電子処方箋の運用費を試算
年9.8億円 全被保険者の負担を提案
加入者1人当たり月0.65円

厚生労働省は13日に開催された社会保障審議会医療保険部会に、データヘルス改革の進捗状況を報告した。

このなかで、令和4年夏の運用開始をめざす電子処方箋について、すべての機能が稼働する5年度以降の運用・保守費用を年9.8億円と見込む試算を示した。厚労省は、電子処方箋システムは、医療保険制度の運営基盤の1つとして被保険者全体が利益を受けるものとの観点から、すべての被保険者が公平に費用を負担する仕組みとすることを提案。加入者1人当たり負担額は月0.65円と試算した。

電子処方箋の仕組みの前提となるオンライン資格確認に必要な顔認証付きカードリーダーの医療機関や薬局の申込率が2割程度にとどまっているなか、健保連の佐野雅宏副会長は、「電子処方箋が一定程度普及し、その効果が実感されなければ、被保険者の費用負担に理解を得られない」と強調した。

厚労省は、電子処方箋の仕組みの構築に向けて、その効果や財政影響を示しながら、引き続き費用負担のあり方の検討を進めていく意向を示した。

電子処方箋は、オンライン資格確認の基盤を活用し、医療機関と薬局の処方・調剤情報を、他の医療機関や薬局で閲覧可能にする仕組み。令和4年夏の運用開始をめざし、それまでに必要な法制上の対応や医療機関などのシステム改修を進める。

厚労省は、電子処方箋の導入で、医療機関や薬局間の迅速な情報伝達や被保険者に適切な薬学的管理が可能となるなどの効果を期待。被保険者の利便性が高まるほか、フリーアクセスが保障された医療保険制度で効果的に重複投薬やポリファーマシーを防止できるなど、被保険者の適切な受診・服薬や、効果的な健康増進に資するとした。

そのうえで、このような機能・効果を前提とすれば、医療保険制度の運営基盤の1つとして被保険者全体が利益を受けるものであると位置づけ、電子処方箋の費用負担の考え方として、すべての被保険者が公平に負担する仕組みとすることを提案した。

社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険中央会が運営主体となり、オンライン資格確認等システムの基盤を活用することや、「健康・医療・介護情報利活用検討会」で整理した機能を実現することを前提に、令和5年度以降の運用・保守費用を年間で9.8億円と試算。加入者1人当たり負担は月額で約0.65円と見込んだ。 

健保連の佐野副会長は、医療機関や薬局などでのオンライン資格確認の準備の遅れやマイナンバーカードの保険証利用の申込状況から、「ある程度の普及段階に達するまでは公的財政支援を含めた費用負担を検討するべき」と指摘。

さらに、被保険者の費用負担については、「普及の見通しを踏まえ改めて議論すべき」と言及したうえで、「被保険者の納得感を得るためには、費用に見合うメリットが見込まれることが大前提であり、効果が実感されなければ理解を得られない」との考えを示した。

このほか、この日の会合では、全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大に対し、レセプト上の傷病名や手術情報を患者の同意で一律に提供可能とすることを懸念する意見が多数あったことから、傷病名提供の仕組みについて、引き続き、「健康・医療・介護情報利活用検討会」で検討を進めていくこととした。

顔認証付きカードリーダー
医療機関等の申込は21%

この日の会合では、厚労省からオンライン資格確認の普及状況について報告があった。
 医療機関と薬局におけるオンライン資格確認システムの導入準備状況をみると、資格確認に必要な顔認証付きカードリーダーを申し込んだ医療機関と薬局は令和3年1月3日時点で4万8866施設となり、全体の21.4%にとどまっていることが明らかになった。

病院29.4%、医科診療所14.5%、歯科診療所16.2%、薬局35.8%の内訳で、診療所の申込率が低い。

厚労省は、オンライン資格確認システムが稼働する令和3年3月に医療機関等の6割程度、5年3月末に概ねすべての医療機関等での導入をめざしているが、マイナンバーカードの健康保険証利用の申し込みの状況をみると、全国のマイナンバーカード交付枚数の6.8%(209万7589件)にとどまる。

厚労省は、オンライン資格確認等システムやマイナンバー制度等の既存インフラを最大限活用することを「データヘルス集中改革プラン」の基本的な考え方とし、マイナンバーカードの健康保険証利用の普及に向けた加速化プランを実施しているものの、未だに目標から大きな乖離がある。

佐野副会長は、「実効性を上げるために一層の導入促進をお願いしたい」と要望するとともに、「進捗管理体制やコストの負担方法などを適切に考えるべき」と主張した。

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