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健保ニュース 2021年新年号

中医協が3年度薬価改定の骨子を承認
医療費への影響は▲4300億円
診療側 本体の特例加算とセットで了承

中医協は12月18日の総会で、令和3年度薬価改定の骨子を承認した。
 加藤勝信内閣官房長官、麻生太郎財務相、田村憲久厚生労働相が17日に合意した「毎年薬価改定の実現について」にもとづき、3年度薬価改定における対象品目や改定方式、適用する算定ルールなどを決定した。

診療側は、大規模な薬価改定とされたことに遺憾の意を示したが、診療報酬本体の特例評価と合わせて骨子について了承した。

3年度薬価改定の範囲は、国民負担軽減の観点からできる限り広くすることが適当であるとの状況のもと、2年度薬価調査における平均乖離率8.0%の0.625倍を超える「平均乖離率5.0%超」を「価格乖離の大きな品目」の対象とした。

中医協では、平均乖離率の「1倍超」、「1.2倍以上」、「1.5倍以上」、「2倍以上」の4つの試算データにもとづき議論していたが、3年度薬価改定の対象を「0.625倍超」とすることで政治決着が図られた。

対象は1万2180品目で、全品目(1万7550品目)の69%を占める。分類別では、▽新薬1350品目▽長期収載品1490品目▽後発医薬品8200品目▽その他の品目1140品目─となる。

分類ごとの品目数全体に対する割合は、▽新薬(59%)▽長期収載品(88%)▽後発品(83%)─で、「新薬」のうち、新薬創出等加算の対象品目は240品目(加算対象品目全体の40%)を占めた。

価格乖離の大きな品目を対象とする一方、2年度薬価調査の平均乖離率(8.0%)が、中間年に実施した平成30年度薬価調査の平均乖離率(7.2%)を0.8%上回ったことを「新型コロナウイルス感染症による影響」と見做し、薬剤流通への影響を緩和する観点から、特例的な「一定幅」として薬価削減幅を「0.8%」緩和する。

通常の薬価改定は、市場実勢価格を品目ごとに加重平均し、調整幅(2%)を上乗せした額を新たな公定価格とするが、3年度の毎年薬価改定では、「一定幅(0.8%)」を合わせた「2.8%」が上乗せされる。

3年度薬価改定による医療費への影響額はマイナス4300億円となる。仮に、薬価の削減幅を0.8%分緩和せずに全品改定した場合の実勢価改定影響額を機械的に算出すると、医療費への影響額はマイナス4900億円。3年度薬価改定の医療費への影響は、全品改定を実施した場合の約9割に達する。

3年度薬価改定で適用する算定ルールは、①基礎的医薬品の薬価維持②最低薬価の維持③新薬創出・適応外薬解消等促進加算④後発品等の価格帯集約─で、令和元年10月の消費増税に伴う臨時改定と同様の算定ルールを適用。支払側が主張した新薬創出等加算の累積額控除や長期収載品の引き下げルールは適用されなかった。

骨子では、今後の薬価改定に向け、「国民皆保険の持続可能性」と「イノベーションの推進」を両立し、国民が恩恵を受ける「国民負担の軽減」と「医療の質の向上」を実現する観点から、「既収載品目にかかる算定ルールの適用可否も含め検討を行う」と明記した。

総会に先立ち開催された薬価専門部会では、健保連の幸野庄司理事が、薬価改定の範囲を平均乖離率の0.625倍超と設定したことにより、新薬、長期収載品、後発品がバランス良く対象となったことは、「妥当と理解する」との考えを示し、骨子案を一定程度評価した。

そのうえで、4年度の薬価改定では現行2%の水準となっている調整幅のあり方、5年度の毎年薬価改定では新薬創出等加算の累積額控除の適用などを検討課題に位置づけ、議論を進めていくよう要望した。

一方、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「大規模な薬価改定とされたことは、医療提供者側として大変遺憾である」と言及。今、最優先すべきは、新型コロナウイルス感染症に直接対峙している医療機関や、それを面で支えている地域の医療提供体制への支援であると訴え、骨子案の了承を保留した。

総会では、一般外来診療の初・再診時などに加算の算定を可能とする新型コロナウイルス感染症対策にかかる特例評価が了承されたことを受け、骨子案についても了承する意向を示し、中医協として承認した。

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