健保ニュース
健保ニュース 2021年新年号
令和3年度予算・大臣折衝合意
社会保障費の伸び実質3500億円
毎年薬価改定 国費▲1000億円
麻生太郎財務相と田村憲久厚生労働相は12月17日、令和3年度政府予算編成の重要事項を折衝し、社会保障関係費の実質的な伸びについて、3500億円程度とすることを合意した。
新型コロナウイルス感染症の影響から、医療費の国庫負担分を2000億円減少させた2年度の社会保障関係費から高齢化に伴う自然増を4800億円程度と見込んだうえで、毎年薬価改定(国費▲1000億円程度)などの改革努力により▲1300億円程度を抑制した。
一方、元年10月の消費税率の引き上げによる増収分を活用する「社会保障の充実」には、小児の外来診療にかかる診療報酬上の特例的な評価や地域医療構想の実現を図るための病床機能再編支援の実施、新子育て安心プランの実施に伴う保育の受け皿整備などを盛り込み、公費2兆5300億円を措置した。
乖離率5%超を改定対象
基本診療料に上乗せ加算
毎年薬価改定の初年度となる令和3年度薬価改定は、国民負担軽減の観点からできる限り広くすることが適当と判断し、2年度薬価調査の平均乖離率8.0%の0.625倍となる平均乖離率5%超を対象品目の範囲とした。
2年度薬価調査の平均乖離率が2年度と同様、改定半年後の中間年に実施した平成30年度薬価調査の平均乖離率(7.2%)を0.8%上回ったことを新型コロナウイルス感染症による影響とみなし、「新型コロナウイルス感染症特例」として薬価の削減幅を0.8%分緩和する。
一方、新型コロナウイルス感染症を踏まえた診療報酬上の特例的な対応として、診療科ごとの地域医療の実態や感染拡大の影響から、かかり増しの経費が必要となることを踏まえ、一般の外来・入院診療にかかる基本診療料への一定の加算点数を設ける。
令和3年4月から9月までの間、「初診・再診」は「1回当たり5点」、「入院」は「1日当たり10点」、「調剤」は「1回当たり4点」、「訪問看護」は「1回当たり50円」を基本診療料などに上乗せして算定することが可能となる。218億円の国費を見込んだ。
10月以降は、延長しないことを基本として想定しつつ、感染状況や地域医療の実態などを踏まえ、年度前半の措置を単純延長することを含め必要に応じ柔軟に対応するとした。
合わせて、これまで令和2年度予備費や補正予算で措置してきた、新型コロナウイルス患者の診療などに対する診療報酬上の特例措置は当面の間、継続する方針を示した。
小児外来の特例評価
令和3年度も継続へ
「社会保障の充実」に盛り込まれた小児の外来診療にかかる診療報酬上の特例的な評価は、政府の令和2年度第3次補正予算の閣議決定に合わせ、12月15日から適用している特例措置を3年4月以降も継続する。
小児特有の感染予防策を講じたうえで6歳未満の乳幼児への外来診療を実施した場合、4月から9月は、初診、再診にかかわらず、患者ごとに「医科100点」、「歯科55点」、「調剤12点」が追加的に算定可能となる。
10月以降は、半額の「医科50点」、「歯科28点」、「調剤6点」が初・再診料に上乗せされる。
また、地域医療構想の実現を図るため2年度に創設した「病床機能再編支援制度」は、3年度以降、消費税財源を充当。引き続き、病床機能の再編の支援を行うため、次期通常国会に関連法案を提出するとした。
介護0.7%、障害0.56%
コロナ対応に0.05%分確保
令和3年度介護報酬改定は、介護職員の人材確保・処遇改善にも配慮しつつ、物価動向による物件費への影響など介護事業者の経営を巡る状況を踏まえ、改定率は全体でプラス0.7%(国費196億円)とした。改定率は、平成30年度のプラス0.54%から1.6ポイント増となる。
給付の適正化を行う一方、感染症への対応力強化やICT化の促進を行うなどメリハリのある対応を行う。
他方、3年度障害福祉サービス等報酬改定は、福祉・介護職員の人材確保・処遇改善に配慮しつつ、感染症への対応力強化などを踏まえ、改定率は全体でプラス0.56%(国費86億円)とした。平成30年度の0.47%に比べ0.09ポイント増となる。
介護報酬、障害福祉サービス等報酬とも、新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価として、9月末までの半年間、0.05%相当分を確保し、10月以降は、特例評価を延長しないことを想定しつつ、感染状況や地域における介護・障害福祉サービスなどの実態を踏まえ、必要に応じ柔軟に対応するとした。