健保ニュース
健保ニュース 2020年12月中旬号
厚労省が2年度薬価調査を中医協に提出
市場実勢価との乖離率は8%
支払側 毎年改定のルール検討を
厚生労働省は2日、医薬品の市場実勢価格に関する令和2年度薬価調査の速報値を中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)の薬価専門部会に提出した。
2年度薬価調査の結果は、3年度の毎年薬価改定に向けた議論を進めるための検討素材に位置づけられるが、2年度改定から半年後の医薬品の市場実勢価格は公定価格を平均で8.0%下回った。
平均乖離率や投与形態別・主要薬効群別乖離率のほか、妥結率や単品単価取引の状況は、2年度と同様、中間年に該当した平成30年度並みの水準であることが明らかとなった。
各種数値が例年と遜色ないことから、2年度薬価調査は正常に実施されたとして、次回以降、毎年薬価改定に向けたルールの検討を求める支払側の主張に対し、診療側は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、医療現場は崩壊寸前の状況として、改定を行った場合の医療機関経営への影響を提示するよう要望した。
厚労省の井内努医療課長は、3年度の毎年薬価改定について、「薬価交渉プロセスも含めた関係者の意見や2年度薬価調査の結果も踏まえつつ、中医協で十分検討を進める」と言及。そのうえで、「財政当局とも協議しながら、新型コロナの影響も勘案しつつ、政府の3年度予算編成過程で十分検討し、決定していく」との意向を示した。
2年度の薬価調査は、今年の9月取引分について、販売サイドから11月4日までに報告があったものを集計。回収率は86.8%で、平成30年度調査(85.0%)と同等の数値となった。
調査結果をみると、公定価格と市場実勢価格との乖離率は8.0%で、30年度の7.2%に比べ0.8ポイント拡大。
投与形態別の乖離率は、内用薬が平均9.2%(30年度8.2%)で最も大きく、特に「高脂血症用剤」(13.8%)や「その他のアレルギー用薬」(13.6%)、「血圧降下剤」(12.1%)、「消化性潰瘍用剤」(11.7%)、「その他の中枢神経系用薬」(10.4%)が公定価格に比べ10%以上下回った。
注射薬は平均5.9%(30年度5.2%)、外用薬は平均7.9%(同6.6%)、歯科用薬剤は平均▲0.3%(同▲5.7%)の乖離率。歯科用薬剤は市場実勢価格が公定価格を上回る「逆ザヤ」と呼ばれる現象が引き続きみられたが、薬価を特例的に引き上げる「不採算品再算定」を複数企業が申請したため、一定程度、改善した。
一方、令和2年度上期の妥結率は95.0%(同91.7%)、単品単価取引の割合は200床以上の病院83.3%(同84.4%)、20店舗以上の調剤薬局95.2%(同96.5%)の状況だった。
通常の薬価改定は、市場実勢価格と公定価格との乖離を埋めるため、医療機関や薬局が販売事業者から購入した市場実勢価格を品目ごとに加重平均し、調整幅(現行2%)を上乗せした額を新たな公定価格とする。
これに対し、3年度の毎年薬価改定は、改定の対象範囲や算定ルール適用のあり方について、新型コロナウイルス感染症の影響も勘案し十分検討し決定することとされている。2年度薬価調査の結果が明らかとなったことで、中医協における議論の本格化が期待される。
健保連の幸野庄司理事は、各種数値が例年と遜色ないことから、すべての委員が2年度薬価調査は正常に実施できたことを事実として共有し、それを前提に次回以降、毎年薬価改定の具体的なルールについて検討を進めていくべきと指摘。
そのうえで、▽新薬、長期収載品、後発品の乖離率の分布▽価格帯別に見た場合の乖離率と乖離額の分布▽新薬創出等加算の累積額控除を実施する場合の対象品目と控除額─などの追加データを提示するよう求めた。
一方、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い医療現場は崩壊寸前の状況にあることを共有すべきと主張し、毎年薬価改定を行った場合、医療機関の経営にどの程度の影響を与えるのかを示すよう要望。
また、乖離額への着目や新薬創出等加算の累積額控除、調整幅のあり方の見直しなどの支払側の提案は、「毎年薬価改定の前提を超えるものである」との認識を示し、「到底考えられるものではなく、十二分に留意し、慎重な検討を行うべき」と述べた。
後発品の使用状況
2年9月の数量割合78.3%で目標未達
厚労省が中医協に報告
厚生労働省は2日、令和2年9月取引分を対象とした薬価調査の結果、後発医薬品の数量割合は前年同月比1.6ポイント増の78.3%だったことを中医協に報告した。
令和2年9月までに後発品の数量割合を80%とする政府目標は惜しくも達成できなかったことが明らかになった。
後発品の数量割合は、診療報酬などによる使用促進策に伴い、平成29年9月の65.8%、30年9月の72.6%、令和元年9月の76.7%と着実に上昇してきたが、令和2年9月を目標とする80%まで1.7ポイント届かなかった。