健保ニュース
健保ニュース 2020年12月中旬号
平成30年度国民医療費
43.4兆円、マイナス改定で0.8%増
1人当たりは34万3200円
厚生労働省は11月30日、平成30年度の国民医療費が前年度に比べ0.8%増の43兆3949億円だったと公表した。医療費総額は過去最高を更新したが、通常で年2%程度伸びる近年の傾向と比較すると、診療報酬のマイナス改定が影響して小幅な伸びとなった。0.8%増の要因分解は、人口の高齢化で1.1%増、医療の高度化などその他で1.1%増とプラスに作用した一方、人口の減少に伴う0.2%減、診療報酬のマイナス1.19%改定が押し下げた。1人当たりの国民医療費は過去最高の34万3200円で前年度比1.0%増加した。
国民医療費は、保険診療の対象となり得る傷病の治療費を推計したもので、評価療養や選定療養、不妊治療における生殖補助医療、正常分娩、健康診断、予防接種などの費用は含まれない。
平成30年度の国民医療費の国内総生産(GDP)に対する比率は、同0.04ポイント上昇して7.91%、国民所得(NI)に対する比率は0.01ポイント減の10.73%となっている。
制度区分別の国民医療費は、被用者保険の給付分が同2.1%増の10兆3110億円、国民健康保険の給付分が同2.5%減の9兆957億円、後期高齢者医療の給付分が同1.9%増の15兆576億円、患者負担分が同2.5%増の5兆4047億円。堅調な雇用環境を背景に、被用者保険は国保からの移行や短時間労働者の適用拡大なども進んで加入者数が同0.7%増、国保の加入者は同3.9%減で加入者の増減が被用者保険、国保の給付分の伸びに影響した。
被用者保険の給付分のうち、健保組合は同1.6%増の3兆6824億円、協会けんぽは同3.1%増の5兆5425億円、船員保険が同3.1%減の188億円、国家公務員共済組合が同1.5%減の2405億円、地方公務員共済組合が同1.0%減の6979億円、私立学校教職員共済組合が同0.9%増の1290億円だった。
都道府県別の国民医療費は、最高が東京4兆3407億円、次いで大阪3兆3016億円、神奈川2兆8081億円で、最低は鳥取2018億円、次いで島根2616億円、福井2689億円となっている。
1人当たりでは、最高が高知45万5300円、長崎42万3700円、鹿児島42万800円と続く。最低が千葉30万800円、次いで埼玉30万2700円、神奈川30万6000円で、最大で1.5倍の格差となっている。
年齢階級別の国民医療費は、0~14歳が2兆5300億円(構成割合5.8%)、15~44歳が5兆2403億円(同12.1%)、45~64歳は9兆3417億円(同21.5%)、65歳以上が26兆2828億円(同60.6%)と、65歳以上が医療費の6割を占める。1人当たりでは65歳未満が18万8300円、65歳以上が73万8700円。75歳以上は91万8700円で65歳未満の5倍となっている。
男性の1人当たり国民医療費は65歳未満が18万9500円、65歳以上が79万6600円。女性は65歳未満18万7100円、65歳以上69万4300円といずれも男性を下回るが、人口構成の違いを反映し、全年齢を通じた1人当たり平均額は、男性34万2100円、女性34万4300円と女性が上回る。
国民医療費の財源は、全体のほぼ半分を占めて最大の保険料が21兆4279億円で前年度から0.8%増加した。このうち事業主分が同1.4%増の9兆2023億円、被保険者分は0.3%増の12兆2257億円。公費は16兆5497億円で同0.2%増にとどまり、このうち国庫分は0.6%増、地方分が同0.5%減となった。患者負担と健康被害補償の原因者負担分は5兆4173億円で同2.4%増加した。
診療種類別でみると、国民医療費の72%を占める医科が同1.6%増の31兆3251億円で、このうち入院が同2.1%増の16兆5535億円、入院外が同1.0%増の14兆7716億円。歯科は同2.0%増の2兆9579億円、調剤は診療報酬改定の影響で同3.1%減の7兆5687億円となった。
医科医療費を主傷病で分類すると、循環器系6兆596億円(構成割合19.3%)が最も多く、次いで新生物4兆5256億円(同14.4%)、筋骨格系・結合組織2兆5184億円(同8.0%)、損傷・中毒・その他の外因の影響2兆4421億円(同7.8%)、呼吸器系2兆3032億円(同7.4%)と続き、前年度から順位に変化はなかった。65歳未満は新生物、65歳以上は循環器系が最も多い。