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健保ニュース 2020年12月上旬号

自民党・皆保険を守る議員連盟
現役世代の負担抑制へ緊急提言
後期高齢者 能力に応じ2割負担

自民党の「国民皆保険を守る国会議員連盟」(鴨下一郎会長)は、後期高齢者の窓口負担の見直しなど、現役世代と高齢者世代が公平に負担を分かち合い、国民皆保険制度を将来世代に引き継いでいくための緊急提言を取りまとめた。11月24日に自民党の下村博文政調会長、26日に西村康稔全世代型社会保障改革担当相と田村憲久厚生労働相、27日に加藤勝信内閣官房長官に対し緊急提言の申し入れを行った。団塊世代が後期高齢者に移行し、現役世代の医療保険財政が厳しさを増す「2022年危機」に対応するため、負担能力のある後期高齢者は2割負担に見直すとともに、新型コロナウイルスで財政影響を受けている健保組合への緊急支援などを要望した。

自民党の有志議員による「国民皆保険を守る国会議員連盟」は8月27日に設立した。11月5日には第2回総会を開き、政府が年内の決着をめざす後期高齢者の窓口負担の見直しを含む次期医療保険制度改革や来年度予算編成を控え、同議連としての提言をまとめることを鴨下会長に一任し、健保連本部・都道府県連合会と意見交換を重ねてきた。

今般、健保組合と加入者である現役世代の意見を汲み取りつつ取りまとめた緊急提言は、現役世代が減少する一方、高齢者の医療費は増大し、団塊世代が後期高齢者に移行し始める2022年度から支え手である現役世代の医療保険財政が厳しさを増す、いわゆる「2022年危機」が想定されていると指摘。

さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による社会・経済活動の変化に伴い、健保組合をはじめとした現役世代は大きな影響を受けていると問題提起した。

そのうえで、現役世代と高齢者世代が公平に負担を分かち合い、国民皆保険制度を将来世代にも確実に引き継いでいくため、①全ての世代で負担を分かち合う社会保障制度の構築②現役並み所得の後期高齢者への公費投入③コロナ禍により大きな財政影響を受けている健保組合への緊急支援④保険者機能の強化を支援─の4つの要望を提言した。

このうち、①は、「2022年危機」に対応し、後期高齢者の窓口負担について、生活実態や受診状況に配慮しつつ、低所得者を除く負担能力のある者は2割負担とし、現役世代の負担上昇を抑制することを要請。

②は、現役並み所得の後期高齢者の給付費は公費負担がなく、現役世代の拠出金で支えられていると指摘し、現役並み所得者の判断基準の見直しの際を含め、給付費に対する公費の投入が必要とした。

一方、③は、コロナ禍により、宿泊業、飲食業、娯楽業、運輸業などの健保組合や中小企業中心の総合健保組合は、「報酬低下に伴い保険料収入の減少が著しい」と訴え、財政が逼迫して解散の危機にある健保組合への緊急支援を求めた。

合わせて、健保組合の支出の半分を占める高齢者医療制度への拠出金は、コロナ禍の影響でさらに負担が重くなると指摘し、拠出金負担を軽減するための補助について、コロナ禍の影響を踏まえた支援が必要と強調した。

④は、今後の人生100年時代を見据え、健診による病気の早期発見・疾病予防など、「これまで培ってきた健保組合の強みをさらに高めていくことが、適切な医療提供や効果的な保健事業で重要になる」との観点から、健保組合が自律的に保険者機能を発揮するための環境整備を進めることを求めた。

下村政調会長
コロナ踏まえた議論必要

下村政調会長への申し入れは、同議連の鴨下一郎会長(衆院)、丸川珠代幹事長(参院)、村井英樹事務局長(衆院)が自民党本部の政務調査会長室を訪ね、緊急提言を提出した。

緊急提言の申し入れ後に記者対応した丸川幹事長は、後期高齢者の2割負担が議論となっているなか、現役世代の負担を考慮するよう要望したと報告。

下村政調会長は、2割負担の施行時期も含めた全体の見直しについて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた議論が必要との認識を示した。

丸川幹事長は、「将来的な社会保障の姿を考えた時に、現役世代の負担を全世代で分かち合うという方向性は一致している」との考えを示す一方、「2022年危機が新型コロナウイルス感染症でどう変化するかは踏まえなければいけない」と言及。

新型コロナウイルス感染症の影響で、健保組合の財政も厳しくなるなか、社会全体でどのように社会保障費を負担していくのかはよく見ていく必要があるとの見解を示した。

西村社保改革担当相
緊急提言の内容に理解

西村全世代型社会保障改革担当相への申し入れは、鴨下一郎会長(衆院)、丸川珠代幹事長(参院)、大岡敏孝幹事(衆院)、三ツ林裕巳幹事(衆院)、村井英樹事務局長(衆院)が内閣府を訪ね、緊急提言を提出した。

鴨下会長は、世界に冠たる国民皆保険を堅持していく重要性を強調したうえで、「現役世代の皆さんは家族を育み、住宅ローンを抱え、日夜大変な労働をしている方々がほとんどである」とし、社会保障を支える現役世代が疲弊することのないよう、支える側の立場を代表して意見を発信する必要性を指摘した。

丸川幹事長は、現状のままでは後期高齢者支援金が今後、毎年3000~4000億円増加する構造を踏まえて、現役世代の負担軽減に資する改革を実行するよう訴えた。

三ツ林幹事は、3割負担が適用される現役並み所得の後期高齢者の医療給付費に対して、公費を投入することを強く求めた。

大岡幹事は、「負担能力のある方には2割負担とする。これをしっかり徹底すべきである」と主張した。

西村全世代型社会保障改革担当相は、現役世代の負担軽減や次世代に国民皆保険を引き継いでいくことの重要性に理解を示したうえで、与党の議論と連携しながら全世代型社会保障検討会議の最終報告を取りまとめる意向を示した。

田村厚生労働相
緊急提言踏まえて対応

田村厚労相への申し入れは、小渕優子副会長(衆院)、とかしきなおみ副幹事長(衆院)、大岡敏孝幹事(衆院)、村井英樹事務局長(衆院)が厚労省の大臣室を訪ね、緊急提言を提出した。

緊急提言の申し入れ後に記者対応した村井事務局長は、緊急提言を取りまとめた趣旨について、「政府・与党で全世代型社会保障改革の検討が進められているなか、国民皆保険を守る議連として、低所得者を除く負担能力のある後期高齢者の窓口負担は2割とする必要性を明示し、その反映を求めた」と説明した。

他方で、「現役世代の声を社会保障政策、医療政策の場にしっかりと反映させていかなければならないという思いから今年の8月に同議連を立ち上げた。自民党の議員だけで250名を超えるメンバーで構成されている」と言及。

健保組合、健保連の声を聞きながら、国民皆保険、現役世代を守っていくことを目的に活動を展開していると強調した。

田村厚労相は、緊急提言の内容に理解を示し、提言の内容を踏まえ対応する意向を表明した(「国民皆保険を守る国会議員連盟」緊急提言は以下の通り)。

「国民皆保険を守る国会議員連盟」緊急提言
国民皆保険を守る国会議員連盟

国民皆保険は我が国が世界に誇る制度として、国民の健康の増進、平均寿命の延伸等に大きく寄与してきた。

しかしながら、現役世代が減少する中、高齢者の医療費は増大し、特に団塊世代が後期高齢者に移行し始める2022年度から、支え手である現役世代の医療保険財政は厳しさを増すことが想定されている(2022年危機)。

さらに、新型コロナウイルスの感染拡大による、社会・経済活動の変化により、健保組合をはじめとして現役世代の負担能力は大きな影響を受けている。

こうした状況を踏まえ、現役世代と高齢者世代の全世代が公平に負担を分かち合い、国民皆保険制度を将来の世代にも確実に引き継いでいくため、以下提言する。


1.全ての世代で負担を分かち合う社会保障制度の構築

2022年危機に対応し、後期高齢者の窓口負担について、具体的な高齢者の生活実態や受診状況にも配慮して低所得の方を除き、負担能力のある方については2割負担とし、現役世代の負担上昇の抑制を図ることが必要である。


2.現役並み所得の後期高齢者への公費投入

現役並み所得の後期高齢者の給付費については公費負担がなく、現役世代の拠出金で支えられている。このため現役並み所得者の判断基準の見直しの際を含め、現役並み所得者の給付費に公費投入することが必要である。


3.コロナ禍により大きな財政影響を受けている健保組合への緊急支援

コロナ禍により、宿泊業、飲食業、娯楽業、運輸業等の健保組合や中小企業中心の総合健保組合は、報酬低下に伴い保険料収入の減少が著しい。財政がひっ迫し、解散の危機にある健保組合に対しては、緊急の財政支援が必要である。
 また、健保組合の支出の半分を占める拠出金負担については、コロナ禍の影響によりさらに負担が重くなる。拠出金負担を軽減するための補助については、コロナ禍の影響を踏まえた支援が必要である。


4.保険者機能の強化を支援

今後の人生100年時代をみすえて、健診による病気の早期発見・疾病予防、各種データの活用等これまで培ってきた健保組合の強みを更に高めていくことが、適切な医療の提供や効果的な保健事業において、これまで以上に重要になる。健保組合が自律的に保険者機能を発揮できるよう、コロナ禍の影響も踏まえた環境整備を進めることが必要である。

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