健保ニュース
健保ニュース 2020年10月上旬号
厚労省・令和3年度予算概算要求
一般会計総額は約33兆円
新型コロナ対応等は別途要望
厚生労働省の令和3年度予算概算要求は、一般会計が総額32兆9895億円で、2年度当初予算を34億円上回り、概算要求の段階で過去最大規模となった。このうち、医療、介護、年金などの社会保障関係費の国庫負担は高齢化に伴う自然増を勘案せずに、前年度と同額の30兆8562億円を計上した。
これに加え、新型コロナウイルス感染症への対応など緊要な経費については、金額を示さず項目のみ別途要望する「事項要求」とし、年末の予算編成過程で検討する。厚労省は、「事項要求」として、数兆円規模の追加経費を見込んでおり、年末の予算案が示される段階で概算要求額に比べ予算規模は膨大することが想定される。
3年度予算概算要求については、新型コロナウイルス感染症の影響で、例年より1か月程度遅れたスケジュールで進められた。7月21日の閣議で麻生太郎財務大臣が報告した「令和3年度予算の概算要求の具体的な方針について」を踏まえた対応で、▽要求額は基本的に対前年度同額▽新型コロナウイルス感染症への対応など緊要な経費は別途、所要の要望を行うことが可能─などとされた。
前年度までは、概算要求の段階で社会保障関係費の自然増が示され、予算編成過程で高齢化相当分まで抑えてきた。3年度予算概算要求では、新型コロナウイルス感染症の影響で2年度の医療費が落ち込み、現時点で3年度医療費の推計が困難なことから、自然増の規模も明示されなかった。
社会保障関係費の高齢化に伴う自然増の取り扱いについては、社会保障の充実等の平年度化に伴う対前年度からの増加、毎年薬価・介護報酬・障害報酬とのトリプル改定の対応などと合わせて、予算編成過程で検討する方針が改めて示された。
3年度予算概算要求は、新型コロナウイルス感染症から国民の命・雇用・生活を守るために2年度補正予算等で講じてきたこれまでの緊急対応策に加え、「新たな日常」を支える社会保障を構築するために必要な施策へと重点化を図る。
ポストコロナ時代を見据え、全分野におけるデジタル化を重点的に推進することを基本に、①ウィズコロナ時代に対応した保健・医療・介護の構築②ウィズ・ポストコロナ時代の雇用就業機会の確保③「新たな日常」の下での生活支援─を3本柱として重点要求を行った。
①は、団塊の世代が75歳以上となり、医療・介護などの需要の急増が予想される2025年以降を見据えた課題解決に向け、医療・介護サービスの提供体制の構築やデータヘルス改革を推進し、地域包括ケアシステムの構築に向けた安心で質の高いサービスの提供を実現する。
安定的で持続可能な医療保険制度の運営を確保する観点から、健保組合など被用者保険における重い拠出金負担を軽減するための財政支援に必要な経費として、前年度と同額の820億円計上した。
地域医療構想・医師偏在対策・医療従事者の働き方改革の推進等、質が高く効率的な医療提供体制を確保するための経費は前年度比12億円減の1277億円を計上したが、合わせて、新型コロナウイルス感染症への対応など緊要な経費を「事項要求」として別途要望する。
医療等分野におけるICTの利活用の促進に向けては、前年度と同様、医療保険分野における番号制度の利活用や保健医療情報を医療機関等で確認できる仕組みの推進に取り組むほか、オンライン資格確認等システムを基盤とした電子処方箋の4年度の運用開始に向けたシステム構築費として新規に38億円を計上し、データヘルスの集中改革プランを実行する。
データヘルスの効果的な実施を推進するため、保険者の先進的なデータヘルスに対する実施支援(8.1億円+緊要経費)のほか、40歳未満の事業主健診情報の活用に向けたシステム構築支援経費(1億円)を新たに計上した。
このほか、③は、総合的な子育て支援などを行うことで、「希望出生率1.8」の実現をめざす。不妊治療の経済的負担を軽減することを目的に、高額な医療費がかかる不妊治療に要する費用への助成経費を前年度と同額(151億円)計上したうえで、緊要な経費として「事項要求」に位置づけた。不妊治療への支援の推進については、財源と合わせ、年末の予算編成過程で検討する。