健保ニュース 2020年9月中旬号

健保組合の生活習慣病医療費調査
医科入院1割、入院外が9割
入院外　糖尿病等3疾患で約8割

健保連はこのほど、「平成30年度生活習慣関連疾患医療費に関する調査」を公表した。
　調査は、1280組合の医科・調剤の電算処理レセプト（2億7080万3075件）をもとに、▽糖尿病▽脳血管障害▽虚血性心疾患▽動脈閉塞▽高血圧症▽高尿酸血症▽高脂血症▽肝機能障害▽高血圧性腎臓障害▽人工透析─を生活習慣関連10疾患として、受診率や1人当たり医療費等の医療費関連指標にもとづき動向の考察を行った。

それによると、生活習慣関連疾患の医療費は、医療費全体の12％超を占め、このうち医科入院外の占める割合が9割近いことが明らかになった。

医科入院外の医療費構成割合をみると、糖尿病が3割超、高血圧症が3割弱、高脂血症が2割弱の順に高く、3疾患で約8割を占めた。1人当たり医療費も、被保険者本人、家族ともに糖尿病、高血圧症、高脂血症の順に高くなっている。

糖尿病、高血圧症、高脂血症の生活習慣関連3疾患については、医科入院外の受診率が極めて高く、治療薬として先発品を処方される割合が比較的多いことから薬剤費への影響も大きい。

生活習慣病に対する重症化予防に加え、医療費を上回る勢いで増大する薬剤費の適正化対策が引き続く課題となる。

外来受診率は本人が高血圧症
家族は高脂血症が最多

生活習慣関連疾患別の受診率（1000人当たり件数）をみると、「医科入院」では、「本人」、「家族」とも高血圧症（本人8.8件、家族4.4件）、糖尿病（同7.0件、同3.9件）、高脂血症（同4.9件、同2.5件）の順に多かった。

一方、「医科入院外」では、「本人」が高血圧症（864.4件）、高脂血症（777.9件）、糖尿病（581.2件）、「家族」が高脂血症（362.4件）、高血圧症（336.7件）、糖尿病（247.7件）の順で、「本人」は高血圧症、家族は高脂血症が最多。医科入院・外とも「本人」の受診率が高い。

生活習慣病は総医療費の12％
本人17％、家族6％の差異

健保組合における平成30年度の医療費総額（約3兆5273億円）のうち、生活習慣関連疾患の医療費は約4318億円で、全体の12.2％を占めた。このうち、「医科入院」は約565億円（全体の13.1％）、「医科入院外」は約3753億円（同86.9％）で、「医科入院外」の占める割合が9割近かった。

「本人」の医療費総額（約1兆9439億円）のうち、生活習慣関連疾患の医療費は約3321億円で、全体の17.1％。診療区分別では、「医科入院」が約425億円（全体の12.8％）、「医科入院外」が約2896億円（同87.2％）となっている。

「家族」の医療費総額（約1兆5834億円）のうち、生活習慣関連疾患の医療費は約997億円で、全体の6.3％。本人（17.1％）に比べ相当程度、低い。診療区分別では、「医科入院」が全体の14.1％、「医科入院外」が同85.9％だった。

疾患別の医療費構成割合
外来は糖尿病が3割超で最多

生活習慣関連疾患別の医療費構成割合をみると、「医科入院」は脳血管障害（36.6％）が最も高く、次いで、虚血性心疾患（29.0％）、糖尿病（12.4％）と続き、この3疾患で入院全体の約8割を占めた。

「本人」は、▽虚血性心疾患（34.5％）▽脳血管障害（34.1％）▽糖尿病（11.7％）─、「家族」は、▽脳血管障害（43.8％）▽人工透析（14.8％）▽糖尿病（14.4％）─で高い割合を占めたが、虚血性心疾患や人工透析のように、「本人」と「家族」で構成割合に違いが見られた。

一方、「医科入院外」は、糖尿病（31.1％）、高血圧症（26.3％）、高脂血症（18.1％）の順に高く、3疾患で外来全体の約8割を占めた。「本人」、「家族」とも、▽糖尿病（本人31.7％、家族29.0％）▽高血圧症（同27.0％、同23.8％）▽高脂血症（同17.3％、同20.7％）─の順に高い割合を占めた。高脂血症のみ、「本人」に比べ「家族」の方が高かった。

年齢階層別医療費
55～59歳が最高

生活習慣関連疾患の年齢階層別医療費をみると、「医科入院」は「本人」と「家族」のいずれも40歳以降で高くなる傾向にあり、「55～59歳」が最も高く、次いで、「60～64歳」の順となっていることがわかった。

「医科入院外」も、「本人」、「家族」とも「55～59歳」が最も高く、次いで、「本人」は「50～54歳」、「家族」は「60～64歳」で医療費が高かった。

1人当たり医療費
本人と家族で大差

「医科入院」の1人当たり医療費をみると、「本人」は、▽虚血性心疾患（956円）▽脳血管障害（946円）▽糖尿病（325円）─、「家族」は、▽脳血管障害（522円）▽人工透析（176円）▽糖尿病（172円）─の順で高かった。

　一方、「医科入院外」の1人当たり医療費は、「本人」、「家族」とも、▽糖尿病（本人5987円、家族2103円）▽高血圧症（同5110円、同1728円）▽高脂血症（同3266円、同1501円）─の順に高い。

医科入院、医科入院外とも、「本人」と「家族」の違いで1人当たり医療費に大きな差が生じている。

このほか、推計1入院当たり医療費をみると、「本人」は脳血管障害（98万3741円）、人工透析（74万9662円）、虚血性心疾患（52万5808円）、「家族」は人工透析（104万7678円）、脳血管障害（85万7942円）、動脈閉塞（39万1216円）で高かった。