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健保ニュース 2020年9月中旬号

審査支払機能あり方検討会が初会合
審査結果の差異解消が論点
年度末まで議論取りまとめ

厚生労働省は2日、社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険団体連合会の審査結果の差異解消や、両機関の審査業務システムのあり方を議論する「審査支払機能の在り方に関する検討会」(座長・菊池馨実早稲田大学法学学術院教授)の初会合を開いた。この日は、同省から検討会の論点と今後の進め方について資料が示され、「審査結果の不合理な差異の解消」と「支払基金と国保連のシステムの整合的かつ効率的な在り方」の2点を中心に議論を進め、来年3月末までに検討会としての考え方を取りまとめる方針が示された。これまで都道府県によって審査結果が異なる事例があるうえ、支払基金と国保連の審査基準が同一でないと指摘されてきたが、今後、検討会の議論を通じ都道府県や審査機関ごとの具体的な差異の事例が報告される予定で、差異解消に向けた議論の行方が注視される。

レセプトの審査については、レセプトの電子化が進み、コンピュータチェックによる縦覧・突合点検を実施するなどのIT化を進めてきた。

その一方で、支払基金と国保連とも47都道府県ごとに審査を実施するうえ、人手をかけ非効率に審査業務を運営していると政府の規制改革推進会議などで指摘され、これまで効率化に向けた検討が進められてきた。

また、審査の基準についても、都道府県によって同様の請求内容で認められるケースと認められないケースがあるうえ、健保組合や協会けんぽなど被用者保険加入者のレセプトを扱う支払基金と、主に自営業者や高齢者などの国保加入者のレセプトを扱う国保連との間にも、そうした差異があると指摘され、日本には94通りの審査基準が存在すると指摘されていた。

政府の規制改革推進会議では、こうした審査業務の効率化と審査基準の統一化を主要な論点として、前身の規制改革会議から検討を始めた結果、平成29年には「支払基金業務効率化・高度化計画・工程表」が策定され、厚生労働省と支払基金は具体的な検討と取り組みに着手した。昨年には支払基金法が改正され、レセプト事務点検業務の実施場所を47支部から全国十数か所の審査事務センターに集約するなど、審査差異の解消に向けた取り組みが加速されることとなった。

さらに昨年6月の規制改革実施計画では、支払基金と国保連の審査について、「各都道府県の審査委員会の役割と必要性や審査支払システムの整合的かつ効率的な運用の可能性に特に留意しつつ、その具体的な方針・対象業務・工程を明らかにし、公表する」との方針が示され、今年7月の規制改革実施計画でも「国民健康保険中央会等も含めた審査支払機能の在り方については、令和6年予定の国保総合システムの更改に向けて、厚生労働省・支払基金・国保中央会は定期的に情報連携等を行い、審査基準の統一化、審査支払システムの整合的かつ効率的な運用を実現するための具体的工程を明らかにする」と記載され、今年度末までの結論を求められている。

今回の検討会は、こうした方針や流れにもとづき設置されたもので、同省からの説明のなかで検討会の論点について、①審査結果の不合理な差異の解消②支払基金と国保連のシステムの整合的かつ効率的なあり方③その他─の3点が示された。

①については、審査差異の解消に向けた取り組みの全体像と合わせ、請求内容・審査内容をコンピュータによる審査差異を解析する「自動レポーティング」の具体的な内容等について検討する。

②では支払基金が令和3年9月に、国保連が令和6年にそれぞれ審査業務のシステム更新を予定しているため、厚労省を交えた三者で調整しながら効率的な審査業務システムの構築を目指す。

さらに③では、審査委員が行うレセプトの審査を、在宅で実施することの条件や環境についても検討する見込みだ。

検討会は今後月1回のペースで開催され、来年3月末までに意見の取りまとめを行う予定。第2回目以降は、支払基金や国保連の中央組織である国保中央会からのヒヤリング、両審査機関の審査委員長からのヒヤリングなども予定している。

保険者の要望踏まえ検討を
河本常務理事 解消目標や工程が必要

この日の検討会に構成員として出席した健保連の河本滋史常務理事は、検討会の第1の論点である「審査結果の不合理な差異の解消」について、健保連としてこれまで長きにわたり改善を求めてきた重要なテーマであると位置づけたうえで、支部や審査機関の間で発生している審査差異の公開と、審査差異解消に向けた目標や方法、工程を明らかにすることが必要と述べ、保険者の要望や意見を聞きながら検討するよう求めた。

請求内容・審査内容のもとにコンピュータで審査差異を解析する「自動レポーティング」については、その機能や効果など内容が不明なため、対象となる内容や集積・分析方法、審査差異解消との関連性などを明らかにするとともに、次回会合では、現在の開発状況を報告するよう要求した。

さらに審査差異の解消にあたっては具体的な中身の検討なしに、支部ごとの審査で多い結果を採用する多数決のような形での対応は行わないようくぎを刺した。

レセプト審査のシステム開発については、内閣官房主導で開発が進められている支払基金のシステムと同様のシステムを、国保連側で多額の費用をかけて、一から開発することは問題があると疑問を示し、来年9月に稼働予定の支払基金のシステムを国保連でも活用するのが最善との認識を明らかにした。その場合には支払基金のシステム開発に保険者側が負担した約230億円の開発費用への還元も課題にあげた。

他の構成員からは、「加入する保険者によって、公的保険で受けられる診療内容に違いがあるのは問題で、審査の差異をなくすことが必要」(佐藤主光・一橋大学経済学研究科教授)、「論点に不合理な差異の解消とあるが、差異ゼロをめざすのか。審査ルールを統一化しても人間が介在すればゼロにはならない」(印南一路・慶應義塾大学総合政策学部教授)、「在宅審査は審査の先生を確保するために重要。在宅審査の場所の条件、最先端のシステムの導入などを注意深く見ていきたい」(大石佳能子・メディヴァ代表取締役社長)、「社保(支払基金)と国保が別々に審査システムを開発するのは無駄。国が開発しそれぞれが使うことにすべき」(平川淳一・日本精神科病院協会副会長)などの意見が出た。

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