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健保ニュース 2020年9月上旬号

厚労省が元年度概算医療費を公表
前年度比2.4%増 過去最高の43.6兆円
患者数微減も単価増で上昇

厚生労働省は8月28日、「令和元年度医療費の動向」を公表した。医療保険と公費負担医療分の概算医療費は、前年度に比べ約1兆円増の43.6兆円となり、過去最高を更新した。医療費の伸び率は、高齢化の進展や医療の高度化を背景に前年度比2.4%増加。休日数などの違いによる影響を補正すると同2.9%増に上振れする。患者数に相当する受診延日数が0.8%減少する反面、単価に相当する1日当たり医療費は3.2%増加した。医療費は2年に1度の診療報酬改定の影響を除くと、毎年2%程度、伸びる傾向にあるが、元年度は10月から消費増税に伴うマイナス0.07%の臨時診療報酬改定が行われたほか、新型コロナウイルス感染症の影響で3月の概算医療費が前年比で1.2%減少したことを踏まえると、元年度の伸び率は、例年に比べやや高めの水準にある。

医療保険と公費負担医療分の医療費を集計した概算医療費は、労働災害や全額自費の診療を含まない速報値で、国民医療費の約98%に相当する。

概算医療費の動向をみると、平成27年度41.5兆円(前年度比3.8%増)、28年度41.3兆円(同0.4%減)、29年度42.2兆円(同2.3%増)、30年度42.6兆円(同0.8%増)、令和元年度43.6兆円(同2.4%増)と推移している。

平成27年度は高額なC型肝炎治療薬が相次いで保険収載されたことから医療費の伸び率は4%近くなったが、2年に1度の診療報酬改定の影響を除くと、毎年2%程度、伸びる傾向となっている。

医療機関を受診した延患者数に相当する「受診延日数」が人口減少により低下傾向にあるのと対照的に、医療費の単価に相当する「1日当たり医療費」は上昇傾向にあることが要因で、令和元年度は受診延日数が前年度比0.8%減少する反面、1日当たり医療費は同3.2%増加し、医療費全体の伸び率は2.4%増となった。

医療費の伸び率(2.4%増)の内訳について厚労省は、▽高齢化の進展(1.0%増)▽医療の高度化(1.6%増)▽人口の減少(0.2%減)▽令和元年10月の消費増税に伴う診療報酬改定(0.07%減)─と説明した。

また、新型コロナウイルス感染症が元年度の概算医療費に与えた影響について、「2月までは目立った影響はなかったが、3月の概算医療費が前年同月比で1.2%減少した」と言及。今後の医療費の動向に注視していくとの考えを示した。

このほか、令和元年度の1人当たり医療費は前年度比2.6%増の34.5万円で、伸び率が同1.6ポイント上昇した。

被用者本人と75歳以上
医療費が4%程度上昇

75歳未満の医療保険適用分は、前年度比1.4%増の24.4兆円で、このうち被用者保険が同3.1%増の13.5兆円(全体の31.0%)、国民健康保険が同0.8%減の10.9兆円(同24.9%)だった。

75歳以上の医療保険適用分は、同3.9%増の17.0兆円(同39.1%)。公費負担医療は、同1.8%増の2.2兆円(同5.0%)となった。

被用者保険は、1人当たり医療費が17.4万円で、同2.8%増加するとともに、堅調な雇用環境や適用勧奨などを反映して加入者数が同0.4%増(本人同1.5%増、家族同1.7%減)の7779万人となった。加入者数の増減が影響し、医療費の伸び率は本人の同4.4%増の伸びに対して、家族は同0.1%増のヨコバイで推移した。

一方、国保は1人当たり医療費が被用者保険の2倍を上回る36.4万円で、同3.0%増加したものの、被用者保険への移行と高齢化により加入者数は同3.6%減の2985万人となり、医療費の伸び率も減少傾向が続いた。

被用者保険と国保を合わせた未就学児は、1人当たり医療費が同0.2%増の21.9万円、加入者数は同2.8%減の635万人となり、医療費の伸び率は2.7%減と例年の減少幅に比べ大きく低下した。

75歳以上の医療保険適用分は、1人当たり医療費が同1.3%増の95.2万円、加入者数が同2.5%増の1790万人にそれぞれ増加。高齢化の進展を反映し、医療費の伸び率が4%近くまで上昇した。

医療費全体の構成割合
医75%、歯7%、調18%

診療種類別にみると、医科は前年度比2.0%増の32.5兆円で、入院が17.6兆円(前年度比2.0%増)、入院外が14.9兆円(同2.0%増)となった。歯科は同1.9%増の3.0兆円、調剤は同3.6%増の7.7兆円、訪問看護療養は同15.9%増の0.30兆円だった。訪問看護療養は、例年と同様、15%を超える伸びを示した。

医療費の構成割合は、医科74.6%(入院40.5%、入院外34.1%)、歯科6.9%、調剤17.8%、訪問看護療養0.7%で、医科入院が最も多くを占めた。

医科入院は受診延日数が同0.3%減の4.7億日、1日当たり医療費が同2.3%増の37.9千円。医科入院外は受診延日数が同1.4%減の16.1億日、1日当たり医療費が同3.5%増の9.2千円で、医科入院外は医科入院に比べ受診延日数は大きく減少したが、1日当たり医療費は例年(28年度0.7%増、29年度2.1%増、30年度1.9%増)に比べ高い伸び率となった。

病院の1施設当たり医療費は同3.4%増の28億6677万円で、大学が同4.3%増の196億8859万円、公的が3.4%増の57億4164万円、法人が同2.8%増の18億3781万円、個人が同0.6%増の7億2115万円。大学は前年度に引き続き、4%を超える伸びとなった。個人は前年度の4.0%減から増加に反転した。

診療所の1施設当たり医療費は同0.4%増の1億207万円で、眼科(同1.6%増)、産婦人科(同1.2%増)、皮膚科(同1.1%増)、整形外科(同1.1%増)、外科(同0.9%増)、内科(同0.3%増)でプラスの伸びとなる一方、耳鼻咽喉科(同2.9%減)は大きく減少。小児科(同0.9%減)は4年連続の減少となった。

歯科は、受診延日数が同0.3%増の4.2億日、1日当たり医療費が同1.7%増の7.2千円。1施設当たり医療費は、歯科病院が同4.5%増の9763万円、歯科診療所が同2.2%増の4264万円だった。

調剤費の74%が薬剤料
後発品数量は8割超

調剤医療費の構成割合は、技術料が前年度比2.4%増の1兆9771億円(全体の25.7%)、薬剤料が同4.2%増の5兆7114億円(同74.1%)、特定保険医療材料料が同4.4%増の140億円(同0.2%)で、薬剤料が7割超を占めた。

薬剤料の内訳をみると、全体の8割超を占める内服薬が同3.8%増の4兆6021億円に上昇。注射薬は、全体の6%にとどまるが、同16.3%増と大きな伸び率を示した。後発医薬品の薬剤料は、同7.0%増の1兆959億円となった。

処方箋1枚当たり調剤医療費は、年齢とともに高くなり、75歳以上(1万965円)は0歳以上5歳未満(3281円)の約3.34倍となる。

内服薬の処方箋1枚当たり薬剤料は同3.9%増の5478円だった。これを分解すると、▽処方箋1枚当たり薬剤種類数が同0.3%減の2.79剤▽1種類当たり投薬日数が同3.6%増の25日▽1種類1日当たり薬剤料が同0.5%増の79円─となる。薬剤種類数の減少傾向と投薬日数の増加傾向が続いている。

内服薬を薬効分類別にみると、循環器官用薬の8267億円、中枢神経系用薬の7999億円、腫瘍用薬の4261億円が高く、腫瘍用薬は伸び率が同19.5%増と大きく上昇した。

後発品の数量割合は、令和元年度末時点で同2.8ポイント増の80.4%で、初めて8割を超えた。後発品数量割合が80%以上の薬局の割合は66.9%で、前年度に比べ、11.1ポイント上昇した。

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