健保ニュース
健保ニュース 2020年8月下旬号
医療・看護必要度の施設基準等
厚労省が経過措置の延長を提案
中医協 支払側の反対で会長一任
厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた令和2年度診療報酬改定における経過措置や診療報酬上の臨時的な取り扱いを整理し、19日に開催された中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)の総会で提案した。
急性期一般入院基本料等の「重症度、医療・看護必要度の施設基準」について、9月30日を期限とする経過措置を半年間、延長することを提案。令和3年3月31日までは、令和2年3月31日時点で届け出ていた区分で施設基準を満たしている取り扱いとする。
また、「新型コロナウイルス感染症患者を受け入れた医療機関」に対する施設基準の臨時的な取り扱いを拡充したうえで、「職員が感染または濃厚接触者となり出勤ができない医療機関」も対象に追加する案を提示。緊急事態宣言の間は全医療機関が臨時的取り扱いに該当することとした。
提案に対し、全面的に賛同する診療側とエビデンスにもとづかない一律な対応に反発する支払側の溝は埋まることなく、会長預かりとして決定を一任することで議論は終結。結論について厚労省は、近く発出する事務連絡で明示するとした。
この日の会合では、厚労省が、前回の中医協総会における診療側委員からの要望を踏まえ、新型コロナウイルス感染症が医療現場に与えている影響を把握するための資料を提示。
新型コロナウイルス感染症への対策の実施に伴い、医療現場では、▽外出自粛等に伴う受診控え▽内視鏡検査、手術等の延期・中止▽新型コロナ受入体制確保のための通常外来・入院体制の縮小─などの様々な影響が生じていると問題提起した。
他方で、新型コロナウイルス感染症による医療機関の患者数は、前年や前々年に比べ、▽4月以降、医科、歯科、調剤いずれも減少▽医科は入院、外来とも減少し、外来で大きな減少幅▽3月以降、病院、診療所とも減少▽4月、5月はいずれの診療科も減少し、小児科、耳鼻咽喉科、眼科で減少が顕著▽3月以降、特定警戒都道府県(東京など13都道府県)で大きな減少幅─と変化している現状を報告した。
さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う診療報酬への影響として、▽感染症患者を受け入れている医療機関は体制の変更で看護師配置が変動する▽感染症患者の受け入れ有無に関わらず、患者の受療行動の変化で実績要件が満たせない▽感染症のまん延防止の観点から、施設基準で求められる体制要件を満たせない─場合があるとした。
そのうえで、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた2年度改定における経過措置の取り扱いとして、▽重症度、医療・看護必要度の施設基準▽回復期リハビリテーション病棟入院料1・3の実績指数に係る施設基準▽地域包括ケア病棟入院料1・3の診療実績に係る施設基準─の経過措置を3年3月31日まで半年間、延長することを提案。
急性期一般入院基本料の重症度、医療・看護必要度の該当患者割合(基準値)については、2年度改定の支払・診療側間における最大の争点となり、公益裁定により決着した経緯があるが、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、どの程度の病院が基準値を満たせない状況となっているか等の定量的なデータは今回示されなかった。
一方、「平均在院日数」や「在宅復帰率」などの施設基準を満たしているものとみなす「新型コロナウイルス感染症患者を受け入れた医療機関」への臨時的取り扱いは、「一定期間の実績を求める要件(年間の手術件数など)」を追加したうえで、「職員が感染者または濃厚接触者となり出勤ができない医療機関」も対象に含める案を示した。
さらに、緊急事態宣言の間は、月単位ですべての医療機関を臨時的取り扱いの対象とすることを提案した。
厚労省の提案に対し、健保連の幸野庄司理事は、「エビデンスが示されず、医療機関の実態が把握できないなかで、一律に対応する提案に支払側として了承することはできない」との考えを示し、提案について明確に反対した。
診療側の委員は全面的に賛意を示したうえで、来年の3月31日まで延長する経過措置の期限は、新型コロナウイルス感染症の感染状況等を勘案し、さらなる期限の延長について検討を行うべきなどと指摘した。
各側の意見を踏まえ、小塩会長は、「今回の提案は会長預かりとし、検討したい」と言及し、決定を会長に委ねることで議論は終結した。