HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2020年4月中旬号

健保ニュース

健保ニュース 2020年4月中旬号

健保連・協会けんぽが厚労相に要請
退職者医療制度の経過措置を早期終了

健保連の佐野雅宏副会長は3月30日、全国健康保険協会の安藤伸樹理事長とともに厚生労働省を訪ね、退職者医療制度の経過措置の早期終了を求める要請書を、加藤勝信厚生労働大臣あてに提出した。要請書を受け取った濵谷浩樹保険局長は、経過措置を早期に終了するためには法律改正が必要との認識を明らかにする一方、事務費の負担軽減については、理解を示した。

高齢になるにつれ医療の必要性が高まるが、定年退職後に健保組合など被用者保険から国民健康保険に移ることで、国民健康保険の医療費負担は増大する。このため昭和59年に、国民健康保険に移管する退職者への財政支援を目的として、退職者医療制度が創設された。

その後、平成20年度に65歳から74歳を対象とする前期高齢者医療制度が創設され、国民健康保険への新たな財政支援が講じられたため、退職者医療制度は廃止された。しかし、平成26年度末までの間に65歳未満で退職した被用者保険加入者が65歳に達するまでは存続させる経過借置が設けられた。このため、制度が令和7年度まで継続すると見込まれており、現在も被用者保険から拠出している。

この日、要請に訪れた佐野副会長は濵谷局長に対し、制度創設時に約260万人だった対象者は、令和2年度には約600人まで激減すると見込まれ、国民健康保険の財政支援という制度導入の目的は、すでに果たしたと指摘。さらにほとんどの健保組合が退職者医療制度の拠出額が少なくなったうえ、納入のための支払基金への事務費が拠出額を上回るという事態になっていると現状を説明した。

そのうえで佐野副会長は、「対象者が1人でも存在すればこの制度は継続し、最後の1人になるまで調整することは、極めて不合理な仕組みである」と制度の問題点を明らかにしたうえで、経過措置を早期に終了することを強く求めた。

これに対し濵谷局長は、経過措置を早期に終了するためには、国民健康保険法の改正が必要となるが、拠出額を納入するための事務費の負担軽減については、検討すべき課題として、要請書の内容に理解を示した。

退職者医療制度の経過措置の早期終了について(要請)
厚生労働大臣 加藤 勝信殿
健康保険組合連合会
全国健康保険協会

退職者医療制度は、医療費の多くかかる高齢退職者が被用者保険から国民健康保険に移ることにより、国民健康保険へ過度の負担となることから、国民健康保険の財政を支える調整措置として、昭和59年に創設された。

その後、平成20年度に前期高齢者医療制度が創設され、65歳から74歳までの前期高齢者について、被用者保険と国民健康保険との間での財政調整が行われることとなったため、退職者医療制度は廃止されたが、平成26年度までに新たに適用された者が65歳に達するまでの間は制度が継続する経過措置が設けられた。

昭和59年の制度創設時に約260万人であった対象者は、令和元年度には約5万人まで減少しているが、多くの対象者が元年度に65歳に達するため、2年度には約600人まで激減する見込みである。

このため、被用者保険の拠出額は、大幅に減少し、国民健康保険の財政を支えるという本来の役割を終えている上、一部の特定健保組合を除くすべての被用者保険保険者において、支払基金に支払う事務費が拠出額を上回る事態となっている。

経過措置は対象者が1人でも存在すれば継続するため、最長で令和7年度まで継続することが見込まれているが、このように最後の1人についてまで調整を行おうとすることは、対象者数、被用者保険の拠出総額、各保険者の拠出金に係る事務、支払基金に係る経費等を鑑みると、極めて不合理と言わざるを得ない。

ついては、現在の対象者がすべて対象から外れるのを待たずに、経過措置を早期に終了することを強く要請する。

退職者医療制度の経過措置の早期終了について(要請)

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年