健保ニュース
健保ニュース 2020年3月中旬号
令和2年度診療報酬改定を告示
留意事項など詳細を通知
入院料の新施設基準は半年後から
厚生労働省は5日、診療報酬と薬価基準の令和2年度改定を官報告示し、留意事項を地方厚生局と都道府県に通知した。厚労省保険局医療課は同日付で概要を解説する動画をインターネット上で公開し、4月施行に向けて改定の内容を周知した。
医療従事者の働き方改革を後押しするために、消費税財源による特例的な改定枠で新設する「地域医療体制確保加算」は、救急搬送を年2000件以上受け入れる医療機関が、病院勤務医の負担軽減と処遇改善に関する計画を策定した場合、急性期入院の初日に520点を上乗せする。救急搬送の件数は前年1月から12月までの実績で判断する。
患者の状態に応じた入院医療を推進する観点からは、一般病棟の患者それぞれに投入される医療資源量を類推する「重症度、医療・看護必要度」の評価項目と判定基準を、より急性期に相応しいものに見直す。そのうえで急性期一般入院料や加算について、これに該当する患者の割合に関する施設基準を引き上げるが、経過措置を設ける。原則として令和2年9月30日まで半年間、現行のままでも施設基準を満たしたものとみなし、急性期一般入院基本料のうち中間区分の入院料4については、3年3月31日まで1年間の継続を認める。さらに許可病床200床未満の病院に対しては、次回改定の4年3月31日まで2年間、通常より緩い施設基準を設定する。
認知症対策の充実に向けては、入院料の「認知症ケア加算」を2区分から3区分に組み替える。認知症ケアチームを評価する加算1は、要件を緩和するとともに入院14日以内の評価を引き上げる。研修を受けた看護師の取り組みを評価する現行の加算2は加算3に改め、病棟への看護師配置を2名以上から3名以上に増やしたうえで、入院14日以内の点数を引き上げる。中間的な評価として導入する新しい加算2は、精神・神経内科の医師か専門性の高い看護師のいずれかを専任配置し、研修を受けた看護師を病棟に3名以上配置することなどが施設基準となる。
入院時食事療養費の適時適温に関する取り扱いに関しては、原則として求めている午後6時以降の配食について、やむを得ず午後5時半まで前倒すことが認められる医療機関の範囲を、現行の500床以上から全医療機関へ拡大する。
治療用装具の採型法
トリッシャム200点
治療用装具の採型法は、現行だと一律700点になっているのを「体幹装具」で700点、「四肢装具」で1肢700点、「その他」で1肢200点に見直す。フットインプレッションフォームを使用して足型を採型する〝トリッシャム〟はその他で請求することを明確化した。
人工透析の評価は全体的に適正化する。腎性貧血治療に用いる安価なバイオ後続品の実勢価格などを踏まえ、慢性維持透析患者に対する人工腎臓の点数を引き下げるほか、透析を開始する際に人工血管を通す手術の点数も引き下げる。
一方、腹膜透析と血液透析を併用する患者の利便性を高めるため、在宅自己腹膜灌流指導管理料の要件は緩和し、他の医療機関で人工腎臓を実施した場合にも、レセプトの摘要欄に必要性などを記載すれば、算定できるようにする。腎移植に積極的な医療機関を評価する人工腎臓の「導入期加算」は、移植手続きの実績要件を強化したうえで、点数を引き上げる。透析開始前の保存期腎不全の段階から腎代替療法を患者に説明した場合に算定できる「腎代替療法指導管理料」も新設し、患者への情報提供を推進する。
腎不全以外の患者に対する血液浄化療法が適正に実施されるよう、持続緩徐式血液濾過の算定要件を明確化した。重症急性膵炎、重症敗血症、劇症肝炎・術後肝不全の場合はレセプトの摘要欄に医学的根拠を記載することとした。
がん遺伝子検査の評価体系は、個別の遺伝子検査ごとになっているのを、臨床的な位置づけや技術に応じて類型化し、パネル検査で同一がん種に対して複数の変異を同時に調べた場合には、検査項目数に応じた定額点数を算定する。
歯科では、初・再診料を引き上げる条件として、院内感染防止対策の研修を常勤の歯科医師だけでなく、洗浄・滅菌などの担当者にも受講させるため、職員向けの標準的な院内研修などを実施することを施設基準に追加する。
調剤に関しては、改正医薬品医療機器等法の施行を見据えて薬剤服用歴管理指導料や在宅患者訪問薬剤管理指導料にオンラインの区分を新設する。オンライン服薬指導は、医科のオンライン診療料を算定する患者を対象とし原則3月以内に対面で服薬指導を実施し、服薬指導計画を作成することなどを要件とする。在宅患者オンライン服薬指導は、医療保険で在宅患者訪問薬剤管理指導料が月1回算定している患者を対象とし、介護保険で薬剤師から居宅療養管理指導を受けている患者は含まれない。
政府は6日、改正薬機法の施行を9月1日とする政令を閣議決定した。それまでは離島・へき地や一部の都市部を対象とする特区だけが対象となる。