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健保ニュース 2020年3月上旬号

医療保険部会が次期改革の個別議論に着手
佐野副会長 後期自己負担は原則2割に

社会保障審議会・医療保険部会(部会長・遠藤久夫国立社会保障・人口問題研究所所長)は2月27日、次期医療保険制度改革に向けて、後期高齢者の自己負担のあり方を議論した。政府の全世代型社会保障検討会議の中間報告で一定所得以上の者を2割とする方針が示されており、対象者の範囲にかかわる所得基準の設定が最大の論点となる。

健保連の佐野雅宏副会長は、原則1割となっている現行の後期高齢者の自己負担を、原則2割に改める必要性を強調した。

こうした観点から、高額療養費制度における所得区分で、自己負担が現在1割で後期高齢者全体の約53%と過半数を占める「一般」区分が議論の中心になると指摘した。一般区分のなかで2割となる者が仮に限定的となれば、現役世代の負担軽減効果も小さくなることを懸念し、「現役世代の負担軽減につながるかが最大のポイントとなる」と述べ、厚生労働省に基準設定による財政影響試算を示すよう要請。これにもとづき議論を深めるべきと述べた。

2割となっても自己負担限度額があることから、単純に窓口での負担が倍になるわけではないことも明確にして、正しい理解にもとづく議論を求めた。

負担能力のあり方については、課税所得のみならず、金融資産や非課税年金も含めて検討する必要性を指摘し、資産も含めた後期高齢者の負担能力の状況がわかる資料の提示を求めた。公的年金等控除の水準など「各種控除のあり方も負担能力の評価のために検討が必要である」と述べた。

また、高齢者の負担に関しては、医療費の支払いに要する窓口負担の額だけではなく、保険料負担も含めたトータルの視点で考えるべきと主張した。

藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)も原則2割を提案。安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)も同調し、現役世代の負担軽減につながる2割対象者の基準設定を重視した。

一方、兼子久委員(全国老人クラブ連合会理事)は、「窓口負担の強化はやるべきではない」と反対した。松原謙二委員(日本医師会副会長)は、受診抑制に伴う重症化を危惧するとともに、「突然、倍の費用がかかるのは乱暴だ」などと述べ、原則2割に反対の姿勢を示した。

堀真奈美委員(東海大学健康学部長)は、団塊の世代が後期高齢者に入り始める2022年以降の医療保険制度の持続可能性を最優先で考えるべきと述べた。そのうえで、2割となる後期高齢者について、70~74歳時の2割が継承されることから、「負担増になるということではない」とし、こうしたことを丁寧に説明する必要性を指摘した。既に1割の後期高齢者が2割となっても高額療養費制度があるため負担額が倍になることはないと指摘した。

現役並み所得基準見直し
現役世代の負担増を回避
佐野副会長

また、この日の部会では、高齢者医療制度に関連し、現役並み所得の判定基準も議論した。

70歳以上のうち現役並み所得者には3割の自己負担が適用される。後期高齢者医療制度では、75歳以上人口の約7%相当の約115万人が3割負担に該当。協会けんぽ被保険者の平均年収をもとに、課税所得が145万円以上で、単身世帯だと年収383万円以上が現役並み所得と判定される。

この判定基準の見直しが論点となっているが、3割負担となる後期高齢者の範囲を広げると、現役世代の負担が増大する。現役並み所得者の医療給付費には本来の公費5割が投入されておらず、その分は現役世代が負担する後期高齢者支援金で賄われているためだ。

健保連の佐野副会長は、現役並み所得者に公費が入っていないため、後期高齢者医療制度全体の公費負担割合は50%を下回り、47%となっている実態を指摘。後期高齢者の医療給付費16.6兆円のうち3%相当の約5000億円は本来公費で負担すべきものだが、現役世代の負担増要因になっていると問題視した。

そのうえで、現役並み所得の基準を見直す場合は、これに伴う公費負担の減少分を現役世代の負担に転嫁しないようにするのは当然であると強調し、「少なくとも支援金を負担する現役世代への財政支援を含めた配慮をお願いしたい」と述べた。

菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)も現役並み所得者の範囲拡大が現役世代の負担増につながる構図に疑問を呈し、現役世代への支援策を検討する必要性を指摘した。

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