健保ニュース
健保ニュース 2020年2月中旬号
後期高齢者の2割負担対象範囲
現役世代の負担軽減に繋がる設定を
佐野副会長が医療保険部会で主張
健保連の佐野雅宏副会長は、1月31日の社会保障審議会・医療保険部会(部会長・遠藤久夫国立社会保障・人口問題研究所所長)で、後期高齢者のうち2割負担となる対象範囲について、「現役世代の負担軽減が目に見える形になるよう設定すべきだ」と主張した。
政府は、医療保険制度改革に向けた議論について、「全世代型社会保障検討会議中間報告」や「経済財政運営と改革の基本方針2019(骨太方針2019)」、「新経済・財政再生計画改革工程表2019」において、改革の基本的な考え方や検討項目、取りまとめ時期などを定めている。
これを受け、厚生労働省は、中間報告や改革工程表2019に盛り込まれた検討項目について、今後、医療保険部会で議論を進め、検討会議の最終報告や骨太方針2020が取りまとめられる今年夏を念頭に、同部会としての意見を整理することを提案し、了承された。
厚労省は、医療保険部会での検討項目について、中間報告関連では、「後期高齢者の自己負担割合のあり方」と「紹介状のない患者が大病院を外来受診した際の定額負担制度の見直し」の2点をあげた。
改革工程表関連では、▽保険料・公費負担、患者負担に関する総合的な対応▽「現役並み所得」の判断基準の見直し▽薬剤自己負担の引き上げ▽新規医薬品・医療技術の保険収載等に際しての費用対効果や財政影響などの経済性の評価や保険外併用療養の活用▽負担への金融資産等の保有状況の反映のあり方─などを課題とした。
検討会議の中間報告の取りまとめに向けた議論の過程で、大きな論点となった外来受診時でのワンコイン負担の導入について、厚労省は、検討課題として中間報告や改革工程表2019に盛り込まれなかったことから、議論の項目にはあげなかった。
佐野副会長は、この日の会合で、今後の検討項目に対する基本的な考え方や改革の方向性、課題等について発言した。
後期高齢者の2割負担については、安倍晋三首相の今国会における施政方針演説のなかで、「2022年には、団塊の世代が75歳以上の高齢者となるなかで、現役世代の負担上昇に歯止めをかけることは待ったなしの課題」と述べたことを引き合いに出し、現役世代の負担軽減に向け、「財政影響をみながら、現役世代の負担上昇に歯止めがかかるかを検証しつつ、対象範囲の議論を進めるべきだ」と指摘した。
また、大病院受診時の定額負担にかかる対象範囲の拡大や負担額の増加、増額分を公的保険の負担軽減に充てることについて賛成の立場を明らかにするとともに、「対象病院の範囲を狭めることなく確実に実施すべき」と主張した。
世代間の負担のアンバランスの是正に関連し、「後期高齢者医療制度の保険料額の伸びと現役世代の1人当たり支援金負担額の伸びに大きな差が生じている」と指摘し、後期高齢者支援金が増加することにより前期高齢者納付金が増加するという問題も含め、前期高齢者納付金の計算方法等の見直しを要請した。
改革工程表関連では、後期高齢者の現役並み所得者の給付費にも公費を投入するべきと強く主張し、「現役並み所得」の判断基準を見直す場合には、現役世代の負担増とならないように検討することを求めた。
また、薬剤の給付については、「市販品類似薬の保険給付範囲からの除外や償還率の変更を検討するべき」との考えを示すとともに、生活習慣病治療薬の適正な処方を推進する観点から、「今回の診療報酬改定では見送られたが、診療報酬制度に生活習慣病治療薬のフォーミュラリ(経済性を考慮した使用ガイド付きの医薬品集の作成)を盛り込むことについて引き続き検討するべき」と発言した。
このほか、短時間労働者の適用拡大に関連し、「退職後も被用者保険に加入し続けることができる任継制度や資格喪失後の傷病手当金の見直しも検討してほしい」と述べた。
安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、制度改革の方向性として、後期高齢者の2割負担や予防・健康づくりの推進、給付の適正化、ジェネリック医薬品の使用促進などの項目をあげた。このなかで、後期高齢者の2割負担の対象範囲については、「負担能力に応じた負担を基本としつつ、現役世代の負担軽減に繋がる仕組みとするべき」との考えを示すとともに、厚労省に対し、2割負担の対象となる後期高齢者数や医療保険財政に与える影響など、今後の議論に資する資料の提示を要求した。
藤原弘之委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長)は、「改革の成果が最大限に出る方向で見直しを行うことが重要であり、踏み込んだ議論が必要」と指摘した。後期高齢者の現役並み所得者に関連する項目では、「今の仕組みでは現役並み所得者となった場合、(給付費に)公費が投入されなくなり、その分現役世代の負担が増加する。これ以上現役世代の負担を増加させないという観点から、見直しを進めるにあたっては、公費投入のあり方もセットで見直すように強く求めたい」と述べた。