健保ニュース
健保ニュース 2019年8月下旬号
消費増税改定へ薬価告示
全体の37%、6121品目を値上げ
新薬創出等加算の対象数は増加
厚生労働省は10月の消費増税に合わせた臨時の薬価基準全面改定を、19日付で告示した。収載数は内用1万201品目、注射3874品目、外用2407品目、歯科用28品目の合計1万6510品目で、市場実勢価格に近づける引き下げなどを行ったうえで、増税分を上乗せした結果、全体の37%を占める6121品目が値上がりする。革新的な製品を優遇する「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の要件を満たしたのは、平成30年度の前回改定より29品目多い591品目だった。
薬価改定の告示時期は恒例だと施行の前月上旬だが、令和2年度改定に向けた市場実勢価格調査を9月に控えるなか、今回はやや早かった。
臨時改定であるため、制度改革は伴わず、政策的な再算定や長期収載品の強制値下げなども見合わせた。昨年9月に実施した調査を踏まえ、市場実勢価格との差を埋める改定のほかは、薬価引き下げを猶予・緩和する新薬創出等加算、基礎的医薬品の薬価を維持する措置、後発医薬品の価格帯見直しを行った。
薬剤費ベースの改定率はマイナス2.40%で、このうち一般改定分がマイナス4.35%、消費税対応分がプラス1.95%に相当する。市場で値崩れの小さい製品や、新薬創出等加算と基礎的医薬品の特例を受けた製品を中心に、消費税対応の効果で薬価が引き上がる。
新薬創出等加算の対象は、希少疾病用として承認されたものが256品目、厚労省が開発を公募したものが22品目、新規収載時にプラスの補正加算を受けたり市販後に真の臨床的有用性が検証されたものが183品目、新規作用で革新性や有用性の基準の該当したものが89品目、薬理作用類似薬の1番手から3年以内かつ3番手以内が41品目だった。前回改定以降に発売された製品が加わった一方で、後発品が現れた製品などが外れた。通常は加算の要件を満たさなくなった時点で、過去に受けた累積加算相当額を返還し、大幅に薬価を控除するが、今回は令和2年度改定まで返還を保留する。
恩恵を受けた企業に出入りがあったが、総数は83社で前回改定と変わらず、研究開発の積極性に応じた3段階の評価で、満額の加算を受けられる区分Ⅰが23社、9掛けの区分Ⅱが55社、8掛けの区分Ⅲが5社となった。
加算適用薬の数はノバルティスファーマの25成分53品目が最も多く、ファイザーの21成分40品目、サノフィの21成分23品目、ヤンセンファーマの20成分31品目など外資が上位に多く並んだ。内資トップは武田薬品工業の9成分16品目で、ノーベルファーマが9成分10品目、第一三共が8成分25品目、小野薬品工業が8成分16品目、アステラス製薬が7成分16品目、大塚製薬が7成分10品目、協和キリンが7成分9品目などで続いた。
広く臨床で古くから使われている基礎的医薬品は、採算割れを防いで安定供給を確保するために、同じ成分の薬価を販売額の最も大きい銘柄にそろえて維持する。対象数の内訳は▽不採算122成分▽病原生物80成分▽麻薬9成分▽生薬46成分▽軟膏基剤3成分▽歯科用局所麻酔剤1成分─で、前回改定とほぼ同じだった。
後発品については、1価格帯が1498成分規格で前回改定から58増、2価格帯が376成分規格で同12増、3価格帯が85成分規格で同2増となった。