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健保ニュース 2019年6月下旬号

厚労省・14日付後発品収載
「バイオセイム」第1号が登場
新規5成分のうち3つでAG

厚生労働省は14日、新たな後発医薬品として内用薬55成分181品目、注射薬12成分30品目、外用薬24成分53品目の合計86成分264品目を薬価収載した。

初めての後発品は腎性貧血治療薬「ダルベポエチンアルファ」、統合失調症治療薬「ブロナンセリン」、がん疼痛治療薬「オキシコドン」、アレルギー性鼻炎治療「モメタゾン」、緑内障治療薬「トラボプロスト・チモロール」の5成分48品目だった。このうちブロナンセリン、ダルベポエチンアルファ、モメタゾンで先発品の特許技術を使うことが認められたオーソライズド・ジェネリック(AG)が保険適用され、ダルベポエチンアルファでは生物製剤版AG〝バイオセイム〟の国内第1号が登場した。

一般的に医薬品には有効成分のほかに複数の添加物が含まれ、これによって剤形、溶出性、安定性、使用感を左右する。先発品より小さく服用しやすい剤形や、独自に口腔内崩壊錠を開発する後発品メーカーもあり、企業の特徴を出せる要素となる。

しかし、先発品から後発品に変更した患者が違和感を覚えたり、薬物血中濃度の動態に違いが現れることがある。AGは特許切れ前に発売可能なだけでなく、こうした問題を解決することにより、競争を優位に進められる。投与量を絶妙に調節しなければならない抗がん剤などではAGが臨床に役立つこともあり、先発品企業にとっては、子会社や提携先を使ってAGを投入すれば、先発品販売減の穴埋めにつながる。

生物製剤の場合は事情がやや異なる。アミノ酸やタンパク質などの遺伝子を組み替えて培養する生物製剤は、特許が切れても原料や工程が分からないと、細部まで同じものを完全に再現できない。

そのため、有効成分の構造が判れば化学合成できる低分子薬と区別して、先発品を「先行品」、後発品を「後続品」や似たものを意味する「バイオシミラー」と呼ぶことが多い。

薬事承認の取得には、低分子の後発品だと不要な臨床試験で効果や安全性を証明することが求められるなど、後発品専業メーカーだけでは開発が難しく、新薬メーカーが手掛けることが多い。その反面、薬価は優遇され、通常は先発品の原則0.5掛けになるところを、先行品の0.7掛けにしている。

しかし、バイオセイムは実質的に先行品の中身をそのままラベルを貼り替えただけで、臨床上は安心して後続品に切り替えられる利点がある一方、薬事承認に先行品のデータを流用することで、開発経費を抑えられるにもかかわらず、薬価は通常のバイオシミラーと同じ扱いだ。ダルベポエチンアルファのバイオセイムも、先行品を製造販売元する新薬メーカーが関連子会社を通じて投入するが、先行品の0.7掛けで算定した。

中央社会保険医療協議会は先般、次期薬価制度改革に向けてバイオセイムの取り扱いを検討する方針を確認した。ただ、通常より薬価を安くすれば市場での優位性はさらに強まり、高くすれば開発コストなどとのバランスが崩れるため、判断が難しい。これは一般的なAGにも共通する課題だ。

今回の後発品薬収載では、先にAGが発売されている排尿障害改善薬「シロドシン」に16社が参入したが、今後の薬価政策によっては競争が停滞し、AGだけが生き残るような状況になれば、薬価の引き下げに水を差すことになる。

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