健保ニュース
健保ニュース 2019年4月中旬号
支払基金との31年度契約を締結
負担軽減や業務効率化に繋がる改革を
支払基金、厚労省に要請書を手交
健保連は4月1日付で、社会保険診療報酬支払基金(神田裕二理事長)と平成31年度診療報酬の審査支払事務手数料や診療報酬等の納入期日などを定めた契約を締結した。これに合わせ、支払基金改革の確実な実施や審査支払にかかるコスト削減や手数料引き下げなどを求める要請書を支払基金の神田理事長あてに提出した。また、厚生労働省の樽見英樹保険局長あてには、支払基金法改正を踏まえた支払基金改革の促進などを要請した。健保連の佐野雅宏副会長、森脇紳二診療報酬対策委員会委員長(パナソニック健保組合専務理事)らが5日、支払基金本部と厚労省を訪ね、神田理事長と同省保険局の安藤公一保険課長に要請書を手交した。佐野副会長は、31年度の平均手数料が前年度比で2.8円引き下げられたことを評価したうえで、健保組合の負担軽減や業務の効率化等に繋がる支払基金改革の確実な実現を強く求めた。
手数料2.8円引下げを評価
支払基金との31年度契約は、①審査支払事務手数料②レセプト電子データ提供事業利用料③出産育児一時金等の支払に関する手数料④審査に関する意見の提出等に関する手数料⑤診療報酬等の納入期日及び支払日─の各事項で、各手数料・利用料は、消費税率の引き上げの影響により、税率8%の9月分までと税率が10%になる10月分以降の2段階での設定となる。
①審査支払事務手数料のレセプト1件当たり単価は、オンライン・紙ともに9月までが医科・歯科分72.8円(前年度比▲4.1円)、調剤分36.4円(同▲2.1円)で、10月から医科・歯科分74.2円(同▲2.7円)、調剤分37.1円(同▲1.4円)にする。これにより、医科・歯科、調剤レセプトを加重平均した平均手数料は、9月までは60.8円(同▲3.5円)、10月以降は61.9円(同▲2.4円)で、年間平均では61.5円(同▲2.8円)となった。
また、③出産育児一時金等の支払に関する手数料は、電子化促進等の効果により、9月までは119円(同▲6円)、10月以降は121円(同▲125円)となり、消費税率引き上げの影響はあるものの、前年度を下回る結果となった。
このほか、⑤診療報酬等の納入期日は原則20日、支払日は21日と定めた。
これらの契約内容は、診療報酬対策委員会の審議を経て、3月15日の理事会で承認された。同日の理事会では、31年度の契約と合わせ、契約更改にあたっての支払基金と厚労省に提出する要請事項もあわせて承認された。
支払基金への要請書は、佐野副会長、診療報酬対策委員会の森脇委員長、高橋恭弘副委員長(トヨタ自動車健保組合常務理事)、健保連の河本滋史常務理事、幸野庄司理事らが支払基金本部を訪れ、神田理事長に手交した。
佐野副会長は、31年度の手数料引き下げにより、健保組合の負担軽減が図られることを評価する一方、健保組合財政が依然として厳しい状況に置かれていることを説明した。そのうえで、支払基金において、支払基金法改正を踏まえた組織の見直しや審査支払業務の効率化とコスト削減などに取り組むよう、強く求めた。
また、「健保組合には、財政・業務両面の効率化と保険者機能の発揮が求められている」と述べるとともに、団塊の世代が後期高齢者となり始めて高齢者医療への拠出金が急増する2022年がターニングポイントになるとの認識を示し、「こうした時間軸も念頭に改革を進めていただきたい」と訴えた。
要請書の手交では、森脇委員長が、①支払基金改革の確実な実施と改革効果の明確化等②審査支払にかかるコスト削減及び手数料の引き下げ等③組織の見直し④審査の効率化・統一化等に向けた取り組みの推進⑤保険者支援のための業務の拡大に向けた取り組みの推進⑥その他(委託金関係)─の要請事項の趣旨を説明した。
今回の要請を受け、神田理事長は、支払基金の組織の見直しについて、「審査事務センターと審査事務局の業務分担や人員の配置をある程度整理したうえで、年内中に(審査事務センターを設置する)全国10か所の場所を決めていきたいと考えている」と回答した。
各改革項目の達成目標などを定める年次の「アクションプログラム」の策定については、「組織の見直しを含めた年次の計画を具体的に検討し、提示できるように取り組んでいきたい」と述べた。
手数料の引き下げについては、「800人の定員を削減していくなかで、審査支払全体にかかるコスト削減も図っていきたい。また、システム刷新に伴うコンピュータチェック割合の90%への引き上げやAIを活用した審査事務の効率化等を進め、その成果を保険者の皆さんに還元していきたい」と前向きに発言した。
支払基金改革の促進など
厚労省へ6項目を要請
厚労省への要請書は、佐野副会長から同省保険局の安藤保険課長に手交した。内容は、①支払基金法改正を踏まえた支払基金改革の促進②組織の見直し ③新たな手数料体系の設定④審査業務の効率化・審査基準の統一化等に向けた体制整備⑤ビッグデータ活用等に関する保険者支援への対応⑥その他(委託金関係)─の6つの事項が柱で、森脇委員長が要請の趣旨を説明し、システム刷新の先送りや費用負担の増加が生じないよう求めた。
これに対し、安藤保険課長は、「今回の要請をわれわれとして重く受け止めさせていただきたい」と述べるとともに、支払基金改革の促進について、「現在、支払基金法改正を含む健保法等改正法案の審議が進められており、まず法案の成立に向け対応していきたい。基金改革の本番は、基金法改正を踏まえた組織の見直しやシステム刷新などが中心となるが、厚労省としては、関係者間のコンセンサスを得ながら、改革を進めていくことが重要であると考えている」と回答した。