ほっとひと息、こころにビタミン vol.80
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
人のうわさや悪口には上手に距離を取る
職場や学校で、飲食時や休憩時に、他人のうわさや悪口を言って、その場を盛り上げようとする人がいます。そうした話に一緒に悪乗りして、盛り上がる人もいます。悪口を聞くのはイヤなものです。聞いているだけで自分の品格が落ちていくような気がしてきます。だからといって、面と向かってやめるように言うのは得策ではありません。
そのような時私は、こころの中で距離を取るようにしています。他人のうわさや悪口を言う背景には、いろいろな理由があるはずです。人の欠点をあげつらうことで、自分が優位に立っているように思いたいのかもしれません。他の人が知らないことを自分が知っているということを伝えて、そのような情報が入ってくる自分の立場を誇示したいのかもしれません。その話を聞いて悪乗りする人は、そこにいない人をスケープゴートにすることで、その場にいる人たちの仲間意識を高めたいのかもしれません。
いろいろな理由があるはずですが、いずれにしても、とても自己中心的な振る舞いです。そうした人たちに、うわさ話や悪口を言わない方が良いと言うと、その人たちは自分を批判されたように感じて、かえって反発するだけです。その結果、自分がいないときに悪口を言われる可能性が出てきます。
だとすれば、「触らぬ神にたたりなし」で、そうした人たちと上手に心理的な距離を取るようにします。その上で、その人たちと付きあう頻度や時間を減らすなど、物理的な距離を取っていきます。自分が使える時間は限られているのですから、その時間を大切に使うようにするべきです。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。