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ほっとひと息、こころにビタミン vol.71

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

親しい人ほど、丁寧な説明、会話を

コミュニケーションというのは難しいものです。自分が正しいと思って助言したことで、思うように相手の人に理解してもらえないことがよくあります。このようにしてもらいたいと考えて話しても、思うように動いてもらえないことも少なくありません。そうすると、イライラして、ついキツい言い方になって、ますます関係がこじれてしまいます。

とくに家族や友人、同僚など親しい人が相手の場合には、分かってもらって当然という気持ちが強いために、自分の気持ちが分かってもらえないときのストレスは強くなります。親しいのにどうして分かってもらえないのだろうと考えて、さらにキツい言い方になってしまうこともあります。

しかし、親しい人だからこそ、自分の思いが伝わりにくい場合もあります。親しいから分かってもらって当然だという思いが強いと、説明がなおざりになってしまって、分かりにくくなることがあるからです。

いくら親しくても、たとえ家族であっても、相手の人は、自分とは違う人間です。親しき仲にも礼儀ありといわれますが、その中には、親しいからといって何でも分かり合えるわけではないという意味が含まれていると、私は考えています。親しい関係にあるほど、期待値が高くなるので、そうでない場合よりも丁寧に説明する必要があります。

それに、分かってもらえなかったときにイライラするのは逆効果です。そのようなときには、分かってもらえないほどに親しいのだと考えて、さらに丁寧に説明したり話し合ったりすると、不必要なストレスも感じなくて済むようになります。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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