ほっとひと息、こころにビタミン vol.60
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
ストレスにもよしあし!
年度末で仕事に追われてストレスを感じている人は、少なくないのではないでしょうか。年度替わりに異動や進学を控えて緊張している人も多いでしょう。私たちはストレスを感じながら生きています。
もっとも、ストレスは悪いことばかりではありません。ストレスは人生のスパイスといわれたりもします。ユーストレス(良いストレス)という表現があるのですが、ほどほどのストレスは緊張感を高めてパフォーマンスが高くなります。しかし、ストレスが強くなると、心身の不調が現れます。それをディストレス(悪いストレス)と呼びます。
それでは、自分がディストレスな状態にあることを、どのようにして気付くことができるのでしょうか。それは、「いつもとは違う状態にあるかどうか」で判断すると良いでしょう。一番分かりやすいのが、睡眠や食欲などの体調です。午前3時症候群といわれたりするのですが、いつもだったら寝ているような時間に目が覚めて寝つけなくなっているのなら要注意です。寝付きや寝起きが悪くなっているときも注意しましょう。食欲が極端に落ちたり、逆に食べ過ぎたりするようになっているときも心配です。
仕事や勉強、家事はいつものようにできているでしょうか。思うようにできていなかったり、ミスが増えたりしているときは要注意です。趣味など、今まで楽しんでできていたことができているでしょうか。身体を動かして楽しめているでしょうか。
人間関係も大切です。これまでと変わらず人と付き合えているかどうかも意識しながら、新年度を迎えていただければと思います。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。