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ほっとひと息、こころにビタミン vol.59

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

趣味はこころの薬

「芸は身を助ける」と言われます。趣味などで身に付けた芸が、暮らしに困ったときに生計の支えとして役立つことがあるという意味です。そのように暮らしに役立つほどに芸を極めなくても、趣味はこころの健康を高めるためにも役に立ちます。

楽しいことややりがいのあることが多い生活を送っていると、こころが元気になることが分かっています。報酬系と呼ばれる脳神経のシステムが刺激されることで、前向きの気持ちになってくるからです。それだけではなく、楽しみややりがいのあることをしていると、ストレスに振り回されていた自分を取り戻すことができます。

私たちは、ストレスを感じるようなよくない出来事を体験すると、何とかその状況を変えたいと考えて工夫します。もちろん、それがうまくいけば良いのですが、そう簡単に状況を変えられないこともあります。残念ですが、私たちは万能ではないのです。

そうした状況に入ってしまうと、対処する方法が分からないまま過去を振り返って後悔したり、これから起こりそうな良くないことを想像して不安になったりします。状況を変えられない自分を責めてしまったりすることもあります。いつの間にか問題で頭がいっぱいになって、自分らしさを見失ってしまいます。

そのようなときに、自分が好きな趣味があれば、それに取り組むことで自分を取り戻すきっかけになります。楽しい気持ちになれば、ストレスも和らいできます。趣味は、人生を豊かにし、ストレス社会を生き抜くためのこころの薬です。長く続けられる趣味を見つけていくようにしてください。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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