ほっとひと息、こころにビタミン vol.54
精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。
【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕
上手に眠るコツ
新型コロナ感染症の波はなかなか収まりません。そうしたこともあって、企業も、在宅勤務を増やすところもあれば、出社勤務を増やすところもあるなど、対応がまちまちです。このように勤務形態が安定しないと、生活のリズムが乱れやすく、特に在宅と出社が混在すると、睡眠のリズムが乱れやすくなります。
睡眠のリズムには、「夜になると眠くなる仕組み」と「疲れると眠くなる仕組み」の二つの仕組みが影響しています。「夜になると眠くなる仕組み」は、体内時計でコントロールされていて、24時間周期でリズムを取れるようになっています。
ところが、困ったことにこれは正確に24時間ではなく、24時間より少し長くなっています。ですから、朝決まった時間に起きることで強制的に24時間にしているのですが、在宅だから早起きしなくて良いと考えて朝寝坊すると、次第にリズムが乱れてきます。
また、家にいるために、つい気を許して昼寝をしてしまうと、「疲れると眠くなる仕組み」に影響が出てきます。これは、1日活動する中で少しずつ疲れがたまって眠れるようになる仕組みです。
しかし、昼間に眠ってしまうと疲れがたまらず眠れなくなってしまいます。例えてみれば、少しずつ風船が膨らんでいって一定の大きさになって眠れるはずが、途中で空気が抜けて眠れるだけの大きさにならなくなるのです。
こうしたことを避けるためには、少なくとも朝は決まった時間に起きて朝日を浴び、朝食を食べるようにすることと、日中眠くなっても30分以上の昼寝をしないようにすることが役に立ちます。
大野 裕(ゆたか)
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。